東京ドームでのジャイアンツ2連戦に2連敗したときは、これでシーズンは終わりだと思った。せっかく打線がつながったものを投手がぶちこわしにするというこれまでにないパターンで敗れた上に、正捕手の矢野が故障で戦列離脱。打線強化のためにファイターズからマイカ・フランクリン選手を獲得したが、もう手遅れだ。ところが、甲子園でのベイスターズ戦、フランクリンの入団に刺激されたか、それまで不振だったタラスコが突如快打を連発し、みごとに3連勝。それも全て先取点を与えながらも打線がひっくり返すパターン。今節はトータルで3勝2敗と勝ち越した。さあ、勝負はこれからだ。
◎ジャイアンツ15回戦……0−6
藪よ、なにも初回から3イニング連続でホームランを打たれることはないではないか。清水、高橋、江藤と狙いすましたようにスタンドに放り込む。なんでジャイアンツの選手はああも軽々とホームランを打てるのだ。対するにタイガース打線は和田を一番に八木を三番に入れるベテラン重視のオーダーを組んだにもかかわらず、メイの速球に手も足も出ず3安打12三振の完封負け。メイを意識しすぎて力みかえっている。なんと悔しい負けだろう。
◎ジャイアンツ16回戦……5−6
私はいまだにこの試合に負けたことが信じられない。私の頭の中では5−3の楽勝としてインプットされているのだ。2回に前回完封を食らった河原から大豊が久々の特大2ランを放てば、坪井も弾丸ライナーの2ランで一気に4点。川尻は立ち上がり好調でうたれそうな気がしない。ところが、3回、2つの四球をまじえて仁志と江藤にそれぞれタイムリー二塁打を打たれ、1点差に詰め寄られる。それでもタイガース打線は意地を見せた。5回、ランナーが一塁にいるのに大豊を敬遠するという完全に山田をなめたジャイアンツ。矢野が故障しても俺がいるといわんばかりにセンターに弾き返した山田。この1点は大きかった。川尻も4回以降は安定した投球を見せていた。7回を抑えたところで得意の継投策という段取りで勝っていたはずである。まさかその7回に仁志に同点2ランを打たれるとは……。必勝を期して投入した福原は8回、2三振を奪う快投。さあ、延長になればジャイアンツにはろくな抑えがいない。勝てる勝てる。9回だ。軽く三者凡退だ。あら、高橋由の打球は一気にスタンドに。なに? サヨナラ負け? 嘘やて。そんなあほな。ああ、これで今シーズンは終了か。そう覚悟せざるを得ない敗戦。しかし、よく考えてみたら、この試合でホームランを打った大豊をはじめとして、打線爆発の予兆は既にあったのだった。
◎ベイスターズ13回戦……7−4
湯舟は初回から球に切れがなかった。いきなりローズに3ランを打たれた。相手の先発は苦手の小宮山。なんや、初回で決まったな。と、思ったところが、いやいやびっくり、その裏、先頭の坪井がレフト前にヒットを放てば、新庄のセンター前ヒットでまず1点を返す。続く大豊が2試合連続の同点2ラン! 野村監督は2回の途中で湯舟を降ろし、中込につなぐ。中込が力投。ローズのホームランで1点リードされたものの、6回にタラスコが約2ヶ月ぶりとなる逆転3ラン! この日、一軍に合流したフランクリンに見せつけるような1発だ。8回にはハートキーもだめ押しのタイムリー。フランクリンの加入で両外国人が奮起した。最後は葛西がしめて連敗を5で止めた。
◎ベイスターズ14回戦……6−3
星野伸が初回にいきなり鈴木尚に2ランを浴びた。今日はあかんかな、と一瞬くらい影がよぎった。2回、球道定まらぬベタンコートから四球ばかりで無死満塁。ところが吉田剛はボール球に手を出して併殺。その間に三塁走者は帰ったものの、こういう展開だとたいていは相手投手を立ち直らせてしまう。ところが、やってくれましたタラスコが。4回、2試合連続の2ランホームランで逆転だ。星野が逃げ切ってくれるかと期待したが、谷繁のタイムリーでまた同点。交代した福原が好投して相手の流れを断ち切れば、7回には二塁打の田中、四球のハートキーを塁に置いて、大豊がライト前に運ぶ。これを若い多村が後逸。一気に2点を奪う。タラスコも負けてない。大きな犠牲フライでだめ押し。またまた葛西がぴしゃりと抑えて気持ちのいい連勝だ。
◎ベイスターズ15回戦……7−1
初回、ハンセルは堅さがとれず、ローズのタイムリーで1点を失った。しかし、この日のハンセルはファイトあふれる投球でベイスターズ打線を圧倒。2回には、石井のヒットで本塁に帰ろうとする二塁走者谷繁を新庄がストライク返球でアウトに。いつ見てもほれぼれする肩ですなあ。もう1点先行されたくらい、なんともないです。おどおどしている川村から、3回にハートキーが左中間を破る二塁打を打ち、まず同点。新庄は三塁線を破ってこれも二塁打で勝ち越し。タラスコもライト前に落として3点目。4回にはハートキーの二塁打と大豊の2ランで4点追加。ハンセルは4回、打者走者の多村と交錯して指を痛め、5回を投げきって降板した。しかし、やる気のないベイスターズは伊藤と遠山の前に得点できず、気持ちよく3連勝。これで横浜との対戦成績は5割まであと1勝となった。もう苦手意識は払拭されたと見ていいだろう。
◎愛すれどTigers週間MVP
投手……葛西稔 2試合連続のセーブは、躍動感あふれるピッチングフォームとあいまって、全盛時に戻ってきた。もう遠山とのジグザグ継投はいらない。少し遅かったけれど、これで抑えのエースは確定したね。
野手……大豊泰昭 ヒーローインタビューで「じめじめして暑苦しいですが、これからはビールの季節。みなさんおおいに飲んで下さい」。熱くなったら大豊の季節だ。昨シーズン終盤の絶好調時の大豊に戻りましたぞ。
フランクリンの加入がタイガース打線に火をつけたとはちょっとおかしいな。まだ1回も試合に出ていないのだ。しかし、いい意味での競争心が芽生えたのは事実。次節からはハートキーと入れ替えで一軍登録されることになりそう。ここでフランクリンがだめでも、ハートキーはある程度打てるから、また入れ替えをしていい。そうやって切磋琢磨していく環境が、好結果を生むのだ。さあ、タイガースの反撃はこれから始まるのですよ。
(2000年7月3日記)