ぼやき日記


4月1日(木)

 いよいよ新年度の開始。私は今年は現在の勤務校で初めて担任を持つことになった。2年生の担任なんで、生徒の様子はまあまあわかっている。とはいえ、養護学校の担任とはまた違うんで、どういう感じで自分のクラスの生徒と接していくかは、実際に始まってみんとわからん。まあ、自然体でいくしかないな。始業式の日にはタイガースのハッピを着てメガホンをふりまわしてホームルームをするというような奇をてらったことはしてはいかんということですね。誰もせんよ、そんなこと。
 とはいいながらも、担任を受け持つにあたってはかなりプレッシャーもあることは事実。2年と3年の間にはクラス替えもなく担任もそのまま持ち上がる。つまり、今回担任を受け持ったということは、彼らの卒業までおつきあいするということやからね。
 基本的には、嫌われんようにしようやなんて思わんことやと考えている。そういう姿勢で臨むと、彼らにその内心を見透かされてしまう。見透かされてもかまわん、ありのままの自分をぶつけること、これしかない。教育実習で初めて教壇に立った19年前の気持ちを思い出すことにしよう。
 というわけで、いかなるクラスになっていくか。始業式まであと1週間、やっぱりプレッシャーがかかってるぞ。ううむ。

4月2日(金)

 開幕ですねえ。仕事が終ったら速攻で家に帰り、東京ドームからの中継を見たぞ。ゲスト解説には星野仙一前タイガース監督が。さすがに星野さんを前にしたらレギュラー解説の原辰徳さんも日本テレビのアナウンサーもいつものようにジャイアンツを煽り立てるような実況はでけへんかったな。それどころかタイガースの鳥谷内野手が打席に入ると「さあ、鳥谷のホームランは見られるか!」てなことをほざいている。鳥谷はアベレージヒッターでホームランバッターやないやん。だいたいタイガースにとっては鳥谷は有望な新人ではあっても唯一のスターというわけやない。首位打者の今岡、盗塁王の赤星、連続試合出場記録をのばす金本、沢村賞投手の井川と鳥谷以外にも凄い選手がごろごろといてる。日本テレビのアナウンサーが「鳥谷!」と吠えるたびにしらけてしまうのですね、私は。星野さんの前でいつものようにジャイアンツ全面礼讃の実況をしたら偉いと思うたんやけどなあ。あかんやん。
 試合はタイガースの完勝。アナウンサー曰くのジャイアンツの「史上最強打線」も井川の前に3点とるのがやっと。それどころか主砲のペタジーニはなんとベンチに最後まで温存している。そんな余裕があるんか、ジャイアンツ。
 とにもかくにも、とうとう開幕しましたぞ。ああ嬉しい。

4月3日(土)

 今日は昼のうちに京都に所用で出かける。暖かい陽気の上に桜は満開。阪急電車は花見客でいっぱい。なんとか行きも帰りも補助イスに座れたからよかったけれど、こういう日に出かけるもんやないですな。たまたま用事と花見日和が重なっただけやねんけど、タイミングが悪いなあ。
 帰宅したら、帰省していた義兄が遊びに来た。ナイターを見ながら盛り上がる。妻によると、大阪を離れて東京に行くまでは特に野球に興味があったわけやないけれど、東京に単身でいると妹である妻の知らぬ間にタイガースファンになっていたとのこと。そういえば、三村美衣さんも20年ほど前の大阪にいてる時に野球の話なんかした覚えはないのに、今ではわざわざ神宮球場までタイガースを応援しに行くようになってはるなあ。関西人が異郷に行くと、タイガースにアイデンティティを求めるようになるのかしらん。そこらあたり実に興味がある。
 ところで、ナイター中継を見ていたら、「チアーズ」というドラマの宣伝のために石原さとみちゃんが出てきていた。アナウンサーがドラマについて質問したら、関東弁で受け答えをしていた。どうもついこの前までみごとなまでに大阪弁でしゃべっている「てるてる家族」の冬子役の印象が強かったから、彼女がほんまに大阪の子のような気がしていた。彼女は東京出身なんやから関東弁でしゃべるのが当たり前やのにね。「冬ちゃんが関東弁でしゃべってる!」とごっつい違和感があるなあ。それくらい自然に大阪の子になっていたわけやね。ちなみにアナウンサーが「石原さんは野球はどこのファンですか?」ときいたら「大阪でドラマをやってたので阪神……」と答えていた。そうか、大阪がタイガース優勝で盛り上がっている真っ最中に撮影が始まったから、野球に関心のなかった彼女ももろに影響を受けたというわけやね。東京の子が大阪に来てもジャイアンツにアイデンティティを求めるようなことにはならんのか。いや、これだけでそう決めつけてはいかんのやけれども。

4月4日(日)

 毎日野球中継ネタですまん。
 今日の日本テレビの解説は中畑清と水野雄仁のジャイアンツOBコンビ。私は数ある野球解説者の中でも中畑が最低であると確信している。これまで何度か彼の解説を聞いているけど、感心するようなことを言うた試しがない。そこで今日はテレビの音声は消してABCラジオで仰木彬さんと福本豊さんの解説を楽しむことにした。
 そやけど、時々テレビの音声と切り替えて中畑がどんなトンチンカンなことを言うているか確かめたりもした。いけずな視聴者ではありますね。案の定、解説でも何でもないことを言うている。ジャイアンツが清水の2ランで5点差に縮めた時に中畑は「ここで追いついてひっくり返して、今年のジャイアンツ相手には何点取っても勝てないんだということを示さなければなりません!」と力説している。5点差をひっくり返せるという根拠も何もない。ラジオでは知将、仰木さんが「清原を起用せずペタジーニを使うべきでしたね。昨年のデータではペタジーニの方が下柳を打ち込んでるんですよ。堀内監督は左投手だから右打者という意図だと思うんですがね。小久保も左投手を苦手にしてるんですよ」とジャイアンツ打線がタイガースの先発左腕下柳に手こずっている理由を明解に示していた。
 なんで中畑を「解説」に起用するのかなあ。福本さんのようにアナウンサーが「キンケード打った! 大きいぞ!」と絶叫している横で「わはは、入った、入ったよ、これは」と近所のおっさんが喜んでしゃべってるというような天然ぶりがおもろいというわけでもないしなあ(実は福本さんの解説はそのキャラクターとは違うて単刀直入で鋭く辛辣やったりするんやけど)。ジャイアンツファンはあんなんで満足できるんか? わからん。

4月5日(月)

 担任のクラスを持つことになったということは4月1日の日記に書いたけれど、現在自分が使用している携帯電話の番号とアドレスはあまり生徒に教えたくない。実は演劇部の生徒には教えているんやけれど、それとクラスの生徒がいっしょになってしまうとかなりややこしい。そやけど、現在の状況で生徒と連絡を取り合うのに携帯電話は必要不可欠やないかと思う。
 というわけで、もう1台携帯電話を持つことにした。これは今使うている会社のものと違う会社のもので、パケット料金などが格段に安い。たぶん、電話よりもメールを多用することになると思うので、なるべくパケット料金は抑えたいのです。また、現在使用している会社の場合、スパムも多いしね。
 で、駅前の携帯ショップにいく。たいていの機種にカメラがついている。デジカメを持っていくつもりで忘れてしまうというようなことも多いので、カメラがついていた方がええか。それにしても、今私が持っている携帯は1年半ほど前に買うたものなんやけれど、それに比べると驚くほどに機能が増えているなあ。パソコンもそうやけれど、日進月歩どころやあらへんぞ。分厚いマニュアルのページをめくるうちになんかめんどうくさくなってきた。まあ、これはサブの電話やから、電話とメール、そしてカメラくらいしか使わんやろうとは思うけどね。担任が終ったら解約する予定でもあるし。

4月6日(火)

芦屋市立美術博物館
 高野史緒さんご夫妻のご厚意で入場券をいただいたので、芦屋市立美術博物館まで「幻のロシア絵本1920-30年代展」を見にいく。芦屋までは我が家の最寄り駅から40分ほどで行けた。思ったより近いので驚く。行きの電車では黒いスーツを着た若い男女が数人かたまって談笑している。新入社員たちやろうねえ。研修の途中かな。まだ実際に業務についてないということもあって明るい笑顔です。実際の業務でこき使われてぼろぼろにならなんだらええんやけれどね。
 さて、展覧会やけれども、ソビエト連邦が成立してからスターリン体制が確立するまでに発行された絵本を日本の画家が収集していたコレクションやそうで、その画家が亡くなったあと、間違って捨てられていたかもしれないというようなもの。幸い遺族の方に理解があり、美術館に寄贈されたんやそうです。個人のコレクションというものは常にそういう危険性があるわけで、SF関係者の持っているコレクションなんかは散逸しないように管理する人が今後は必要になってくるんやろうなあ。と、これは先日高野さんや大熊さんと会食した時に出た話題ですが。
 私たちが「絵本」と聞いて連想するものとは違い、画風はかなり前衛的で面白い。特にソ連初期の時代のものは物語もいささかナンセンスな風味があり、それと絵があいまってかなりユニーク。ここのところ童話のアイデアが煮詰まっていてなかなか思うようなものが書かれなんだだけに、私にとっては刺激剤になった。時代が下ると社会主義思想を教育するような内容のものになってくるけれど、画風は大胆でその前の時期の流れが息づいている。ところが、スターリン体制が確立してしまうと、悲しいことに保守的で冒険のできないものに変化してまう。これは、ショスタコヴィチやプロコフィエフなどの作曲家が社会主義の理想や革命の偉大さを鼓舞する音楽の作曲を強いられたということを思い出させてくれる。文芸も含めて芸術そのものが政治によってその発展を禁じられていく愚かさが、初期の独創的な絵本の魅力を目の前に突きつけられることによって実感させられる。これは、社会科の授業にも参考になる展覧会やなあとも感じた。
 博物館の特別展示である「古今雛」の人形展も非常に素晴らしかった。雛人形というたら段飾りしかしらなんだけれど、昭和30年頃までは関西には「御殿飾り」という形があったんやねえ。
 というわけで、井上さんと高野さんのおかげで楽しくてためになる1日を過ごすことができました。ありがとうございます。

4月7日(水)

 妻から教えてもらいNHK教育テレビ「趣味悠々」の「1から始める梅沢由香里の碁」に加藤夏希ちゃんが出演しているというので、つい見てしまう。
 いくら「ヒカルの碁」が人気になっていようと、子どもの頃に父が毎週日曜日に碁の番組を見ていようと、全然関心がなかったというのに、ミーハーはこれですからねえ。
 いやあ、囲碁というのは面白いもんだなあ。また由香里先生の教え方がうまいんやわ、これが。「ヒカルの碁」の監修をしてるだけのことはある。関係ないか。教え方はうまいし可愛いし、これは毎週水曜日は「碁」の日になるんと違うかというくらい、妻といっしょに一所懸命見てしもうた。なるほど、子どもたちが熱中するはずやわ。
 それにしても加藤夏希ちゃんはセンスがいいというのか、由香里先生に実にタイミングのよい質問をする。しかも、先生のヒントからすぐに理解して的確な答えをする。その上、彼女独特の天然ノリは(少し抑えられてるけど)ここでも発揮されている。なに、第2回以降、どんどん弾けるに違いない。
 なかなかわからん初心者のおっちゃんという役割の夏木ゆたかもええ味を出している。いやほんまに、NHK教育テレビは大胆なキャスティングと硬軟取り混ぜた内容でいつも驚かせてくれるなあ。民放も含めて、今一番すごいチャンネルやないやろうか。
 ところで、4月からの語学番組に江川有未もレギュラー出演しているけれど、そのおかげで「仮面ライダー剣」の出演者の中で一人だけどんどん滑舌がよくなっていったりしたらおもろいんやけどね。

4月8日(木)

 本日は始業式。担任のクラスに行き、新しいクラスになって少し緊張している生徒たちと対面。1ヶ月もすれば「自分のクラス」という感じになるのだろうな。今日はまあ、顔合わせ。クラスがえなしの担任持ち上がりなので、これから2年のおつきあいとなる。生徒たちのうち、私が直接授業で受け持ったことのない生徒たちは硬い感じ。しばらくはお互い様子見ということになるんやろうね。なに、1週間もすれば地金が出ますわ、私も彼らも。

 イラクで日本の民間人3人が拘束された。テロ勢力は自衛隊の撤退を条件に解放するというているそうな。暴力に屈服してはいけないという論も出るやろう。それはもっともではあるけれども、武装した集団を派遣したということからしてこちらが暴力をふるう用意があるということを示しているともいえる。私は自衛隊派遣以前にも書いたけれども、自衛隊を派遣したことによって日本人の被害者が出た時にどうするか、それが決められていなかったことに問題があると思うている。私のような者でも考えつくことを国民の代表たる政治家たちが何も考えてなんだとは思いたくないけどね。

 芦屋雁之助さんの訃報に接する。享年72。死因は心不全。近年、不調が伝えられ続けていたから、ある程度覚悟はでけてたとはいえ、上方喜劇の味のある役者の死は、やはり辛い。
 雁之助さんというと、私と同世代で物真似の好きな子どもやった人ならきっと1回はやったことがある「わてが、雁之助だんねん」というセリフがふと思い浮かぶ。まだ「裸の大将」が持ち役になるずっと以前のころのことですね。私はこのセリフはたぶん、どなたか物真似の芸人さんがやってたのを聞き覚えて、その真似をしていたんやったと思う。なんでかというたら、このセリフは「番頭はんと丁稚どん」で小番頭役をしていたときの決まり文句やから、このセリフが流行った頃には私はまだ生まれてもいてなんだはずやからね。これと、「イェ、わたくし、鳳啓助でございます、ポテチン」というのは、元ネタを知らん子どもでも聞き覚えている有名な決め台詞やったんやないかな。
 私は子どもの頃、雁之助さんの印象は実は薄かった。それよりも芦屋小雁さんや雁平さんの方が子ども心には親しみやすいキャラクターやったからね。雁之助さんは子どもには強面すぎた。例えば同じ「なにわの源蔵事件帳」でも海坊主の親方のイメージは雁之助さんの方が原作により近いんやけれど、桂枝雀さんが演じたシリーズが(先に放送されたということもあるやろうけれど)より人気があった。
 それだけに、その強面と山下清という素朴な人間という役柄とのギャップがなかったというのは、非常に凄いことやないかと思うている。つまり、これこそほんまもんの演技力というもやなかろうか。残念ながら、上方喜劇自体に力のない現在、雁之助さんの衣鉢を継ぐ役者はちょっと見あたらん。強面でいながらいきなりなよっとした口調に切り替えて笑いをとるという手法は誰がやっても受けるというもんやなかろう。
 謹んで哀悼の意を表します。

4月10日(土)

小林泰三さん
 アジマリカム「玩具修理者」大阪公演のチケットをいただいたので、喜んで見に行く。あの小説をどのように舞台化したのか。素人ながら、高校の演劇部顧問なんていうものを2年やっていると、演劇についての知識は相変わらずないものの、どのような工夫を裏方がしているかなどそれなりに興味がわいてくるから面白い。
 出演は東京公演と同じ人やそうで、姉役を亜里さんという女優さんが、そして、それ以外の役ほとんどを松本秀明さんという俳優さんが一人で演じてる。どのように何役も使い分けているかというと、弟の役以外は全て目のところにかぶせる仮面をつけているんですね。このくふうはなかなかうまい。役によって仮面が違い、あとは衣装、声のトーンなどを変えてみごとに別人になり切っている。ここらあたりの切り替えは難しかろう。
 演出は、小林泰三さんの原作の心理ホラー的な部分を強調したもので、それは今日の第1回公演のあとの座談会で小林さん本人もそのように言うてはったけれど、それに加えて「邪悪さ」がどの役からも伝わってくる、そういう演出やったと思う。姉に理不尽な懲罰を加える父親はサディスティックな人物であるし、猫を修理に出した友だちは主人公が弟を死なせてしもうたことをわかっていてわざと「道雄ちゃん、おもらししてるわよ」というようなことをきいてくる感じ。その姉にしたところで弟に対する復讐を、真実を告白することによって真綿で首を絞めるようにいたぶっている。その「邪悪さ」がなんともいえん嫌悪感をかもし出していて非常に面白かった。
 公演後は今回の公演のプロデュースをした福田祐子さんと小林さんの座談会。というよりも、インタビューかな。執筆のきっかけや影響を受けた作家の話など、わかりやすく話してはった。新しく買うた携帯でとった写真を載せてみた。新しいおもちゃを持って喜ぶ子どもみたいですな、われながら。手ぶれをしてぼけてしもうたのが申し訳ないけど、小林さんのVサインは珍しい。カメラを向けられて「ピース」をする人やったんか! という驚きがありまして。
 会場には堀晃さんも来てはった。もっと作家さんたちの姿を見るかなと思うてたけれど、明日来はる人が多いみたい。場所は高津さんの近くの「シアトリカル應典院」というお寺。小劇場としてはわりといい感じのところ。一心寺といい、なんで大阪にはお寺に小劇場が新しくできるんかな? 謎やなあ。


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