愛すれどTigers


98年度を振り返って

 昨年は5位ながら、6月いっぱいまでは首位争いに顔を出していた。グリーンウェルが途中で帰っても、なんとか踏ん張っていた。息切れしての5位という感じだった。
 今年は違うぞ。開幕からベイスターズ3連戦3連敗。昨年までのお客さんにすっかりカモられてしまった。あともしばらくは1勝2敗ペース。平塚の4番定着と八木の神憑かりの代打的中などもあって一時は盛り返したかなと思ったけど、平塚が怪我でリタイアし、やむなくスタメンで使った八木がくたびれたら、もうあかん。
 そらね、久慈や関川まで出してとった大豊が打たへんかったとか、パウエルが守備もバッティングも期待外れやったとかいうのはあるよ。でも、彼らの昨年の成績から考えたら過大な期待をかけた方が悪いよ。
 平塚の怪我がなかったら、もう少しもったかもしれない。投手陣はそんなにひどかったわけではないしね。もっと早くから坪井を定着させてたらという声もあるけど、私はそうは思わない。坪井はベテランと競うことでスタメンをもぎ取ったのだ。だから値打ちがあるのだ。どこやらのタカハシヨシノブとかいうぼんぼんみたいに最初から特別待遇をしてたら、他の若手のやる気がなくなるでしょ。だから、坪井にしても今岡にしてもチャンスがまわってきた時に力を発揮したから成長できたと考えるべきだ。
 与えられたチャンスを生かすことのできなかった桧山や新庄に問題があるんだ。
 では、吉田監督はすばらしい采配を見せたかというと、そうとも言い切れない。
 特に先発投手が打たれたら3回くらいで引っ込めてなんでもかんでも伊藤、弓長、葛西、吉田豊彦の4人をつぎこんだというところがよくない。4人ともへとへとになり肝心の所でいいピッチングができなかったと思う。田村のリタイアだって昨年使い過ぎたということだと思う。
 しかし、怪我人が多いチームは弱いというが、田村、平塚、湯舟、星野とほんまに怪我人は多かったね。波に乗ろうとしても、これでは乗れない。
 幸い、二軍の優勝ということもあって、井上、山村、山岡、濱中、北川、吉田浩といった若手の起用が多くなったので、来季はこれらの選手に期待できるという夢を持てる。
 要は勝つことの楽しさを知った選手を多く起用することだ。ベイスターズの優勝も、昨年終盤まで優勝争いをした経験があったからこそだ。だから、試合前から「今日もあかんのと違うか」というような気持ちを持たさないようにさせるのが来季の監督の役割だろう。「俺たちは強いんじゃないか」と勘違いでもなんでもいいから思って、自信をもったプレーをしてもらいたい。
 さて、今年の「愛すれどTigers」年間MVPを決めておきたいと思う。最下位にMVPもないものだが。
 投手は、弓長起浩。ここ数年でも最も安定したピッチングだったのではないか。先発がだらしなくても弓長はちゃんとつなぎの役を果たした。よほど安心してみていられたぞ。
 打者は、坪井智哉。理由は書くまでもないだろう。新人王をとってもおかしくない。久慈や藪が新人王をとったが、今年の坪井の方がよほど値打ちがある。
 まあ、そういうことで、来季はどうなるんだか。
 野村克也は監督要請を受けるだろうから、選手の意識改革をぜひ行ってほしい。スワローズの選手が自信をつけていったように。
 しかし、92年に優勝を横取りした監督がうちに来るかもしれんというのは、なんとも複雑な気持ちではある。ブレイザーの時みたいに使い捨てにしたらあきまへんで、といっておこう。

 1998年。阪神タイガースは52勝83敗、勝率.385。セントラルリーグ最下位。

(1998年10月19日記)


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