ジャイアンツの監督に原辰徳ヘッドコーチが就任した。御苦労さんなことである。前任者が前任者だけになにかと比較されることだろう。しかし、原ヘッドコーチの業績程度で監督を任されるのであらば、我がタイガースの岡田彰布二軍監督が一軍を任されないのはおかしいというべきだろう。98年には二軍の打撃コーチとしてタイガースに復帰、そして翌99年からは二軍監督に就任した。この間、コーチで1度、監督で2度の優勝を果たしている。一軍からの再調整組が中心というのを割り引いても、選手たちに「勝つ喜び」を与えているということは大きく評価できる。岡田二軍監督は選手を辛抱強く使い、思い切ったプレーをするように指導しているという。一軍である程度結果を出しながらすぐに二軍に落とされた中堅選手が腐らずに再度一軍で活躍することができるのも、岡田二軍監督が選手に対して的確に声をかけているからだという。
私は野村監督の采配を評価しないわけではない。選手をくさしながら奮起を待つというスタイルもそれはそれで一本筋が通っていると思っている。ただ、選手を好き嫌いで起用する傾向にあるのだけは納得がいかない。江夏豊さんが野村監督の就任時にインタビューした時、「あいつとあいつは色がついているからな」と主力選手のことを評したという。嫌われていると思った瞬間、相手は逆に自分を嫌う。それが上司であればやる気を失う。
野村監督が主力選手を二軍に落としたりしてくれたおかげで、岡田二軍監督はチーム全体の戦力を野村監督以上に把握できるようになった。彼が育てた若手が一軍に定着し始めた。機は熟しつつある。そろそろ二軍で発揮した人心掌握術を一軍で披露してもらいたいものだ。球団も布石を打っているようだ。野村人脈とは明らかに違う40代のコーチ陣を次々と一軍に揃えている。後は岡田本人が一軍のダグアウトに現れるだけでいいのである。
附記:「週刊DIAS」2001年11月19日号の特集「タイガースの監督はやっぱり岡田や」にコメントを依頼されて書いたものの全文。ただし、特集記事には以下のようにダイジェストされた。
「野村監督が嫌いな選手をどんどん2軍に落とし、岡田監督が育てた選手が1軍に定着していることで、いまや野村監督以上に阪神の選手を掌握している。あとは岡田監督が1軍のダッグアウトにあらわれるだけ」。
(2001年11月13日記)