本拠地甲子園に帰ってきての6連戦。3戦目は雨で流れたが、カープに2連勝、そしてベイスターズに2勝1敗で今節は4勝1敗。打線にはひと頃の勢いはないが、とにかく先発投手陣がいい。3完投、そしてそのうち2つは完封。かえって中継ぎ陣に出番がなく調子を狂わせたくらいである。11勝2敗で2位カープに3ゲーム差をつけている。とにかく負けない。誰がこなタイガースを予想しただろうか。今節だけで3試合も1−0があるというのが今年のタイガースを象徴している。
◎カープ1回戦……8−1
カープの先発横山は決して調子は悪くなかったが、藪の二塁打と赤星のサードゴロをディアスがお手玉してアウトを取れなかったので動揺したか、今岡にもののみごとなレフトポール際のホームランを打たれた。6回にはホワイトの左中間を破る二塁打と藤本の鋭い当たりのライト前ヒットで2点、8回にはスタニファーから桧山の二塁打とお待たせしましたアリアスの2らんで3点と着々加点。先発藪は7回の片岡がディアスの三塁線の痛烈な当たりを横っ跳びでとるファインプレーや8回のホワイトのダビングキャッチなどバックにも助けられ、金本のホームラン1本だけに抑える完投勝利。無四球が示すように思うところにボールがいく完璧なコントロールが光った。リズムのよさは2時間19分という試合時間にも現れている。開幕からの勢いをそのまま持ち続けていることを証明した試合であった。
◎カープ2回戦……1−0
谷中は内角を突くいつもの強気な投球、そしカープの長谷川は速球主体のピッチング。それぞれの持ち味が出て両チームとも打ちあぐむ。5回の赤星のダイビングキャッチはみごと。谷中をもり立てる。一方、タイガース打線はランナーを出してもそれを生かし切れない。こういう試合は先に動いて失敗した方が負ける。8回表、新井、浅井のヒットでカープがチャンスを作った。西山のバントは谷中がよくさばいて三塁へ送球、走者を進ませない。ここで山本監督は長谷川に代えて野村を打席に送った。その野村を一塁ゴロに打ち取る。続く緒方は死球で満塁。東出は難しい球に手を出しセカンドフライ、谷中がピンチを乗り切った。そうなると優勢はタイガース。9回裏、リリーフの玉木から今岡がレフトスタンド一直線のサヨナラホームラン! 谷中は今季初完封。よく辛抱した。星野監督も信頼して最後まで投げさせた。流れをとらえて動かなかった星野監督の粘り勝ちである。
◎ベイスターズ4回戦……1−0
アリアスが2回裏にベイスターズ先発の谷口から左中間一番深いところに打ちこむ先制ホームラン。しかし、追加点が取れない。6回裏には無死満塁と谷口を攻め立てたが、木塚を投入する森監督の必死の継投策の前にアリアス、矢野が三振、藤本が一塁ゴロとなすすべがない。それでも安心できたのはタイガースの先発が井川だったから。3回表、鈴木尚の打球を足に当てるアクシデントがあったものの、全く動じることなく9三振を奪う堂々たる投球でベイスターズ打線を完封。6回と8回、2度も三塁にランナーを進められながらそれぞれ中根、グランをライトフライに打ち取る。今季は最多勝確実ではないかと思わせる。2試合連続1−0完封という展開は見ごたえがあったぞ。
◎ベイスターズ5回戦……2−3
先制したのはまたまたタイガース。2回表、バワーズに対し桧山のヒットを足場に坪井が見事な流し打ちでレフト前に運び、一三塁とチャンスを作る。矢野のピッチャー返しのヒットで桧山が生還。続く今季初スタメンの田中はスクイズを決めて追加点の2点目。ムーアの投球なら今日もいただきと思われたが、6回表にグランのタイムリーで1点差に。この打球はバットを折るほど詰まらせていたのだが、かえってそれで野手の間を抜くヒットになった。しかし、これは運が悪かっただけと思われた。しかし、6回裏、二死満塁のチャンスにムーアに代えてホワイトを送ったがいい当たりのサード頃で追加点はならず。これが結果的に裏目に出る。久しぶりの登板である中継ぎ投手陣がリズムに乗れない。伊藤は四球と内野安打でピンチを作り、石井琢に対してぶつけた弓長は同点タイムリーを浴びる。続く金城の痛烈な当たりはサード片岡のファインプレーで併殺にとり同点にとどめたが……。7回裏、今岡とアリアスのヒットでチャンスを作ったタイガースだが、今岡が離塁が大きく牽制で刺されてチャンスをつぶす。8回裏、2死一二塁のチャンスで伊達をそのまま打席に送り結局三振。いくら伊達が8回に好投したからといっても、ここは勝負を賭けるところだった。八木がまだベンチにいたのに……。そして9回表、伊達は先頭のロドリゲスに死球を与えてしまう。相川のバントは失敗で二塁にフォースアウト。代打石井浩は初球を打ってライト前に持っていき、相川は三塁に進む。石井琢の打球はライト桧山の頭上に。桧山は懸命のバックホーム。送球を取りにいった矢野に三塁走者の相川がもろにぶちあたり、矢野は転倒。この時に左肩を脱臼して退場してしまう。結局この1点が決勝点となり、タイガースは正捕手を欠くという実に痛い敗戦となってしまった。勝負どころでの代打の使い方はさすがに野村前監督の方がうまかったという感じである。
◎ベイスターズ6回戦……1−0
タイガース安藤、ベイスターズ山田、両投手が好投。タイガースは初回に2死満塁のチャンスを作るが、坪井の当たりは痛烈なサードライナー。ヒット性の打球だっただけに、ここで山田を打ちこめなかったのが辛かった。矢野の欠場で先発マスクは吉本。安藤をよくリードし、それに応えた安藤も8回を2安打の堂々たる投球。特に勝負どころでは吉本の変化球の要求に首を振り直球勝負にいった真っ向勝負がみごとであった。8回表に山田に代打を送って得点できなかったベイスターズから、流れはタイガースに。リリーフの前田、竹下から赤星、今岡、片岡と3連続四球。代わった木塚からアリアスは三振に打ち取られ2死となったが、桧山のライト前ヒットでとうとう待望の1点をもぎ取った。9回はバルデスが三者凡退で締める。安藤はプロ入り初勝利。
◎愛すれどTigers週間MVP
投手……安藤優也 前回以上に球に力があった。0−0という緊迫した局面で自分の投球を貫き通した投球はさすが新人王候補。このままローテーション入りなるか?
野手……今岡誠 カープ戦での2試合連続ホームランにはしびれた。そして、インタビューでの自信に満ちた言葉! 人間はここまで変化するものなのか。
投手陣をここまで引っぱってきた矢野の欠場は痛い。しかし、吉本や山田はこれをチャンスとして一気に正捕手の座を奪い取るくらいの気持ちでいってほしい。他の選手がヘルメットに矢野の背番号39を張りつけていたのに対し、吉本のヘルメットにはそれが見られなかった。これは矢野に対する挑戦状と見たが、違うかな。気がかりなのはホームランを打っても波に乗れないアリアス。守り慣れた三塁を守らせるなど、首脳陣もいろいろと工夫はしているのだが。現状では二軍にいるエバンスとの交代もあり得る。次節がアリアスにとって勝負となるだろう。
(2002年4月15日記)