愛すれどTigers


2000年度を振り返って

 昨年、希望の光が見えた。しかし、今年はその光はかき消えたように見える。なぜか。
 4月に一度は首位に立ち、今年のスタートダッシュはなったと思われた。ここで野村監督もその気になってしまったのではないか。ところが、いかんせん勝ち続けるためには選手の経験が浅すぎる。先発投手陣が奮起した前半戦は、貧打に泣き、打線が調子に乗りかけた後半戦は、先発投手陣が崩れた。前半、好投しても勝ち星に結びつかなかった先発投手陣に精神的疲労はなかったか。それが後半戦に一気に出てきたとはいえまいか。勝ち星を意識しすぎた野村監督の若手起用のサイクルが、後半戦は特に早かった。結果が出なければ次から次へと交代させる。長期的展望が欠けていたように感じた。
 チャンスをつかんだと思われる若手が故障でリタイアしたのも痛い。特に平尾はセカンドの定位置をほぼつかんだはずだったが、故障で後半戦はダウン。ドラフト1位で期待された的場も故障で二軍落ち。今岡は結果を意識しすぎてか本来の伸びやかなプレーができず、ほとんど二軍。田中はプレーが雑になり、塩谷はポジションのたらい回し。終盤上坂がいいところを見せたが、時すでに遅し。吉野は早く先発で使ってもよかったと思う。特に後半戦、星野伸が打ち込まれてローテーションから外れた頃は、中継ぎでも結果が出ていたのだから一度先発させてもよかったと思う。井川も順位が低迷してからの起用だった。
 緊急トレードで獲得した吉田剛、西川、根本、ハートキーに頼らなければならないとなると、キャンプで選手に叩き込んできた「T・O・P野球」はなんだったのだと思う。
 強いチームは先発オーダーが固定されている。ところが、タイガースは4番打者のところに偵察メンバーを入れるという情けない状態だ。相手投手との相性で選手起用を考えていたのだろうが、さぞかし選手にとっては落ち着かない起用法であっただろう。
 FA移籍の星野伸や広澤、タラスコといったキャリアのある新加入選手に期待していたほどの結果が出なかったのも痛い。実力が衰えているのかチームになれれば実力が発揮できるのか、彼らにはあと1年しかチャンスはないだろう。タラスコにチャンスが与えられるかどうかはわからないが。どうせなら、タラスコとハートキーはどちらか1人ではなく2人とも残留させるべきではないか。大活躍は期待できなくともそれなりの働きはすることがわかっているのだから、新外国人選手がディアーやグリーンウェルやハイアットやシークリストやハンセンやパウエルやバトルみたいに全くの期待はずれになっても、彼らが2人とも残っていれば安心である。バースやオマリーみたいな選手はなかなかそう簡単には出てこないのだ。今年、ジョンソンが残っていれば……と思わされた、そんな気持ちにならないですむ。
 新庄の成長が数少ない光明。とはいえ、4番打者として残した数字は、他球団の4番と比べると寂しいものがある。それでもなんとか意識改革には成功したようなので、FA移籍などせずに残ってほしい。でないと、今年の収穫はほとんどなしになってしまうではないか。
 勝つのか、若手を育てるのか、ピントがぼけたまま閉幕してしまったシーズンであった。来年は野村監督の契約最終年。おそらく勝ちにいくだろう。そこを我慢して若手中心のチームを作れるかどうか。せっかく出て来はじめた芽を摘むことだけはやめてほしい。

2000年度のタイガースの戦績。57勝78敗1引分。勝率.422。セントラル・リーグ、最下位。

◎愛すれどTigers年間MVP
投手……伊藤敦規 リリーフポイントのタイトルこそ最後の最後でドラゴンズの岩瀬にもっていかれてしまったが、両リーグの最多登板を記録したそのピッチング内容は特筆に値する。勝ちゲームの中継ぎである岩瀬と違い、伊藤は勝っていても負けていてもとにかくいつでも投入されていたのだ。ランナーを背にして内野ゴロを打たせる絶妙のコントロールに何度しびれたことだろう。今年もタイガースの投手陣はリリーフに支えられていたのである。
野手……新庄剛志 今や堂々の4番で、FA宣言をして大リーグに挑戦したいと豪語するまでになった。それはともかく、今年も外野守備は絶品。そして、次につなぐバッティングを心がけるようになった。これほど急激に変化するとは誰が予想したであろう。もともと華のある選手だったが、意識改革により、やっと開花し始めたといえるだろう。来シーズンは完全に開花しきってほしい。

 野村克也監督の留任が決まり、今後は戦力補強が中心となる。藤田太陽投手の逆指名は決まった。一部週刊誌が噂するように、清原獲得に動くのか。広澤残留、和田コーチ兼任はどのような結果をもたらすのか。来季に向かって、しっかりした方針でチーム編成をしていってほしいものである。

(2000年10月14日記)


目次に戻る

ホームページに戻る