開幕から1ヶ月半、緊張感を保ってきたチームもそろそろ疲れが見えてきた感じだ。そこへもってきて、サッカーW杯による変則日程と、タイミングはあまりよくない。ナゴヤドームのドラゴンズ戦は1勝2敗でしのいだものの、甲子園に戻ってのジャイアンツ戦には2連敗で、今節は1勝4敗。勝ち越しも7と開幕7連勝の段階に戻り、首位の座も半月ぶりに明け渡した。ムーアか井川でしか勝てない状況に対しては、他の投手たちもきっと心に期するものがあるだろう。片岡も復帰したことだし、ここはなんとか辛抱してしのいでほしいところである。
◎ドラゴンズ11回戦……1−8
谷中がいきなり初回に立浪、谷繁のタイムリーで3失点。小笠原から4回に今岡の二塁打で1点を取ったが、山田監督は思い切って遠藤に交代、流れを断ち切られた。谷中は5回につかまり二塁打のブレットと敬遠の福留を塁に置いてゴメスに2点タイムリーを打たれ、立浪にもうまく流し打たれて6失点で降板。リリーフした伊達と伊藤から谷繁が2打席連続ホームランを放つなどドラゴンズに着々と点をいれられ、打線も正津、山井のリレーに決定打が出ない。この試合でスタメン復帰の片岡は2安打、今岡は3安打というぐあいに10安打を放ちながら1点しか取れないというリズムの悪さ。谷中は牽制でランナーを刺したり、バントを二塁に送って進塁を防いだりした後で打たれるという嫌な負け方。独り相撲といった具合だ。
◎ドラゴンズ12回戦……2−3
井川と川上の息詰まる投手戦。先制したのはドラゴンズ。5回裏に投手川上自らのタイムリー。先頭の森野に四球を出したのがいけない。それでもタイガースもすぐにひっくり返した。6回表、先頭の今岡がヒットで出ると関本が送り、片岡三振のあと、アリアスが球に逆らわない無理のないバッティングでセンターに弾き返してまず同点。続く桧山はライト戦を破る二塁打でアリアスが長駆ホームインして逆転。これで井川が抑えるだろうと思った6回裏、ゴメスと立浪に2者連続ホームランを打たれてしまう。何か手品でも使われたかのような逆転劇だ。そして、落合、ギャラードとつぎこんできたドラゴンズの継投の前に結局チャンスをつかみ切れず敗れてしまった。中継ぎが不調なために井川を思い切って代えられなかったということもあるだろうが、まさか連続ホームランを打たれるとは誰も思わない。惜しい試合を落とした。
◎ドラゴンズ13回戦……1−0
ムーアとバンチは闘志むき出しの投球。バンチがムーアにブラッシュボールを投げ、ムーアが激昂、あわや乱闘という場面も見られた。両投手とも8回を無失点で切り抜け、あとはリリーフの投げあいに。橋本、金澤で9回を抑え、試合は延長戦に。10回表、正津から藤本がセンター前ヒットで出ると、片岡を迎えて投手は山本昌に交代。片岡は三振だったが、アリアスはファールで粘ってとうとうレフト線に二塁打! 藤本が決勝のホームを踏んだ。10回裏はバルデスが抑えて連敗をストップさせる。首位陥落のピンチを必死のプレーでなんとかしのいだ。この勝ちで気持ちが楽になると期待したのだが。
◎ジャイアンツ11回戦……8−11
首位決戦とはいいながら、失策も多くなんともいえない凡戦。先発原田は初回にランナーをためながらも高橋の二塁ゴロで併殺をあせった藤本が一塁へ悪送球して先制される。しかし、その裏、タイガースは桑田を攻め立てる。二塁打の今岡を藤本が送ってアリアスが犠牲フライ。すぐに追いついた。2回にジャイアンツが仁志の2ランで突き放すと、3回裏には片岡がレフト線に軽く流し打った打球が風にのってスタンドイン、同点に追いついた。ところが横田は調子が出ない。4回表、同点にしてもらって力んだか、阿部に絶好球を投げてホームランを打たれてしまう。そのあともヒットの仁志を桑田のタイムリーで返されて2点差をつけられたところで遠山に交代した。そのあと、ジャイアンツはチョン、タイガースは伊藤と安藤が好投して7回までは2点差のまま試合は動かない。ところが、安藤は8回につかまった。代田の川中に三塁打を打たれ、交代。橋本は清原を歩かせ、金澤にスイッチ。ここのところ好調の金澤も、この日は球が上ずり5連続安打をくらって6点取られてしまう。しかし、タイガースもあきらめない。8回裏、岡島からアリアスのタイムリーと桧山の3ランで一気に4点、9回には切り札河原から関本がレフトスタンドに叩き込む豪快なホームラン。3点差に詰め寄ったが、結局追いつけなかった。星野監督は8回途中、矢野をいきなり交代させるなどショック療法を試みたけれど、それよりも川中に三塁打を打たれた安藤を交代させるべきではなかった。前の回、いい球がきていたのだから、ここは辛抱して使い続けてほしかった。試合がとびとびになり、かつサッカーW杯のテレビ中継の関係で試合開始時間が5時という変則な日程で、選手のリズムが明らかに悪くなっている。だからこういうエラー続出の凡戦になるのだ。
◎ジャイアンツ12回戦……3−4
上原からタイガースが先制。二塁打の片岡を桧山がセンター前ヒットで返し、初回に1点。これを藪が守る。5回までは内野安打1本に抑える低めをついたていねいな投球。6回に松井のタイムリーで追いつかれたが、そのあとのピンチにも動じずその1点でとどめた。7回裏、その藪に代打ホワイトは不可解。確かに8回くらいにいきなり打たれる危険性もあったが、緊迫したいい流れが続いていたのだから、自らそれを断ち切るような交代ではなかったか。結局交代した福原が自らのエラーなどでランナーをためて斎藤に勝ち越しタイムリーを打たれたのだ。しかし、この試合はタイガースも首位の意地を見せた。9回裏、アリアスが二塁打を放つと、桧山はあわや同点ホームランというあたりのファールで上原をびびらせて四球を選ぶ。代打田中はボール球に飛びつくバントで走者を進め、ここで代打の神様八木登場。投手は切り札河原に交代。八木の当たりはライトを襲う。高橋由がよく取ったが、アリアスは余裕でホームインし、1点差に。そして、矢野は投手の頭を越す気迫のセンター前同点タイムリー! 代打平下もヒットでつなぎ、打席には今岡。ところがこういう場面では今岡は弱い。キャッチャーフライに倒れて延長戦に。バルデス投入は、しかし裏目にでた。松井を歩かせたのが痛かった。無駄な四球は、接戦では命取り。川相のバントは二塁で刺したから、外野は前進守備を敷く必要はなかった。それなのに前に出過ぎていた上坂と平下をあざ笑うかのように元木の打球は外野の頭を越していった。川相は一気にホームインし、これが決勝点になる。前日とはうって変わって締まった好ゲームだったが、いらぬ四球や守備の位置取りが明暗を分けた。
◎愛すれどTigers週間MVP
投手……トレイ・ムーア 勝ち星こそつかなかったが、ドラゴンズ戦での気迫あふれる投球が勝利を呼びこんだ。ムーアと井川がいる限り、連敗は必ず止まる。他の投手もあとに続け。
野手……ジョージ・アリアス ドラゴンズ戦の決勝打、ジャイアンツ戦でも同点のきっかけとなる二塁打など、いいところで4番の打撃ができている。投打のバランスが噛み合ってないが、主砲が健在なのが頼もしい。
最初からわかっていたことだが、W杯に配慮した変則日程の悪影響がここかしこに出ている。これがあと半月続くかと思うとうんざりする。次節は水曜から2連戦、土曜から3連戦。選手の調整が難しかろう。思えば昨年の今頃は、やっと若手がのびてきて最下位脱出という状態であった。今年は1ゲーム差で首位争いをしているのだ。今は苦しいが、必ずリズムが上向くようになるはず。それを信じたい。
(2002年6月17日記)