いやはや驚いた。湯舟敏郎投手、山崎一玄投手、そして北川博敏捕手が、大坂近鉄バファローズの平下晃司外野手、酒井弘樹投手、そして面出哲志投手と交換トレードとは。また思い切ったことをしたものだ。シーズン終了時に戦力外通告を受けた田村勤投手は、オリックスブルーウェーブへの入団が決定している。奇しくも湯舟、山崎、田村とも1990年のドラフト会議で指名された同期生。10年選手が新天地で巻直しをはかることになったわけだ。
湯舟投手といえば、1992年に達成したノーヒットノーランを思い出す。甲子園のカープ戦だった。それまで伸び悩んでいた湯舟は、あの試合、木戸捕手とバッテリーを組んで大記録を達成し、以後、木戸とはコンビを組む間柄となった。木戸が引退してからは彼の持ち味であるカーブのコンビネーションを山田捕手がうまく引きだせず、一昨年の足の故障の後遺症もあり、往年の安定した投球が見られなくなっていた。今季は序盤よかったけれど、結局4勝止まり。しかし、常に薄笑いを浮かべながら(地顔ですけど)相手打者を手玉にとる度胸のある頭脳的ピッチングが売り物だった。打線の援護さえあればもっと通算勝ち星がのびていたはず。そういう意味では、バファローズの「いてまえ打線」をバックに投げれば、再び2ケタ勝利も狙えるかもしれない。
田村投手は、サイドハンドで投げるクロスオーバー気味の大きなカーブと相手の胸元にズバリと投げ込む速球を武器に、1992年にはリリーフエースとして活躍した。しかし、ガラスの肩というのだろか、登板が多い年の翌年は必ずといっていいほど肩を故障し、ついには往年の速球の切れも失ってしまった。それでも昨年は中継ぎ投手陣の一角を担い、伊藤、遠山とともに信頼できるリリーフ投手として蘇った。ところが、今季はまたキャンプから肩を傷め、結局一軍での活躍はなく、戦力外通告を受けてしまう。それでもブルーウェーブはまだまだ田村の力は衰えていないと判断、すぐさま来期の契約を結んだ。
山崎で思い出すのは東京ドームでの巨人戦。低めをていねいにつくピッチングでジャイアンツ打線を手玉にとり、完投勝利をおさめたことがある。この時のテレビ解説は江川。「こんな投手に完投勝ちされたら恥ずかしい」とボロカスに言う。相手の裏をかく頭脳的ピッチングをまともに評価できず、ジャイアンツ打線以上に大恥をかいてしまった。あの時は、今後はタイガースのローテーション投手として将来を期待したのだが、こちらも故障が重なり伸び悩んだ。昨年は中継ぎ、そして先発とよく起用されたけれど、今年は敗戦処理が中心でいいところなく終わってしまった。
プロ野球にトレードはつきもの。まして今季結果を出せなかっただけに、このトレードは仕方ないのかもしれない。しかし、いずれも10年間タイガースのユニフォームを着て我々の心を弾ませてくれた選手たちだけに、やっぱり寂しい。パ・リーグの打者はおおむね技巧派の投手に弱い。投球テクニックではまだまだ衰えていないだけに、新天地での活躍を期待したい。
さようなら、湯舟投手、田村投手、山崎投手、そして北川捕手。バファローズ、ブルーウェーブでそれぞれがんばってや。
(2000年10月30日記)