ぼやき日記


2月21日(土)

 さて、昨日の日記のクイズの答えです。関西の「押しピン」は、標準語では「画鋲(がびょう)」でした。また、メールをいただきまして、新潟県柏崎市では「蚊に食われる」という表現を使うそうです。ただ、関東では通用しないらしいです。いつも書くことやけれど、日本という国、狭いようで広く奥深い。

 平原綾香という歌手がホルスト作曲「惑星」組曲の「木星」の有名な主題だけをとりだして歌詞をつけて歌った「Jupiter」というシングルCDがヒットしている。私は「惑星」が大好きで、いろいろな指揮者の録音した演奏をCD化されたものについてはほとんど持っている。歌詞つきのものもある。例えばシャルロット・チャーチのアルバムに収められているもので、そのためだけにそのアルバムを買うたくらい。平原綾香盤も実は割と早くに買うているんやけれど、1回聴いただけで繰り返し聴きたいとは思われん。なんでかというと、ひとつの主題だけをしつこく繰り返しているので飽きてくるからですね。
 確かに「Jupiter」のもとになった主題は、雄大で美しいメロディやけれど、どんな名曲でも同じ主題を何の変奏もなく繰り返していると、そら飽きるわな。「木星」は全曲演奏すると平均8分くらいの曲やけれど、リフレインの部分をカットしたり再現部を短くしたりしたら4分くらいに編曲できると思う。そうすると原曲の持つ大きさや広さをうまく生かしたものになっていたんと違うかな。
 もっとも、こんな風に考えるのは私が「惑星」という管弦楽曲をこよなく愛しているからで、「木星」そのものを聴いたことのない人などにとっては別に関係ないことではあるやろうけれど。
 私としては、同時収録の「蘇州夜曲」の方がよかった。やはり、歌曲として作られたものとそうでないものを歌曲に仕立て直したものやと、最初から歌うために作られた曲の方がええということかなあ。戦前の名曲がこういう形で蘇るのは、なんか嬉しいね。

2月22日(日)

 ぐっと温くなった上に、夜には雷をともなう雨。ベランダで煙草を吸うていても。強いけれど生暖かい風が吹いてきて、季節はもう春。先日まで寒い寒いとがたがた震えていただけに、体がこの温さについていかれず、なんだか重い。明日は一気に10度くらい下がるらしい。体調管理の難しい季節ですな。

 さて、「鉄腕アトム」第45話は「革命前夜」。レッド将軍の愛娘エナのお気に入りは、キップというロボット。庭園で花壇の管理を行うキップにエナはなついていたが、それがレッドには気に入らない。レッドはキップを廃棄物管理場で働かせることに決める。出ていこうとするキップを止めようとしたエナは、階段から落ちて意識不明となる。ここらあたりは「火の鳥 復活編」のロビタのエピソードを意識したものなんやろう。ロボット嫌いのレッドはキップを訴え、キップの処分はなんと最高議会で決められることになった。ここらあたり、今回のシリーズでは「ロボット法」があるんかないんかわからんから、こういう展開を作れるんやろうけれど、普通の法廷で裁かれるんやない理由は、私は判然としなかった。しかも、議長のリヨンの側近としてなぜかランプがついている。ここらあたりも物語の流れから行くと不思議な人物は位置やなあ。結局、なんの技術的な証拠もないままにキップは故意に人間を害したものとみなされ、同型のロボットは全て処分されることになる。人間の理不尽な仕打ちに悩むアトム。そして、処分されかかっているロボットを強奪し、人間に叛旗を翻す青騎士。人間とロボットの戦いが始まろうとしている。
 ツッコミたくなる部分がないではないけれど、ここにきてシリーズの芯となるロボットと人間の相克というテーマが盛り上がってきた。45話ということは、4クールの放送としてもあと5〜7回。3月に終了するならば、5回だけで収拾つくんかいな。マーク・ハンドラーたちが脚本を書いたどうしようもない回はいらんから、もっと早くからこの戦いは始められるべきやなかったか。それとも、残り5回は続き物にして一気呵成に話を進めていくということなんか。今回の脚本は3週連続の大田愛。アトムの人間への怒りと、ロボットは人間を傷つけてならないという信念の矛盾がよく描かれていたと思う。この調子で行きながら、最後にマーク・ハンドラーがしゃしゃり出てきてぶち壊す、というようなことがないよう祈ろう。いや、その方が今回のシリーズにふさわしいかもしれんな。

2月23日(月)

 21日の日記で「Jupiter」という歌について書いたら、妻が聴きたがったので夕食の支度をしている時に聴く。妻もまた不満気やった。そこで、昔買うた冨田勲の「惑星」のCDを引っ張り出してきて、口直し。音の厚味が違う。1976年の録音やけれど、いつ聴いても新鮮やね。
 冨田勲のシンセサイザーは、解説書によると「モーグ・シンセサイザー」というもので、多数のモジュールにピンを差し込んで音を重ねていくという作り方をしているらしい。使うているのは機械やけれど、音楽家が求めているのは自分の音のイメージの現実化。ただの道具やない。ヴァイオリンでいえばストラディバリウスのような名器やね。これがYMOに代表されるテクノポップとなると、楽器として完成された形となって、新しいポップスを作り上げていくということになる。
 ところが、なんでか知らんが、シンセサイザー音楽はそこで止まってしもうたような気がするんやね。まさに「道具」として手軽に音を打ち込んでいくだけのものになっていく。「Jupiter」の編曲と冨田勲の「惑星」の編曲を聴きくらべると、四半世紀という時間を経てシンセサイザーで生み出された音がペラペラに薄いものに成り下がってしもうたと、はっきりと感じる。
 昔はよかったと言い出したら、年をとった証拠ということにもなるんやろうけれど、ことシンセサイザー音楽に関しては、冨田勲の昔の音作りの方が格段に上やね。今の耳で聴き比べて感じるもんなあ。なんでこうなってしもうたんやろう。私は音楽の専門家やないからわからんけれど、例えばクラシックのCDでも新譜よりも過去の名指揮者のライヴ録音が話題を呼んだりするのと共通しているように思う。
 こうやって文化は衰退していくんやろうか?

2月24日(火)

 今日から大阪府の公立高校は前期入試。私の勤務する高校でも入試が行われた。昨年に続いて2回目やけれども、独特の緊張感があり、疲れた。どの高校に入学するかは人生における大きな分岐点だけに、こちらもそれだけの重みを感じながら対応しなければならん。それだけでもうへろへろになる。
 というわけで、今日はバテバテ。明日は面接と採点があるから、さらに疲れることやろう。というわけで、今日の日記はここまで。いやほんまにしんどいんだ。

2月25日(水)

 今日も入試。面接官を担当したけど、受験生も緊張するか知らんが、私もかなり緊張したぞ。集団面接で、次々と入ってくる中学生相手に決まった質問を繰り返していく。気がついたら担当の40人全ての面接が終っていた。午後からは採点。ああ疲れた。

 方言ネタばっかりで申し訳ないけれど、カップラーメンを作っていて気がついたことがある。具の入っている袋にはたいてい「かやく」と書かれてるんですね。この「かやく」も関西弁やなかろうか。関西でいう「かやくごはん」はたぶん関東では「五目めし」と呼ぶんやないかな。子どもの頃、テレビのコマーシャルで「五目めしのもと」というのを見るたびに「きたないご飯やなあ」と思うた記憶があるからや。関西弁で「ごもく」というと「ゴミ」のことなんですね。ゴミの混ざったご飯を連想してしもうたわけです。ああきたない。
 で、カップラーメンの具の入った袋に「かやく」と書いてあると「関西弁やなあ」と思うんやね。ラーメンを作ってる会社は東京に本社があったりするのにね。これはやっぱり最初にインスタントラーメンを作った日清食品が大阪の会社やったこと、それに続いたエースコックも大阪の会社であることと関係があるんやろうなあ。大阪の会社やから具のことを当然のように「かやく」と書く。後発の会社もそれにならって「かやく」と書く。で、業界の共通語として具材のことを「かやく」と呼ぶのが定着した……。私はそう推測してるんやけどね。
 まてよ、カップうどんは大阪と東京ではスープの味つけを変えているという。ということは、「かやく」と書かれているのは関西向けの商品だけで、関東で発売してるものは、同じ商品でも具の袋に「具」やとか「五目」と書かれてるのかもしれん。近いうちに東京に行く予定があるから、東京のコンビニでカップラーメンを買うてみようかな。そんなことをせんでもここを読んでくれてはるみなさんにきいたらええだけのことですか。そやけど、こんなしょうもないことにまで気を向けたりはせんわな、普通は。

2月26日(木)

 今月の「SFマガジン」で小林治さんが書いているアニメのレヴューによると、原作の再構成という点で「アップルシード」よりも「鉄腕アトム」の方ができがええそうです。「アップルシード」は最悪のできなんやろうなあ。原作の持ち味をぶち壊すどころか、10秒に1回くらいの割り合いでツッコミたくなるようなできに違いない。なにしろ「鉄腕アトム」よりもできが悪いというんやから。そうとうなものやろうね。
 小林治さんによると、「鉄腕アトム」の最終回だけはぜひ見てほしいという。まあ、今月に入ってから別の作品になったかというくらい展開が面白くなったのは事実やけどね。そやけど、最後の8話だけよかったからというて「今作がこれからのスタンダード『アトム』になるのだ」などとは、私は口が裂けてもいいたくないなあ。それまでの40数話のほとんどがお話にならんできやという事実を無視したような書き方にはおおいに異議があるぞ。今作で、虫プロ版の値打ちがまた上がったと私は思うてるんやけどね。スタンダードはやっぱり虫プロの白黒版でしょう。
 小林治さんのアニメ・レヴューは毎回楽しみにしてるし、納得できる論調が多いんやけど、こと「鉄腕アトム」については私の感覚とはかなりかけ離れているといわざるを得んなあ。原作の持ち味を殺さずに再構成しているアニメというなら、「魁!クロマティ高校」の方が上でしょう。「魁!クロマティ高校」はSFではないけれど、今放送されている「鉄腕アトム」かてSFやないと思うぞ、私は。「かいけつゾロリ」も(原作は1冊だけ甥の持ってたのを読ませてもろうただけやけど)おおらかで楽しいできですな。「アトム」をほめるんやったら、「クロ高」や「ゾロリ」を、私はほめたい。

2月27日(金)

 妻が「今日の夕刊、読むとこあらへん」と言う。なるほど、サリン事件首謀者の判決に関する記事ばっかり。私は仕事をしてたから昼にテレビを見るということもなかったけど、妻は昼のテレビでもこの裁判についての報道をさんざん見ているやろうからね。

 網野善彦さんの訃報に接する。死因は肺ガン。享年76。
 私が網野さんの「日本の歴史をよみなおす」を手にとったのは10数年前。中世日本について、それまで私が習うてきた常識をひっくり返し、なおかつ説得力のある学説が、高校生向けの「ちくまプリマーブックス」ということもあって、非常にわかりやすく解説されていた。相前後して読んだ今谷明さんの本も合わせ、南北朝・室町時代に対する認識を新たにさせられた。私は史学が専門というわけやないけれど、社会科の教師として歴史に関しては一通りの知識を常に持ってないとあかん。ましてやその頃は採用試験にも合格してない講師の身。貪欲に知識を得ようと手にとった一冊に、「日本の歴史をよみなおす」があった。差別というものの由来は、実は聖なるものを敬して遠ざけていたことが時代の推移で聖的な部分が忘れ去られ、遠ざけられるという事実のみが残ったということだと指摘され、ものの見方がはっきり変化した。あの一瞬は忘れられん。
 それ以来、新書などで網野さんの新刊を見かけると、とりあえず買うことにした。そして読んだ。網野史観は、奇説ではない。それまでの常識を覆しはするが、とっぴなものではない。そやから凄い。そう感じた。
 謹んで哀悼の意を表します。

2月28日(土)

 乱歩賞作家、伴野朗さんの訃報に接する。享年67。死因は心筋梗塞という。
 10数年前、乱歩賞作品全作読破というのを試みたことがある。その時に読んだ「五十万年の死角」がめっぽう面白く、その後も「ハリマオ」、「北京の星」などの諸作を読んだ。朝日新聞の上海支局長を勤めたという経歴からか、近代アジアを舞台にとった冒険ミステリは、さまに手にとるようにその時代を眼前に再現してくれる面白さやった。特に「五十万年の死角」は、戦時中に失われた北京原人の骨がどこに消えたかを推理するというもので、歴史の影に隠された真相を追うというのは、その後も伴野さんのテーマとしていろいろな作品に出てくる。そし、それがまたリアリティのある筆致で書かれるから、読んでいてわくわくしてくるんやね。
 ただの謎解きでもなく、単純な冒険小説でもない、独自の色を持った作家やった。こういうタイプの作家は、いてるようでいてへんのですね。気温が日によって激しく変化するこの時期、心不全で倒れる人はけっこう多いんけれど、こういう形ですぐれた作家が失われたのはなんとも残念。
 謹んで哀悼の意を表します。

2月29日(日)

 今週の「鉄腕アトム」は第46話「ロボタニア建国」。
 青騎士は人間に叛旗をひるがえし、ロボットだけの国、ロボタニア建国を宣言する。これに対し、レッド将軍は最強兵器を用いて殲滅するようリヨン議長に進言し、入れられる。レッドの娘、エナは意識を取り戻し、キップを探し求めるが、ランプの指示でエナのことはレッドには伝えられず、エナ自身も病室に軟禁されてしまう。議会はAIロボットを全て解体することを議決し、アトムもその対象となる。お茶の水の指示でアトムはロボタニアへ。アトムはそこでロボットを襲う戦闘機と戦うが、戦闘機に乗っている兵士の命は助け、僚機の操縦士はそれを見てアトムを見逃す。最強兵器と青騎士の間に入り、戦いをやめさせようとするアトムだったが……。
 脚本は長谷川圭一。人間のロボットへの弾圧ぶりが非常に理不尽なものだということが強調されており、視聴者は感情的にロボットに肩入れしたくなるというような展開である。その良し悪しはともかく、ストーリーの盛り上がりはこれまでにないものがある。何回も書くけど、このレベルでどうして最初からいかれなんだか、ということやね。
 もっとも、ロボタニア建国に対する資金、資源調達はどうやって行われてるのか、ランプの一存でエナの回復を実の父にすら知らせないというような措置が可能なんかなど、細かい部分でツッコミをいれたくなるのは、あまり変わらへんなあ。やっぱりツメが甘いわ。アトムが人命を助けたというだけで僚機がアトムを見逃すという命令違反をするというのはなんかクサいし。街頭テレビで人々を扇動するシーンが相変わらず出てくるけれど、これにはまだ違和感があるなあ。
 これまでにもあったツッコミどころはそのまま残してはいるけれど、やっとまともになったなあという感じかな。たぶん、この水準で最終回まで行くんやろう。遅きに失したという印象は免れ得ないけどね。
 そうかてなあ、地上波で「甲殻機動隊」がはじまり、それを見てたら、比べたらあかんと思いつつも比べてしまうんよ。溜め息出てきますわ。


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