読書感想文


水滸伝 五 玄武の章
北方謙三著
集英社文庫
2007年2月25日第1刷
定価600円

 「水滸伝 四 道蛇の章」の続巻。
 青蓮寺はついに宋江の居場所を突き止める。窮地に陥った宋江だったが、同志達の力によって助かった。女真との連携を考えて北に発った魯智深は牢屋に入れられ身動きがとれない状態であったが、トウ飛の決死の女真潜入によって片腕は失ったがなんとか帰還する。青蓮寺の李富は、愛人である女芸人馬桂を利用して楊志の妻子と懇意にさせておき、妻子が楊志と密会する場所をつきとめ、暗殺を実施する。頭領を失った二竜山と桃花山を宋の正規軍が攻撃する。果たして李富の計画は成功するのか。それとも梁山泊は抵抗しきれるのか。
 原典では頭領108人が梁山泊に勢ぞろいするまでは誰一人欠けない。青面獣楊志も頭領の一人である。しかし、作者はこれを不自然に思ったのだろう。楊志の暗殺計画と、宋軍の攻撃という大胆な展開を読者に提示してきた。それも、前半最大の山場という扱いである。その描写はまさに迫力があり、知恵比べと活劇シーンのバランスもよく、一度読み始めるとページを繰る間も惜しく、しかし一気に読むのはもったいなくて切りのいいところで本を閉じて一息ついてしまうというような塩梅である。
 かくして楊志が残した息子楊令の物語がここから始まるのだ。梁山泊最初の危機を目の当たりにした少年が、今後どのように成長していくのかという楽しみが物語に加わった。そして、宋軍と梁山泊の本科的な戦いの火蓋も切られたのである。毎月1冊ずつちびちび読むシリーズではなく、全巻揃えて一気に読んでしまいたいくらいである。

(2006年3月18日読了)


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