開幕はジャイアンツと東京ドームで3連戦。1勝2敗と負け越したものの、開幕前には打線の弱さが心配されていたというのに、今岡を中心にジャイアンツのミレニアム打線に負けない打ち合いを演じてみせた。特にペレスの気迫あふれるプレーや今岡の爆発的な活躍など、今季はひと味違うぞと思わせる3試合。ビジター用の新しいユニホームもなかなかスマート。新生タイガースを予感させる開幕である。
◎ジャイアンツ1回戦……3−17
先発は星野伸。予想では福原、井川とされていたが、経験と実績を買ったのだろう。しかしそれが裏目に出る。2回、江藤、阿部、二岡らに真ん中に入る変化球を狙い打たれて4失点でKOされてしまった。二番手にはルーキーの藤田。こちらは制球がままならず、3回には江藤、阿部にタイムリーを打たれ、4回には四球でためたランナーを清原、江藤の犠牲フライで5失点とこれまたKO。続く西川は高橋由に3ランを打たれ、5番手の川尻は清水に満塁ホームランを打たれ……。プロ野球タイ記録の開幕試合17失点という屈辱……。打線は前半は上原から矢野のホームランなどで3点を奪い、崩すきっかけはつかんだが、なにしろ大差をつけられていたからどうしようもない。リリーフで登板した井川の好投が光った。ただ、伊藤を無駄に使ったのはいただけない。これが第3戦に影響を与えることになる。
しかし、長嶋監督というのは非常識な男で、17点とった後もなお送りバントでランナーをすすめるという作戦を出す。タイガース打線がこのあと1イニングで15点取るとでも思ったのだろうか。それほど自分のチームのリリーフ投手を信頼していないのか。
こんな監督の率いるチームに3連敗だけはしてくれるなと心から願った。
◎ジャイアンツ2回戦……9−7
タイガースの先発はハンセル。内閣を大胆に攻める投球はよかったが、コントロールは定まらず、上坂のセンター守備のまずさもあり、初回に1点を取られた。しかし、この日のタイガースは負けてない。3回、ジャイアンツ先発のメイから新人の沖原が二塁打、四球の上坂と2人を塁に置く。ランナーが気になるメイの甘い球を今岡がレフトスタンドに運んで逆転! 清原の3ランですぐにひっくり返されたものの、4回には二塁打のぺレスがすかさず盗塁、山田のタイムリーで同点に。二岡にホームランを打たれたハンセルは4回で降板。点を取っても取っても守り切れずここらあたりは悔しい展開。
しかし、5回、ヒットで出た上坂の足を気にしたメイはボークとなる牽制球を投げてしまう。今岡もヒットで続き、打者は坪井。内野ゴロはダブルプレイかと思わせたが、坪井の必死の走塁でバッターランナーはセーフ、上坂が同点のホームを踏んだ。そして、ここまでノーヒットのクルーズが打った瞬間にわかるバックスクリーンへの特大2ランホームラン! メイをKOした。6回には二番手木村を攻め、広澤、山田の連打と沖原の四球で満塁、今岡がだめ押しの2点タイムリーを放つ。今岡は4安打。ジャイアンツの打線は確かに好調。6回には伊藤から高橋由のタイムリーで、9回には成本から江藤がホームランと2点差まで詰め寄られたが、成本がなんとか最後まで抑えて逃げ切った。
とにかく今岡の活躍に尽きる。野村監督に酷評されながらも這い上がってきた闘志が嬉しい。
◎ジャイアンツ3回戦……5−6
惜しいなあ。勝ったと思ったのだが……。
先発の福原をリードする山田が外角に逃げる球を要求する。中途半端にストライクゾーンに入ってきた球を清原にうまく打たれて初回に1点を失う。しかし、福原の速球とチェンジアップ気味のカーブは冴え渡り、7回途中までその1点に抑えていたのだから立派。そして2回、沖原が斎藤雅からプロ入り初ホーマーを放って同点、続く福原もレフトスタンドのフェンスをギリギリに越えるプロ入り初ホーマーで逆転! ところが、長嶋監督はよほど自チームの打線が信用できないのかこのホームランに対し執拗にクレームをつける。みっともない男である。このような人物を「ミスタープロ野球」などと呼ぶのはいかがなものか。
このまま福原を完投させていたらよかったのに、ジャイアンツ打線の幻影に目がくらんだか、野村監督は7回、今岡のエラーで元木が出塁し、高橋由を歩かせたところでなんと遠山にスイッチ。確かに遠山は松井キラーだ。しかし、ここは福原を信じてやってほしかった。遠山は内角攻めを続け投球が単調になったところを狙い打ちされ逆転の3ランを食らってしまった。万事休すかと思われたが、リリーフの柏田から代打の和田が四球を選ぶ。続く代打八木のサードゴロは江藤の悪送球でオールセーフ。今岡が打席に入るとピッチャーは南。その初球、狙いすましたように再逆転の3ランホームランがレフトスタンドに吸い込まれていった。
ここでタイガースのリリーフは伊藤。しかし、3連投の上、前日に2イニングを投げていて疲労があったのか、球の切れが悪く阿部、二岡にタイムリーを打たれて再びひっくり返されてまった。いくらリリーフがよいといっても、毎日つぎ込んでいたら打たれることもある。
ジャイアンツは抑えの切り札岡島を投入。しかし、岡島はコントロールが乱れ、沖原のヒット、矢野、上坂の四球で無死満塁。坪井にもボールが続いたところで長嶋監督がマウンドに駆けつけて岡島にハッパをかけた。長嶋というのは不思議な人だ。岡島はよくなかったのに、ツキがここでジャイアンツに傾く。坪井のヒット性のあたりは二岡のファインプレイにはばまれ、今岡の鋭い打球も岡島のグラブにすっぽり。ボールは三塁に送られてダブルプレイ!連勝はならず。
しかし、負けはしたが、決してジャイアンツは恐い相手ではないと自信を持てるような試合展開であった。
◎愛すれどTigers週間MVP
投手……福原忍 完投してたら、きっと勝ってた。ジャイアンツの打線は誰一人として福原の球を芯に当てることができていなかった。次回の登板に完投勝ちの期待がかかる。
野手……今岡誠 どうだ見たか、という意地の活躍。守備に不安はあるが、これだけ打てば文句なし。とにかく今岡のための開幕3連戦だった。この調子で次節もいってほしい。
3連敗の心配もあった開幕シリーズだった。特に初戦の大敗は無惨で、これが力の差かとがっくりきた。しかし、実は力の差はほとんどないのだ。ジャイアンツの選手は自己暗示で自分たちが強いと錯覚し、タイガースの選手は逆に自信がないだけなのだ。だから、自信を持ってやれば今シーズンこそいいところまでいけるという感触を得た。特に沖原の活躍は特筆もの。他の選手もその姿勢を真似てほしい。
今年のタイガースは、やりますよ、きっと。
(2001年4月2日記)