「苦悩する落語」のあとを受け、その後の6年間の状況の変化を、著者へのインタビューという形でまとめたもの。
前著を刊行した後、著者は自分とともに活動できる落語家に声をかけ、「六人の会」を結成し、さらに林家正蔵襲名や「銀座落語アーベント」などのイベントを仕掛けることにより、テレビなどのメディアを活用しなくても落語だけで人を集められるような流れを作り出してきた。本書は、その活動内容報告ということになる。
テレビドラマ「タイガー&ドラゴン」のヒットなどで、これまで落語を知らなかった層が落語に目を向け始めた。大阪では戦後初めての落語専用の定席も開設された。著者をとりまく環境は、6年前と比較して格段にいいものになっているといえるだろう。
つまり、前著を刊行したことにより著者の落語への取り組み方が変わったということなのだろう。「六人の会」の一人である笑福亭鶴瓶を通じて上方落語の世界にもパイプがつながったということも大きいのではないか。
ただ、どうも考え方が落語中心でしかないところが気にかかる。上方の落語家は英語落語、パペット落語などで海外に進出してみたり、オペラと落語、狂言と落語のコラボレーションをしてみたり、小説家の新作落語を連続でネタおろししたりと、落語の枠にとどまらない活動をしている。こうした型破りな活動は、寄席の枠にとどまっていてはできない。新しいことをやろうとしているようで、実はすでに上方落語の四天王たちがやってきたラインから大きくはみ出るものではないように思えてならない。ここまでの努力はすばらしい。しかし、やはり古くからの寄席が三席もあるという恵まれた状況があってこそという印象を受けた。
さて、ではこの波が次の6年先にはどうなっているだろうか。東京に進出している吉本の若い漫才師たちの活躍は東京の寄席にどのような影響を与えるのだろうか。5年後か6年後に、本書の続きをぜひ刊行し、10年間の総括という形でまとめてもらえれば、と思う。
(2006年9月10日読了)