ぼやき日記


12月1日(水)

 今年の「流行語大賞」は「チョー気持ちいい」やねんて。相変わらずずれてるぞ自由國民社。だいたい「チョー××」なんちゅう言葉遣いがはやったんは10数年前のことやないですか。北島康介選手の独創やないし、北島選手が使うたことによって再び「チョー××」という言葉遣いを誰も彼もしたというわけでもない。毎年「なんでこれが?」と思う「流行語大賞」が選ばれるけど、今年も案の定、ですね。
 「冬ソナ」「セカチュー」が入っているのは当然のこととして、アニマル浜口さんの「気合いだー!」は別に今年初めて発せられた言葉やないけど、「チョー××」よりは流行語にふさわしいから許せる。ただ、「新規参入」を入れるより「たかが選手」の方が今年の言葉にはふさわしいように思う。「人生いろいろ」というのもあったなあ。なんで入ってへんのや。私としてはこういう言葉を大賞に選んで嫌味たっぷりに小泉首相やナベツネ氏にトロフィーを渡したりした方がおもろいと思うぞ。
 そうやねん、自由國民社に欠けてるのはこういう視点なんですわ。流行語というものを使うて世相を笑い飛ばすという、そういう楽しさがあらへん。いや、本人たちはそうしてるつもりなんかもしれんけれど、センスが悪すぎてすべってしもうてる。審査員が誰なんか知らんけど、もう少し人選を考えた方がええんやないの。

12月2日(木)

平成紅梅亭
 原稿締切りが近いのに、テレビの公開録画のハガキが当たったので行ってきてしまいました。落語番組の『平成紅梅亭』であります。仕事が終ると原チャリでよみうりテレビへ直行。ところが、あのあたりの地理を把握してなんだんで、完全に迷子に。人に聞いたりなんかしてようやくテレビ局に。妻と落ち合い、昔の寄席風にしつらえられたスタジオへ。写真は入り口に吊ってあった提灯。セットもテレビで見ているよりも本物という感じがする。もっとも、スタジオの中はかなり狭苦しく、こちらは予想とはかなり違う。
 出演者は笑福亭生喬、桂梅團治、桂文太、林家正楽、桂南光、林家染丸。紙切りの正楽さんと小佐田落語の南光さん以外は、みんな東京ネタを上方落語にアレンジしたもので、どうやら今回はそういう趣向らしい。
出演者一覧
 「野ざらし」「転失気」「幾代餅」「子はかすがい」いった上方では珍しいネタをいろいろと聞けたのがおもしろかった。誰が何を演じたかは、関西地方の落語ファンの人たちの楽しみを奪うことになるんで、内緒にしておこう。
 落語もおもしろかったけれど、客層が落語ファンばかりの会とは違うのがおもしろいというたらおもしろかった。私の斜め前に座っていた老人は落語会に行くのが好きみたいで、小さなノートに几帳面に演目を書き込んだのを広げていた。通なんかなと思うていたら、「幾代餅」が始まったところで、隣にいた奥さんに「あれは『崇徳院』や」などとささやいている。どっちも恋煩いの話やけど、噺の始まり方が全然違うやん。間違うかねえ。「野ざらし」でも、演者がわざわざ「野ざらしの一席」と最後に言うてるのにノートをちらりと見たら「骨つり」と書いている。たしかに上方落語の「骨つり」は東京落語の「野ざらし」の原型で似通ってはいるけど、途中の展開やサゲはかなり違う。どうも落語が好きなんやなくて「落語会に足を運んでいる自分が好き」という人らしい。別にどんな人でもかまわんのやけれど、自分の奥さんにささやくふりをしてまわりの人間に聞こえるようにとんちんかんなことを言うのだけはやめてほしい。知っていても、いや、知っているからこそ同じ噺をいろいろな落語家の演出で楽しみ、同じ落語家が演じてもその度に違うところを見つける楽しみというものがあるでしょうが。こういう人に限って「御趣味は?」と尋ねられたら「落語を聞きに行くのが好きでねえ」なんて言うて自分の落語ノートを広げて人に見せたがるに違いない。決めつけたらあかんかな。でも、十中八九あたってると確信している。
 こういう人のことを半可通というのかね。まあ、老後の楽しみの邪魔をするつもりはないけどね。そやからというて人に聞こえるように噺の先取りをして奥さんにささやくのはやめてほしいものです。知っていて黙っているというたしなみは持ってほしい。そやないと、その囁き声が耳について落語に集中でけんやないですか。
 というわけで、放送は1月12日やそうです。生で見聞きしたものがどう映像化されているか、楽しみですねえ。

12月3日(金)

 恥ずかしい話やけれども、朝寝坊をしました。時間休をとり、遅れて出勤。当然、朝のホームルームはかわりの先生に行ってもろうたわけです。で、帰りのホームルームのために教室に入ったらクラスの生徒に「先生おはよう、何時に起きたん?」ときかれてしもうた。先生、朝寝坊したことまでばらしてしもうたんかいな。「えーと、8時……」。教師の威厳も何もあったもんやないですな。風邪気味の上に昨日落語を聞きにいった疲れが出たんやろうなあ。明日は休みじゃ。疲れをとらねば。いや、原稿を書かねば。

 相変わらずわけのわからんスパムメールが多い。たいてい読まんと捨てるんやけれど、メールの題名が気になるものが時々あって、つい読んでしまうものもある。その中から1つ紹介して笑いましょう。
 まずは「お忙しいところすいません^ ^;」というタイトルのメール。
「最近何度も知らない人からのメールが多いんですけど、私のアドレスどこで知りました?^^;
もし良ければ教えてくれませんか?
ちなみに貴方様からは4日程前に空メールでアドレスしか載っていませんでした。
参考までに私は歳が26歳の沙耶香といいますがご存知ではないですよね?」
 参考までかなんかしらんけど、年齢と名前を書いて知らん相手にメールを送るか、普通。「それは私のアドレスを勝手に使うている人がいるんです」とバカ正直に返事を書いたら悪用されるぞきっと。もちろん知らない人からのメールが多いのはあなたも私もいっしょです。
 いやしかし、こういうタイトルのメールは困るのことよ。顔文字を使うているから仕事の依頼やないとは思うけれども、ほんまに用事やったらどないしよと思うわけよ。もっとも、ドメインが「yahoo.co.jp」やから、スパムであろうなと予測はついたけれど。ソフトバンクはこんなものを許していてようあの妙に厳しいプロ野球機構に参入を許してもらえたな。あ、球団買収は審査なしでいけてましたか。
 それはともかく、ようまああの手この手思いつくもんですな。そういう知恵をもっとまともなことに使えませんか。使えんからこういうことをしとるわけですか。それは失敬。

12月4日(土)

 今年の日本SF大賞は押井守監督のアニメーション「イノセンス」に決定したという。ううむ。そうきたか。京フェスのあと北野勇作さん、林譲治さん、冬樹蛉さんたちと話していて、「今年は大賞は何かなあ」という話題になったんやけれど、小説の名前ばかりあがっていて映像については名前があがらなんだ。
 ただ、作品の完成度や面白さなんかやったら「イノセンス」よりもテレビ版の「攻殻機動隊」の方が上やないかという気がするし、同じ理由で「宇宙のステルヴィア」かて受賞してもおかしくはないとも思う。この手の賞はその年の作品に、という限定はあるし、テレビシリーズの場合は選考委員が26話全部を見なならんということもあって受賞の対象にはなりにくいのかなとも思う。「エヴァンゲリオン」くらい話題にならんとあかんのやろなあ。
 「イノセンス」は確かに密度が濃く、独特の空間を作り出していて見ごたえのある映画やった。そういう意味では大賞に選ばれておかしくはないとは思うけれど、テレビ版との比較や他のSFアニメとの比較検討はどのように行われたのか、気になるところではありますね。
 なにはともあれ、押井監督はじめ、「イノセンス」に関わったみなさまがた、おめでとうございました。

12月5日(日)

 昨夜、気持ちよく眠っていたら、午前3時頃、「火災が発生しました。火災が発生しました」というむやみに冷静な男性の声でたたき起こされた。うちのマンションは前にも書いたけれど火災報知器はサイレンやなく録音の放送やねんな。レム睡眠の最中やったんか、体が思うように動かん。時計で時刻を確認する。妻は起きていて玄関を開けて外の様子を見ているみたい。マンションの外にも冷静な警報が響いているのが聞こえてくる。そのうちに、冷静な女性の声で「ただいまの警報は間違いでした」というのが聞こえてきた。その間、私は全く動けず。それでも一度起きてしもうて、寝なおすのはしんどいなあと思いつつ睡眠状態に移行しようとした。そしたら、また「火災が発生しました」! ええかげんにせいよ。朦朧とした意識の中でその警報を聞く。しばらくしたらどこかからまた「火災が発生しました」という響きが。もう眠りが深くなりつつあったんで起きねばという気にもならずそのまま眠りの世界に埋没する。
 変な夢を見た。名探偵みたいな人が出てきて、「実は警報は鳴らなかったのです」と真相を説明し始めた。「熟睡している人の耳もとで警報と同じ声の入った録音を流し、起きて確認に出たところを部屋に侵入するのです」。おおそうかあ、なるほどなるほど。夢の中では無邪気に納得している。
 起きて、妻が寝ているのを見て、あの警報は現実やったんか夢やったんか、どっちやったんやろうと首をひねる。もっとも、名探偵の推理には重大な穴があり、寝ている耳もとに録音を聞かせた時点で犯人は侵入してるわけやから、そんな手間をかける必要がないやんか。どうもあの探偵の間抜けな推理からすると、警報も夢やったに違いないとひとり勝手に納得していた。ただ、いつもよりも起き抜けの調子が悪いから、やっぱり夜中に一度は目が覚めたんかなあと思う。
 妻が起きてきてから「昨日の晩の警報は……」と言い出したんで、あれが夢やなかったことが判明した。ううむ、こんな調子やったら夜に火災が起きても私は目を覚まされず煙に巻かれて一巻の終りになってしまうぞ。よう考えたらむちゃくちゃ危険やないか。ああいう時は無理にでも起きる癖をつけとかなあかんなあ。

12月6日(月)

 昨日、原稿はなんとか入稿できた。よかったよかった。ただ、いつも感じるんやけれど、自分なりに書いている時は最高の原稿をと思うているし、推敲のために読み直しもして「これでよし」と思うているんやけれど、送稿したとたんに「あんなんでよかったんやろうか」となにかしら悔やんでしまうのはなんでやろうね。雑誌に掲載した原稿は、なるべく早くこのサイトにアップするようにしている。あんまり長く備蓄しておくと、読み返すのも恥ずかしくなってしまうから。書評家デビュー当時の原稿を、雑誌掲載されたものを見ながら再録していた時期もあったけれど、ほんまは全部やっておきたいんやけれど、現在はそれは中断している。なんでかというと、私自身読んでいて「かーっ! この若僧が、24歳のくせになにをクソ生意気な事を、なにがいいたいのかようわからん文章で書くんやないわい」と思い、ついつい全部書き直したくなってしまうからなんですわ。ああ辛い。1年以内に書いた文章やったら、まだそこまでにはならん。だいたい書き写さんでも、保管してある文書をコピーペーストしたらええだけでもあるしねえ。
 さて、今回の原稿は雑誌が発売された時にちゃんと正視できるかな。できるものを書いたはずなんやけど、なるべくたくさんの人に読んでいただきたいと思うんやけれど、でもなんか正でけんかったりする。
 いま、私がちゃんと読み返せるのは『おどりじいさん』だけかもしれん。これだけは自分が書いたとは信じられんくらい出来がよろしい。これを超えるものを書こうとするから、うまくいかんのだろうなあ。

12月9日(木)

 さすがに2日続けての忘年会はきつかったか。もちろん楽しくはあったけどね。そやけど、平日やからつぶれるほど飲むというわけにもいかんし。やはり忘年会は週末か休みの前ですね。

 それにしても2日続けて飲んで騒いでしていたら、横田めぐみさんの”遺骨”が別人のものやったり、イエローキャブの社長がクビになったり、日記のネタになるようなことが起きたりしてますねえ。ただ、じっくり新聞読んでる間もなかったし、2日もずれると鮮度がなくなったりするし、実はもうどうでもよくなってしもうてるからやっぱり書きにくい。
 とにもかくにも2連続忘年会のあと、仕事は仕事でしんどかったから、今日の日記はここまで。かんにんね、

12月10日(金)

月と金星
 6時ごろ起床。夜はまだあけてへん。ラジオを聞いていたら、気象予報士の方が「今ちょうど東の空で天体ショーが見られます。細い月と、火星と、金星が並んで見えるんです」と言うたはる。おおお、私は流星群やなんかを見るためにわざわざ早起きをしたりするという事は、たとえ興味があっても面倒臭いんでやらんのですが、うまいこと起きている今この時間にそれが見られるというんなら話は別だ。
 ひんやりとした空気が流れるベランダに出る。うむうむ。確かに細い月が出てる。その隣に明けの明星というんですか、金星が見えとる。ううううむ。火星はどこよ。赤い星はどこにあるんよ。私は目が悪く、眼鏡はかけてるとはいいながらも裸眼で目のよい人のように見えるわけやない。一応デジカメを持ち出して撮影はしてみましたけどね。こういう場合は一眼レフ望遠レンズやないとあかんなあ、やっぱり。この写真を見たら、右側に光ってるのが月やねんけど、まん丸に見えるぞ。肉眼では細く見えたんですけどねえ。限界あるなあ。左の金星はわりと見たまま撮れてるな。
 寒くなってきたんで部屋に戻って朝食をとる。食べ終ったら東の空はすっかり明るくなっていて天体ショーどころやない。星も月も見えません。ま、火星は見つからなんだけど、月も金星もきれいやったしそれでええか。気持ちいい朝やったなあと思うたら、昼にもちょっと嬉しい事があったりしたんで、早起きのご利益があったかしらん。ふふんふんふんと鼻唄の一つも歌いたくなる金曜日でありました。


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