愛すれどTigers


星野仙一新監督就任要請について

 12月12日にタイガース久万オーナーは星野仙一前ドラゴンズ監督に阪神タイガース監督就任を要請した。星野氏も特に拒否する姿勢はみせず、このままいくと近々正式に監督就任が発表されることだろう。
 星野氏に異存があるわけではない。期待もある。が、それはまた正式に就任が発表されてから書くことにしたい。
 私は、それよりも今回の新監督就任要請について、フロントに対して感じたことを記しておきたい。
 野村克也前監督を夫人逮捕まで引っぱっていた不手際もある。しかし、この件に関しては、野村監督に最後の仕上げをしてもらいたいというオーナーの思いがあったのだと好意的に解釈したい。
 が、野村監督辞任に続いて星野氏に監督就任を依頼するという姿勢はいただけない。星野氏といえば中日ドラゴンズの顔である。タイガースでいえば、村山実さんのような存在だ。そういう人に、しかも今年ドラゴンズの監督としてユニフォームを着ていた人物をかっさらうような真似をしてもいいのか、と思う。
 実際、私は今年の日本シリーズで真弓明信コーチがバファローズのユニフォームを着ているのを見て複雑な心境になった。真弓コーチはライオンズからトレードで入団したとはいえ、タイガース生え抜きの選手以上にファンに愛された人である。その人がタイガースではないユニフォームを着て優勝の喜びにひたっている。なんでやねん、と思った。バファローズに真弓さんをとられたと感じさえした。
 星野氏となると、ドラゴンズファンにとってはそれ以上の存在に違いない。
 どうして岡田二軍監督の昇格ではいけないのか。本当に時期尚早なのだろうか。満を持して、というわけにはいかないだろうが、タイガースというチーム全体を把握している岡田二軍監督こそ、野村監督ができなかった仕上げをするにふさわしい人物ではないのか。
 よそから実績のある監督を招いたからチームが強くなるというわけでないだろう。そんなかんたんなものではないことは、プロ野球の歴史をたどればすぐにわかる。西鉄ライオンズ、大洋ホエールズを優勝に導いた三原監督でさえ、近鉄バファローズとヤクルトアトムズではチームをすぐに強くすることはできなかった。南海ホークスとヤクルトスワローズを優勝させた野村監督はどうだったか。タイガースでは3年連続最下位ではないか。
 チームを強くするには長期的な展望が必要である。短期間で強くしようと思えば、ジャイアンツのように他のチームの主力やアマ球界のトップクラスの選手を金と人気にものをいわせて集めるという方法はある。しかし、タイガースはそれすらできない。
 ならば、カンフル剤のように他のチームの監督を連れてくるのではなく、コーチから二軍監督と段階を踏んで指導者としての資質を高めていった、自前で育てた人物を監督にすべきではなかったか。
 星野氏はタイガースを変えるだろう。選手を鍛え上げるのには定評がある。人望も高い。私も期待しているし、決して嬉しくないわけではない。
 しかし、チームとしてそれでいいのかというしこりが残る。
 久万オーナーは前ジャイアンツ監督の長嶋氏に似ている。自前の選手を育てるのではなく、できあがった選手を次々とほしがった。それと同じものを今回の星野新監督就任要請に感じるのは、私だけだろうか。

(2001年12月12日記)


目次に戻る

ホームページに戻る