大豊泰昭選手に対し、タイガースは30%の減俸を提示。これは統一契約書の年俸最大引き下げ枠の25%を上回る。これを不服とした大豊選手は、最悪でも年俸据え置きを要求。もし提示額が変わらなければ自由契約にしてほしいと突っぱねた。これを受けた球団は、提示額を変更することなく、大豊選手を自由契約とした。
何を考えてこういうことができるのだろう。
3年前、久慈を放出してまでして獲得した選手ではないか。以来、タイガースのショートは今岡、田中、吉田剛と一定せず、ドラフト1位で入団した的場もぱっとしない。久慈をドラゴンズにトレードした時のファンの衝撃を球団は理解していたのだろうか。それならば大豊を応援しようとふんぎりをつけたし、大豊はファンの期待に十分に応えたと思っている。ホームランの魅力を、しかも広い甲子園で見せつけてくれたパワー。ヒーローインタビューでの生真面目ながらユーモラスな受け答え。大豊はタイガースにとってなくてはならない役者の一人になった。
しかし、野村監督にとって大豊はなくてはならない選手ではなかったようだ。昨年は同じ左打ちだったジョンソンと競争させた。今年は必ずしもファンの期待に応えたとはいいにくい広澤を起用し続けた。しかし、結局は大豊を使わざるを得なくなる。
そんなに簡単に首を切るのならば、どうして後継者が育っていないショートの名手を出してまでして大豊を獲得したのか。
報道によるとはっきりとものを言う大豊選手は野村監督にしても球団にしても扱いにくい選手だったという。だからといって退団に追い込むような真似をすることはなかろう。いくらクルーズ選手の獲得が決まったからといって、そのクルーズが大豊以上の活躍をするかどうかは未知数である。ホークスの吉永選手の獲得を前提に自由契約にしたという報道もあった。ところが、吉永獲得には失敗した。大豊を失って、初めてその存在の大切さに気がつきもするだろうが……。
大豊の新たな所属チームはまだ決まっていない。古巣のドラゴンズが獲得の意志を表明しているが、決定ではない。早く行き先が決まれば、と願わずにはいられない。しかし、久慈と関川を出してまでしてそのどでかいホームランを期待したというのに。
長期的なビジョンがあるとは思えない。
大豊さん。新しいチームでも活躍してくれ。
(2OO0年11月13日記)