「幕末・維新」に続く、最新の研究成果を盛り込んで日本の近現代史をわかりやすく解説した新シリーズ第2巻。本巻では自由民権運動の起こりから大日本帝国憲法発布までの期間を取り扱う。
教科書的には「藩閥政府」対「自由民権運動」という図式になる時代なのだが、著者はここに「民衆」を加えた三極対立であると説く。政府も民権派も方法論は異なれども結局は国力をつけ欧米列強に対抗することを目的にしているのだというのである。そして、困窮した民衆は再び「将軍様」が復帰し、幕藩体制の時代に戻ることを願うことさえあり、民権派の運動に賛同した者たちの目的も自分たちの生活を守るために政府と民権派とどちらをとるかという選択の結果なのである。
著者はそれら「民衆」を「国民」として統合していくために「天皇」「体操」「教育」「唱歌」そして「憲法」が道具として使われたのだという結論を提示する。平成の「愛国心」は、この時に人為的に作られたものなのである。
そして、この後行われる台湾や朝鮮の植民地化の雛形として、北海道の「開拓」と沖縄県の設置を位置づける。日本の帝国主義はこの時期に準備されたのだということを明確にするのである。
司馬遼太郎はこの時期の政治家や軍人に一定の評価を与えているけれども、必ずしも彼らは理想的な為政者ではなかった。評価すべき点は多いし、近代の世界情勢に対して欧米列強に伍していく国家作りをしたという成果はある。しかしそのために踏みにじられたり犠牲になった人々のことを考慮せず手放しで賞賛することの危険性だけは自覚しておかねばならないと思うのである。
(2007年1月28日読了)