東京ドームでの開幕2連戦、昨年の恨みをはらすかのように、投手陣の踏ん張りでジャイアンツ打線を清原の2本塁打のみに抑えきり、見事に2連勝。これはなんと1962年以来40年ぶりとのこと。勝つことへの渇望を一気に満たすように、1点にかける執念が明らかにジャイアンツを上回っていた。いやいやすばらしいの一語に尽きる。最高のすべりだしでペナントレースがはじまった。
◎ジャイアンツ1回戦……3−1
先発は井川と上原。上原から初回に三者三振を食らってしまう。しかし、上原はこれで安心したのか勝負どころで球が甘くはいるようになった。そこを狙い打ちしたのが2回表の桧山。高めの球を弾丸ライナーでライトスタンドに運び、まずは1点。続いては4回表、4番のアリアスが低めの球をうまくすくいあげてバックスクリーンの左に放り込む2ランホームラン。その前に二塁打で上原攻略の糸口を作った今岡のはつらつとした打撃も光った。一方の井川は低めにびしびしとストライクが決まり、ジャイアンツ打線はみんな振り遅れ。4回裏、外角低めの球を清原にホームランされたが、これはあの球をスタンドまで運ぶ常人離れした清原のパワーが異常だというだけで、実際、清原は内角にズバリと決められると手も足もでなかった。高橋、松井はすっかりバッティングフォームを崩し、ポテンヒットがやっと。9回裏、センター前にラッキーヒットを放った松井と三塁片岡のジャンピングキャッチもおよばず内野安打となった清原を一二塁において迎えるバッターは江藤。力のない飛球がセンターに上がって赤星が難なく捕球。肝心なところでバントもできないジャイアンツ重量打線の欠点ですな。続く阿部の当たりはセンター返しのライナー。ショート藤本がよく追いつくが弾いてしまう。しかし、運はタイガースにあり。すぐに拾うと二塁に投じてフォースアウト。ライナーをとられたと思い帰塁しようとした松井は二三塁間にはさまれて片岡にタッチされダブルプレー成立。最後まで井川にまかせた星野監督の信頼感によくこたえた。
◎ジャイアンツ2回戦……2−1
新外国人のムーアと工藤の投手戦。ムーアはスライダーがみごとに決まりジャイアンツ打線を翻弄。4回裏、清原に2試合連続の先制アーチをあびたものの、そのあとも危なげないピッチング。リズムよく投げ込む投球のテンポがよい。工藤は最初からとばしていたが、6回に息切れしはじめる。二塁打の今岡は工藤のワイルドピッチで三塁まで進む。阿部の雑なキャッチングに助けられた。外野フライで同点、しかも相手投手はパリーグで長年対戦してきた工藤とあって、片岡はやっとリラックス。外角の変化球を逆らわずにレフト方向へ持っていき、同点タイムリー二塁打。続く7回表、一死から矢野の放った打球はレフト前へ。本職の外野手なら楽にキャッチした飛球だったが、急造外野手の二岡は内野ゴロでもとるように両手で救い上げようとして落球、二塁打となる。好調のムーアにあえて代打を送ったのは星野監督の勝利への執念か。その八木は敬遠されたが、続く赤星が一二塁間を広く開けていた仁志と清原をあざ笑うかのように両者の真ん中を破るゴロのヒットを放つ。矢野が二塁から生還し、とうとう勝ち越し。そのあとは伊藤、弓長、伊達、遠山、バルデスとリリーフ陣を総動員してジャイアンツ打線をみごとに抑えきる。矢野は低めの変化球を体で止める必死の捕球。これで投手たちも安心して投げられた。捕手の与える安心感の差もでたかもしれない。
◎愛すれどTigers週間MVP
投手……井川慶 文句なし。今年は20勝も期待できる。どんなピンチでも安心して見ていられる好投であった。
野手……ジョージ・アリアス 実は、この2連戦でヒットは1本だけしか打っていない。しかし、その1本が初戦の決勝ホームラン。ここぞというところで期待通りの働きができる4番。これこそタイガースが求めていた主砲である。
初戦はアリアス、2戦目は片岡と、クリーンアップ・バッターが塁上の走者を返して点をとるという理想的な攻撃と、信頼感をこめて繰り出す投手陣のふんばり。これこそ今年のタイガースの戦い方なのだ。監督と選手が信頼感で結ばれている。なんていい状況なのだろう。それにひきかえジャイアンツは、苦労して開幕一軍を勝ち取った山田を1試合も使わずに二軍に落とし、代走で一度起用しただけの十川孝もまた何のミスもないのに二軍落ち。こんな扱いで選手がやる気を起こすはずもない。野球をするのは主力選手だけではないのである。
次節は、開幕から2連敗と調子の悪いベイスターズ、連勝したものの古田を怪我で欠くことになったスワローズが相手。運がタイガースに向いているとしかいいようがない。高校野球選抜大会で甲子園になかなか帰れないタイガースだが、ロードで勝ち越せば、甲子園では決して弱くはないだけに、いいスタートダッシュがきれるはず。そういう意味では幸先のよい開幕2連戦であった。ちなみに40年前の時は小山、村山の両エースがローテーションに守られて勝ち星を重ね、みごとに優勝している。
(2002年4月1日記)