「笑酔亭梅寿謎解噺」に続くシリーズ第2巻。
笑酔亭梅駆の名をもらい内弟子修行に励む竜二は、売れっ子テレビタレントや東京の若手の落語家、芸人養成学校の若者たちなどと接する中で、自分の落語はこのままでいいのかと悩み始める。師匠の梅寿が所属する松茸芸能では二代目社長が落語に関心がなく、落語家の出番が減らされ、演芸場から追い出されていく。落語を毛嫌いする女性マネージャーとの言い争いから梅寿はつい手を出してしまい、松茸芸能をやめて自分の事務所を設立することになってしまう。竜二は考えるところがあり、自ら梅寿のもとを去り、新たな出発を始めようとするのだが……。
前巻ではミステリの舞台を落語界にとったという感じであったのだが、本巻では竜二の成長物語を軸に据え、そこに現実の上方落語界がかかえる問題などを織りまぜるという形をとっている。つまり、第1巻で上方落語界になじんでもらったところで、ここではその世界をより深く掘り下げているというわけである。長年落語に親しみ、落語を愛している作者でなければ、ここまで掘り下げたものにはならなかっただろうと思う。
特に、東京落語との比較や、漫才との比較、あるいはバラエティとの比較などを通じて、全く落語に関心などなかった竜二がどんどんと芸の奥深さにひきこまれていく様子など、落語一辺倒ではなくすべての「芸」に敬意を抱く作者の思いがつたわってくる。それが演芸ファンとしてなによりも嬉しい。
第1巻は「ハナシがちがう!」というタイトルで文庫化され、さらに週刊誌では「わらばな」というタイトルでマンガ化されている(こちらは完全に竜二の青春物語として描かれている)。このシリーズがこれをきっかけにどんどん売れて、上方落語の魅力が数多くの人たちに伝わることを願っている。
(2006年8月27日読了)