「学校を出よう! 4 Final Destination」に続くシリーズ第5弾。
蒼ノ木類がふたたび怪事件を光明寺茉衣子のもとにもちこんできた。今度は新しいルームメイトが死んでいるというのだ。しかも、その死体は死後硬直もなく体温を保っている。生きてはいないが、死んでもいないという状況にあるのだ。そのような寮生は類のいるD棟を中心に多数発生していた。宮野は例によって独自の推理を行い、生徒会長代理の真琴も今回ばかりはお手上げの様子。そして夜がきた。D棟に帰った類は、死んでいるはずのルームメイトに襲われる。なんと彼女たちは吸血鬼になっていたのだ。危機一髪のところを宮野たちに救われた類。真琴は第二EMP学園から呪物を使うEMP能力をもつ那岐鳥獅子丸を呼び寄せる。吸血鬼たちはEMP能力のないものを吸血鬼にすることができない。そこで高崎が獅子丸らとともにD棟におもむき、吸血鬼に最初になった者は誰か、吸血鬼化の原因となった呪物がどこにあるのかを探しに行くことになり……。
作者は今度は吸血鬼テーマに挑戦している。ここで注目すべきは宮野による「吸血鬼不可能論」だ。吸血鬼によってこの世界が満たされたら吸血の対象となる人間が不在になり、吸血鬼は自滅してしまうという独特の論である。つまり、純粋な生物(?)として吸血鬼は存在し得るかという大きなテーマを本作はもっている。
さらに、物語が一定方向に進もうとすると、何者かが現れて分岐点でリセットし、思うような方向に変えようとするのである。ここらあたりは量子論SFという趣がある。
本巻は珍しく1冊にまとまりきらず、次巻に続く。本巻で張られた伏線がどのような形で生かされ、どのようにして事態の収拾に向かうのか。
本巻読了後、私はすぐに続きを読み始めることにしたのである。
(2006年7月17日読了)