愛すれどTigers


2001年度を振り返って

 開幕からの誤算はベテラン投手陣だった。開幕投手の星野伸、肩の故障などでほとんど2軍暮しの藪、隔年投手の汚名を返上できなかった川尻ら先発投手に加え、ここ数年酷使といっていいほど登板過多であった遠山、葛西、伊藤の中継ぎ陣、それぞれに肝心なところで打ち込まれることが多かった。
 ここで期待の若手として1年間働いたのが井川とカーライルだ。ともに20代前半の若さで時には経験不足から打たれることもあったけれど、ローテーションを守り抜いた意味は大きい。しかし、彼ら二人に続く若手が出てこなかったのも事実だ。藤川、岡本ら昨年起用された若手は今年は一軍に上がることなく終わったし、吉野、金澤、藤田も期待外れに終わった。わずかに新人の伊達がローテーションの谷間を埋め、途中移籍の谷中が2つの完封勝利をおさめるなど、来季の先発投手のめどがたった。問題は福原だ。エースとなるべき男が先発、中継ぎでともに安定した力を出し切れず、このままでは未完の大器というだけで終わってしまう。下半身をいじめぬいて体の開かない投球フォームを身につけてほしい。ハンセルも打線が打てない時にもう少していねいな投球をすれば勝ち星は倍増するはず。
 一方、野手では中盤から一番上坂、二番赤星、三番濱中というオーダーが固定され、特に赤星は新人で39盗塁を記録しタイガースでは吉田義男さん以来という盗塁王のタイトルを手中にした。赤星の場合、前半では守備にも不安があり打撃も非力さが目立ったが、中盤以降は安定した力を発揮した。特に守備範囲の広さはメッツに移籍した新庄をしのぐものがある。他にも藤本、沖原の新人遊撃手コンビが守備力のよさと闘志あふれる打撃で一軍に定着した。これに刺激された田中や塩谷、吉田浩、松田、高波、曽我部らにもチャンスを与えてほしかった。
 若手の台頭に押されて変身したのが桧山だ。ボールを前でさばく技術を身につけ、28試合連続安打の球団記録を作り、四番に定着、プロ入り初の3割打者となった。ベテラン広澤も往年の好打と長打力が蘇った。昨年はあまり起用されなかった今岡もシーズンを通して先発出場し、特に開幕のジャイアンツ3連戦で意地を見せた。
 故障で力を出し切れなかった坪井だが、いろいろとわだかまりもあるだろうけれどこのままで終わらせるにはもったいない選手だ。外野は競争が激しいが、今季の屈辱を忘れずに来季は故障を完全に直して定位置奪回をめざしてほしい。
 野村采配は投手起用に疑問を感じさせるところはあったものの、今年は若手を我慢して起用し、来季への展望の見える形でシーズンを終えることができた。いまだに解任の噂がつきまとうが、来季こそ野村TOP野球の集大成を見せていい形で岡田二軍監督へのスムーズなバトンタッチをしてほしい。コーチ陣も木戸ヘッドコーチを中心に吉竹、平田、和田、平塚、佐藤とすっかり若返った。これも岡田監督へのバトンタッチをにらんだコーチの配置だろう。つまり、なんだかんだいいながらタイガースは将来に向けて着々と布石を打っているのだ。
 あとは外国人打者を含む補強の問題だが、FAに頼りすぎてもよくないと思う。ただ、清原クラスの選手が入団した場合、その選手を核にして若手を辛抱強く使い経験をつませることは可能だ。そういう意味では昨年よりも期待のもてる形を作ることのできたシーズンだったのではないだろうか。あとはフロントが例えば川尻のアメリカメジャーリーグ移籍などで見苦しいまねをせずすきっとした解決をしてFA選手を迎えいれればいうことなしだ。どうせなら川尻と外国人野手の交換トレードなんてのはどうだろうか。

2001年度のタイガースの戦績。57勝80敗3分。勝率.416。セントラルリーグ4年連続最下位。

◎愛すれどTigers年間MVP
投手……井川慶 あと一歩で10勝と防御率一位は逃したが、初めてローテーション入りをしたシーズンとしては素晴らしい結果だったと思う。今季の経験を生かして来季にはローテーションの軸となってほしいものだ。
野手……桧山進次郎 盗塁王の赤星はどうしたといわれそうだが、打撃開眼しここというところで確実に期待に応えられる選手に変身した桧山は、チームの精神的支柱として目標を失ったチームを引っ張っていった。その功績は大きい。

 Aクラスも期待できたオールスター直前の7連勝、スワローズの胴上げを阻止した終盤の3連戦など、目標さえあればタイガースは決して弱いチームでないということを見せてくれた。開幕から好位置をキープできれば、目標もできる。そうなった時のタイガースが楽しみである。

(2001年10月15日記)


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