甲子園のジャイアンツ戦は2勝1敗。同じく甲子園のドラゴンズ戦は1勝2敗。今節は3勝3敗と結局は5割、しかしスワローズ連敗のため2位に浮上した。特にジャイアンツ2戦、ドラゴンズ1戦と3試合連続のサヨナラ勝利は22年ぶりの快挙。あきらめないタイガースの真骨頂だ。たた、藪が左脇腹痛、桧山が左肩亜脱臼で全治3週間の診断を下され戦列離脱。今岡もねんざで欠場。アリアスは扁桃炎でスタメン落ち。主力の怪我人があとを断たないという事態もある。ここは代役の選手がこの間にレギュラーを奪い取るくらいの意気込みで活躍してほしいものだ。
◎ジャイアンツ16回戦……2−4
先発井川は立ち上がりから入れこんでいて、普段の投球ではなかったかもしれない。初回、二岡を歩かせ高橋由にも二塁打を打たれた。それでもショートゴロに清原を打ち取ったものの、これを関本がファンブルして一塁間に合わず先取点を許す。その裏、桑田から今岡、そしてこの試合復帰の赤星が連続ヒットでチャンスを作る。ダブルスチールでそのチャンスを広げたものの、クリンナップトリオが凡退。これが大きく響いた。井川は3会には仁志のタイムリーでさらに1点、4回には清水のライトスタンド中段に叩き込まれるホームランで3点目と、甘い球を狙われて7回を投げ切ったところで降板した。一方のタイガースだが、ヒット性の当たりをことごとく仁志に好捕され、チャンスを広げられない。ああいう守備をされたらお手上げだ。まいった。9回には弓長が二岡にホームランを打たれて4点差。これで勝負は決したが、それでも9回裏、抑えの切り札河原から関本がレフトスタンドに運ぶ豪快な2ランホームランを放ち、場内をわかせた。立ち上がり、エラーでジャイアンツに流れをやったという点では、このホームランだけではそのミスを帳消しにしたとはいえないが、今後に期待をもたせる1発だった。
◎ジャイアンツ17回戦……4−3
甲子園を嫌なムードがただよった。2回表、藪が清原に四球、江藤に二塁打を許し、仁志に四球を与えたところで顔をゆがめ、ベンチに消えて行ったのだ。脇腹痛で無念の降板。急遽マウンドに上がった吉野は阿部にライトフェンス際に大きな飛球を打たれた。桧山はいったんグラブに収めたが、そのあとフェンスに激突。倒れこんで動けない。左肩亜脱臼で退場……。しかもちゃんと捕球してからフェンスに当たって、そのあと勢いでこぼしているのにアウトと認められず走者一掃の二塁打にされてしまう。ここらあたりの審判の判定には疑問を感じる。アウトはアウトにしてくれよ。これで慢心したジャイアンツは、あとは漫然と打席に立つばかり。しかし、われらがタイガース打線は決してあきらめない。苦手の高橋尚から3回裏に今岡が二塁打で1点を返す。藤田太陽が今季初登板、3回を1安打無失点の力投。流れをぐいと引き寄せる。7回から登板した谷中もピンチは迎えたものの気迫の投球で2回を無失点。これに打線が応える。7回裏、片岡が内野安打で出塁すると、代打八木もヒットでランナーは三塁に進む。濱中の当たりはもう少しでスタンド入りというセンターへの大飛球。これで片岡が生還して1点差に。8回裏、前の打席で故障していた仁志を狙い、矢野が二塁方向にプッシュバント。さしもの仁志もこれは取れず。そし今岡が得意の二塁打で矢野を返してとうとう追いついた! 同点でバルデスを投入した必勝体勢の星野監督に対し、勝ちへの執念の不足している原監督は武田を登板させる。濱中の打球はレフトスタンドに。全員一丸となった勝利だ。
◎ジャイアンツ18回戦……5−4
1回表、ムーアは満塁のピンチを迎えるが元木をファールフライに打ち取り無失点。これに対し入来から田中が二塁打で出塁するとアリアスが二塁打で先制。さらに濱中もレフト前にタイムリー。そし桧山の代役平下が移籍初のホームランを右中間にスタンドに叩き込む。この$点は大きかった。ムーアは悪いなりによくしのいだ。6回表もピンチを招いたが、松井の内野ゴロの間に1点とられたのみ。そして、問題の7回裏。入来がアリアスに投じた球は頭の後ろをかすめる危険球。帽子もとらない入来に対し怒ったアリアスが二三歩歩み寄ると、入来はグラブをマウンドに叩き付けてアリアスを挑発。この一連の行為はアリアスへの一球が故意であったと思われてもしかたない。罵声を吐いたジャイアンツ村田コーチに怒ったのはタイガース松山コーチ。奥でマッサージを受けていた清原はわけもわからず乱闘に加わろうとする。結局入来とアリアスが退場となった。ムーアはこれでリズムを崩したか8回表、松井が2ランを放ち1点差に。こういう時にも冷静に打席に立てる松井はすごい。来季FAでタイガースにくることになっているらしいが、星野監督にそのすごさをアピールする1発となった。1点差で迎えた9回表、マウンドにはバルデス。ところが先頭打者にヒットを許す悪いパターンで、後藤にタイムリーを打たれてとうとう追いつかれてしまった。ジャイアンツはここで鄭を投入。なぜ河原でないのか。負けても別にかまわないということなのだろう。だったら勝ってみせましょう。矢野がヒットで出塁。バルデスはバントを失敗したものの、赤星がライト前ヒットで続く。ここで田中は敬遠。打席に沖原が。シドニー五輪で鄭からホームランを打った男は、前進守備の頭を抜くライト前ヒットで矢野を迎え入れ、2試合連続のサヨナラ勝ち。ヒーローインタビューは初めてという沖原の声が興奮と感激に震えていた。
◎ドラゴンズ15回戦……4−3
先発川尻の立ち上がりは悪く、初回には立浪に、2回には井端にそれぞれタイムリーを打たれて先制点を許した。先発山井の速球に手こずっていたタイガース打線だが、5回にとうとう捕まえる。平下二塁打、関本死球でチャンスをつかみ、矢野がレフト線に引っぱり走者一掃の二塁打で同点に。赤星もセンター前にぽとりと落とすヒットで矢野を返して逆転だ。8回表、金澤が連続三振で二死をとったあと、森に無警戒に甘い球を投げセンター前に打ち返されると、谷繁の同点二塁打をあびてしまう。9回表には遠山がランナーを許し谷中にスイッチ。ここで谷中は満塁のピンチを迎えるが山崎武を三振、神野を一塁フライに抑え、サヨナラのおぜんだてはそろった。落合から関本が内野安打を放つと、続く矢野はレフト前にもっていく。これをレフトの蔵本が後逸し、ボールがフェンス近くまで転がる間に関本が歓喜のホームイン。なんと3試合連続のサヨナラ勝ちで2位に浮上した。
◎ドラゴンズ16回戦……0−6
キューバの英雄、リナレスに来日第1号を打たれてしまった。初回である。打たれたのは先発のカーライル。コントロールが定まらず甘いところにいった球を立浪に先制2点タイムリー、そしてリナレスの2ランとことごとくつかまえられてしまった。ところが2回以降は速球が伸び、1安打を打たれたのみで5回に降板。ウォーミングアップ不足なのか、エンジンのかかりが遅すぎる。そのあとのリリーフ陣もよく粘った。藤田が8回に高めの球をとらえられて2点失ったが、ランナーがいる時の投球に課題を残した。打線は朝倉の速球にタイミングがあわず、7回の途中まで散発6安打。7回に関本と広澤のヒットでチャンスを作ったが、岩瀬、落合、山北のリレーに阻まれて完封負け。リナレスのホームランで一気にドラゴンズに流れが傾いた。打たせてはならない打者の目を覚まさせたのかもしれない。
◎ドラゴンズ17回戦……1−3
アリアスが扁桃炎でスタメン落ち。3番八木、4番広澤という思い切った布陣で臨んだが、初回、2回とチャンスを作りながらも広澤の併殺など山本昌の老獪な投球術に要所を締められた。一方、タイガースは若い藤川が2度目の先発。3回までは快調にとばしてドラゴンズ打線を圧倒したが、4回表、福留を歩かせたあと、立浪にとことんファールで粘られ、なんとか当たりそこねのショートゴロに打ち取ったが、沖原がバウンドをあわしそこねて送球できず。リナレスは外角の速球をライト打ち。これがヒットとなり、先制点を許す。渡辺を歩かせ満塁。谷繁への投球は、コーナーをつくていねいなもの。しかし、きわどいところをボールと判定され、結局押し出しの四球。6回には谷繁をタイムリーで3点目を失い、谷中にバトンを渡した。タイガース打線は、6回裏に代わった山北から広澤がタイムリーを放って一矢報いたが、そこまで。岩瀬、ギャラードとつなぐドラゴンズの必勝パターンの前に2連敗となった。
◎愛すれどTigers週間MVP
投手……藤田太陽 ジャイアンツ戦、故障者続出で沈みかけた雰囲気を、気迫の投球で奮い立たせ、サヨナラ勝ちにつないだ。今後は先発起用も考えられる。大器いよいよ登場ですな。
野手……沖原佳典 左投手専任で出場し、きっちりと結果を出している。サヨナラヒットも、その積み重ねの延長線上にある。職人的いぶし銀の存在感が光った。
満身創痍とはこのとか。状況は6月より厳しい。それでも5割のラインを守り、2位に食らいついている。ここがふんばりどころだ。次節も甲子園に陣取って6連戦。3試合連続サヨナラ勝ちが本当の力であることを見せてほしいのだ。
(2002年7月29日記)