「水滸伝 二 替天の章」の続巻。
宋を影で支える青蓮寺は、魯智深の動きを気にかけはじめる。それを悟った魯智深は、自らは女真族と連絡をつけるために北へ去り、自分のかわりとして王進のもとにあずけていた武松を組織のつなぎ役として指名する。武松は史進や楊志らのもとを訪ねた後に、宋江の従者として働く。史進は、魯智深の判断でかつての師である王進のもとにあずけられる。楊志は本格的に官軍と戦うという経験をし、軍人としての自分のあるべき姿に悩み、そして梁山泊の存在を意識しはじめる。一方宋江は、愛妾が誤解から生じた嫉妬から弟の恋人を殺してしまい、その愛妾を殺した弟をかばって自分が犯人と名乗りをあげ、罪人としてついに旅立つ。
本書では、青蓮寺の実力が徐々に明らかになってくる。この青蓮寺という存在を作り出したところに本作の妙味がある。いわばCIAのような存在なのであるが、これが「国」という組織を維持するためならどんなことでもやる集団として描かれることにより、「民」を守ろうと立ち上がる梁山泊の存在が鮮やかに浮き上がってくるのである。
さらに、男女の機微を克明に描いているところも原典にはない面白さである。人間味というものの描写は、そういうあたりが描けていることにより、さらにリアリティを増すのである。
(2006年12月22日読了)