開幕から8試合東京遠征というハンディキャップをものともせず、横浜球場のベイスターズ戦で3連勝、神宮球場のスワローズ戦で2勝1敗と、この遠征を7勝1敗でのりきった。もちろん単独首位。これは1938年(職業野球リーグ戦がはじまった翌年のことだ)以来の開幕7連勝というチームタイ記録。当時のオーダーは沢村攻略のキャプテン松木、ミスタータイガース藤村、盗塁王の山口、豪腕豪打の景浦、曲者の伊賀上、プロ野球本塁打第1号の藤井、快速球の御園生、カイザー田中、守備の達人の岡田。他に酒仙投手の西村、七色の変化球の若林とまさに伝説の名選手が名前を列ねている。それ以来というんだからもう歴史的な事件ですよこれは。
◎ベイスターズ1回戦……6−1
ベイスターズ先発の野村から初回に先制。セーフティバントで出塁した赤星を塁におき、今岡のエンドランが決まりいきなりチャンスをつかむ。片岡の内野ゴロの間に赤星は三進。アリアスがセンターフライで赤星を返してまず1点。濱中がライト前にタイムリーでまず2点と出鼻をくじく。3回には今岡のホームランが飛び出し3点目と野村をKO。谷口、グスマンと出てくる投手から次々と打ちまくり、7回までに6点をとった。タイガースの先発は藪。大量得点をバックに6回まで二塁を踏ませない好投。8回に鈴木尚にタイムリー二塁打を打たれて完封は逃したものの、約2年ぶりの勝ち星を完投で飾り、復活に花を添えた。相手の先発を左と読んでホワイト、濱中らを先発起用したり、藪に最後までマウンドをまかせたりといった星野用兵がみごとに決まった。
◎ベイスターズ2回戦……6−2
ベイスターズの先発は2年目の左腕、稲嶺。台所の苦しさを露呈した。2回に濱中が第1号ホームランをレフトスタンドに叩き込むと、続く矢野も同じところにねらいすましたようにホームラン。3回にはホワイトが超特大の来日第1号をレフトスタンドに運ぶ。続く濱中がヒットで続き、矢野の四球で塁を進めると沖原がレフト前にきれいに引っぱり濱中生還で4点目。稲嶺をノックアウトした。この日の打線は止まらない。4回には細見から片岡がライトポール際に移籍第1号ホームランを打てば、5回にはホワイトが2打席連発の2号をバックスクリーンに持っていく。先発の谷中は決して調子はよくなかったが大量リードに守られて7回までロドリゲスのホームランによる1点に抑える。矢野の強気のリードで谷中も生き返った。8回に連打を浴びて伊達にマウンドを譲ったが、その伊達が好リリーフし試合を決めた。
◎ベイスターズ3回戦……2−1
星野と川村の投手戦。タイガースは初回に四球で出塁した赤星が打者片岡の時に二盗三盗を決め、片岡のライト線のタイムリー二塁打で生還、鮮やかな先取点であった。しかし、川村はそのあとスライダーを有効に使いタイガースの打者たちを沈黙させる。一方、星野は強風をうまく利用しスローカーブとフォークを緩急よく決めて芸術的なピッチングを展開した。6回裏、ベイスターズはヒットの相川を金城が送り種田の犠牲フライで同点に追いつく。木塚、竹下、斎藤と切り札をつぎこむベイスターズに対し、タイガースはベテラン勢を温存し、伊達、金澤と継投が成功。伊達は微妙なコントロールに苦しんでたが、ベイスターズの打者がハーフスイングすると捕手の矢野が積極的にアピールをしてことごとくストライクになる。ここらあたり、審判もタイガースの勢いに引っぱられた感じか。延長11回表、代わったグスマンを攻め立てる。片岡がセンター前ヒットで口火をきり、不振のアリアスもレフト前に運んでランナーをためる。桧山が送って代打坪井は敬遠の四球。ここで代打ホワイトはフルカウントまで球をよく見て決勝点となる押し出し四球を選んだ。内角いっぱい微妙なコースでグスマンは怒りに吠えたが判定はくつがえらない。締めはバルデス。重苦しい展開のゲームを勝ち取ったこの白星は大きい。金澤はプロ入り初勝利を飾った。
◎スワローズ1回戦……2−0
藤井と井川の投手戦。井川は8回を11三振無失点の好投。序盤は先頭打者を出塁させることも多かったが、チェンジアップが要所で決まる。一方の藤井を2回に満塁で攻め立てながら沖原の併殺で先取点を取りそこないそこからはチャンスを作ってもホームが遠い。しかし、若松監督は先に動いて失敗した。8回に藤井に代えて本間を投入、今岡がヘッドスライディングの二塁打でチャンスを作ると暴投で三進。ここでアリアスがきっちりと犠牲フライを打ってとうとう先取点。星野監督は井川を8回まで投げさせた。エースに対する信頼感の差が勝敗を分けたか。9回には矢野が二塁打でチャンスを作り、沖原のバントで三進。投手山本のボークで楽々2点目。締めはバルデス。連続セーブとなる連投で連勝を6にのばした。
◎スワローズ2回戦……3−1
ムーアが好投。スライダーが冴え渡り、ペタジーニを4三振に打ち取るなど文句なしの投球内容。しかもバッティングも好調で3安打を放ったのである。スワローズの先発はニューマン。2回に矢野がレフトスタンドにライナーで叩き込むホームランで先制する。3回にはヒットのムーアを赤星が送り片岡が技ありのレフト前ヒットで2点目。自ら追加点のホームを踏んだムーアはこれで乗りに乗る。8回にはホワイトのホームランで追加点。楽々完封かと思われたが、勝ちを意識したムーアは9回2死からピンチを招く。古田のヒット、岩村の四球のあと、ラミレスにレフト前にタイムリーを打たれて2点差。続く城石の打球はレフト横を襲う痛烈なライナー。これをホワイトが横っ跳びでキャッチ。苦手としていたスワローズから2連勝で球団タイ記録の開幕7連勝。
◎スワローズ3回戦……3−5
先発は新人の安藤。打線は初登板のルーキーを助けようとこの試合も先制。3回表、先発ホッジスから四球の赤星を今岡が送り、桧山がレフトへうまく流し打ちでまずは1点。しかしそのうら、安藤は稲葉にタイムリーを打たれてすぐに追いつかれた。それでもそのあとは6回までよく持ちこたえてなんとか同点のまま7回に。代わった石井から赤星がヒットで出塁すると今岡がレフトフェンス直撃の二塁打で勝ち越し点を奪った。が、その裏にスワローズが逆襲した。安藤から交代した金澤が浜名に二塁打を打たれる。ここはベテラン伊藤を頭から使ってほしかったところだが、先日の初勝利の時の好投が残像として残っていたか。代打副島に対し急遽左腕の遠山をつぎこむもうまくライト前に運ばれてしまう。真中は一塁ゴロに打ち取り、宮本も前進守備のショート藤本の好返球で三塁走者をホームで殺し、なんとか二死までこぎつける。しかし、遠山は稲葉にストレートの四球……。満塁でペタジーニを迎えた。遠山の投球は真ん中低めに。これをペタジーニはうまくすくいあげレフトスタンド最前列に放り込む逆転満塁ホームラン。神宮球場ならではのホームランではあった。甲子園ならレフトフライだったかもしれないので、この打席に関しては遠山は責められない。ただ、稲葉への四球でペタジーニまでまわしたところに逆転の原因があった。しかし、タイガースはあきらめない。8回には五十嵐亮から桧山が弾丸ライナーのホームランで2点差に迫る。9回表、満を持して登板の高津を攻め立てる。赤星が死球で出塁、今岡の三塁ゴロの間に赤星は三塁へ。片岡は三振したが、4番に入ったホワイトはよく見て四球を選び、期待は桧山に。シンカーを意識しすぎた桧山は結局センターフライに終わり、連勝はストップした。不振のアリアスを6番に下げ好調ホワイトを4番に入れたがどちらもノーヒット。最後までアリアスを信じて4番で起用してほしいところではある。
◎愛すれどTigers週間MVP
投手……藪恵壹 復活の完投勝利! 背番号4が躍った。強気の攻めが戻ってきた。この勝利は大きい。星野やムーアもよかったけれど、藪復活の嬉しさは格別である。
野手……デリック・ホワイト 3本のホームランにダイビングキャッチととにかくファイトあふれるハッスルプレーが目立った。しかも押し出しの四球を選ぶ冷静さも持ち合わせている。ホワイトの加入で他の外野手も発奮している。
連勝はストップした。しかし、負けた試合も最後まであきらめない姿勢が光った。さらに、次節はようやく甲子園の開幕である。連勝は止まっても、気分を一新して試合に臨める。連勝はいつかはストップするもの。しかし、後をひくような負け方ではなくうまく気分転換できるタイミングで負けている。心配するにはあたらない。まだまだタイガース旋風は止まらないと断言してよいだろう。
(2002年4月8日記)