読書感想文


学校を出よう! 6 VAMPIRE SYNDROME
谷川流著
メディアワークス電撃文庫
2004年10月25日第1刷
2006年6月15日第4刷
定価550円

 「学校を出よう! 5 NOT DEAD OR NOT ALIVEに続くシリーズ第6弾。
 吸血鬼の巣となってしまった第三EMP学園。夜行性の吸血鬼だけでなく、昼に起きている者がいることも判明、高崎若菜も吸血鬼と化してしまった。さらに会長代理・真琴まで……。高崎、宮野、獅子丸、類、茉衣子ら6名が、自らの命を賭して真琴の待つ本拠へ呪具を破壊しに立つ。彼らを待ち受けている結果はいかに。そして、宮野が核心に迫るごとに時計の針を戻していた存在は……。
 物語というものは、作者の頭の中で作られた「お約束ごと」である。登場人物がそのことに気がつくような仕掛けがあれば、メタフィクションということもできるだろうが、本巻で宮野が気がつく高位の存在とは、決して作者とはいえない。ならばそれは何者なのか。
 私はやはり作者であると思うのである。ただ、作者は別な人格を作り、仕掛けを作り(この仕掛けから考えると編集者と作者、かもしれない)、作品世界を何者かの内宇宙的なものにしたように思われる。内宇宙であることに登場人物が気がついた以上、物語はその先には進めまい。かくして本シリーズは何も解決しないで(少なくとも最初の巻でばらまかれた設定にきっちり渡した答を出さず)完結してしまう。
 なぜこのような形で物語を閉じたのか。
 5〜6巻で大活躍する宮野にその鍵が隠されていると私は思う。宮野は作者の代弁者としてこのシリーズではトリックスターの役割を果たしていた。それが本巻では事実上の主役である。宮野は登場人物の一人として、形式上の主役茉衣子に「自分たちは誰かから都合のよいように動かされる」ということを伝えようとしては時計の針を戻される。これは、ヤングアダルト/ライトノベルの枠からはみだし破綻しつつあるこのシリーズを続けることに対して作者は抵抗し、そしてその破綻すべてを含めて「つくりごと」と開き直るような効果を狙ったのではないか。暴論かとは思うが、私にはそのように感じられたということである。
 一度イラストのつかない小説を作者に書かせたいと思うのは私だけであろうか。

(2006年7月18日読了)


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