愛すれどTigers


4番濱中快打連発

 長期ロード直前の甲子園6連戦。ベイスターズ戦は2勝1敗。スワローズ戦は惜しい星を落として1勝2敗。結局今節も3勝3敗と五分の星に終わったが、スワローズ戦で見せた粘りやムーアの志願による中1日登板など、選手の気持ちはまだ切れてはいない。アリアスの戦列離脱でとうとう濱中が4番に座る。そのプレッシャーをものともせず快打を連発する姿はスワローズの古田をして「これから10年はリーグを代表する選手になるよ」と言わしめた。満身創痍であっても、常に前向きな姿勢でいる限り、きっと浮上する時がくるはずだ。

◎ベイスターズ19回戦……4−2
 井川はコントロールが悪く、本調子とは程遠い。最下位のベイスターズ打線だったから2失点ですんだようなもの。3回の失点は種田とロドリゲスに甘い球をヒットされたあと、グランにそれでも真ん中に入る変化球を投げて狙い打ちされタイムリー二塁打となったもの。ベイスターズの先発福盛はあっぷあっぷの投球。特に初回は2つの四球などで二死満塁のチャンスを作りながら平下が三振。この間ずるずるといきそうな嫌なムード。ところが、代打の神様八木がやってくれました。6回裏、二死から平下がヒットを打つと関本が死球、矢野もよくボールを選んで歩き満塁に。井川をすぱっとあきらめて八木が打席に入った。投手は横山に交代、代わりばなの初級を狙い撃ち! ボールはレフトスタンドに一直線。代打逆転満塁ホームランで2点リードだ。7回からは谷中が、9回にはバルデスが、ランナーを出しながらも後続を断ち逃げ切った。まさにベテランの読み勝ち。星野監督と八木の気持ちがぴったりとそろっていたからこそ生まれたホームランかもしれない。
◎ベイスターズ20回戦……2−9
 試合直前にアリアスが脇腹痛を訴えて欠場。代役に広澤をすえて臨んだが、先発ムーアが初回から死球を連発してランナーをため、小川、グランの連続二塁打と多村のホームランで5点を先制されてしまった。このリードでベイスターズの吉見は楽になり、8回を2失点という好投。9回に登板した遠山は球が真ん中に集まり過ぎて2点を失う。これで2軍落ちが決まった。とにかくムーアの来日初めてという乱調に尽きる。
◎ベイスターズ21回戦……4−0
 川尻が久々に持ち味である左右に散らす頭脳的な投球を展開、8回を0点に抑えた。ピンチに野手もよく守る。特に6回は無死二塁から内川のセンター前ヒットで生還しようとする石井琢を赤星の好返球でホームで刺し同点のピンチをしのいだ。さらに8回には石井琢のライト前ヒットでホームをついた田中一を高波がダイレクト送球でアウトに。この送球は見事だった。打つ方では5番に座る濱中が先発森中から2回に先制のソロホームランをレフトスタンドに叩きこみ、6回には代わった米から今季初めてとなる3ランをレフトへ放つ。濱中の若い力と川尻のベテランの味がうまく噛み合っての勝利。川尻は先発では2年ぶりとなる勝利で、ウイニングボールを大事そうに尻ポケットに入れてのヒーローインタビューであった。
◎スワローズ17回戦……1−2
 なんと先発は中1日のムーア。前回1回で降板したため、自分から志願しての登板だそうだ。それだけに気迫のこもった投球。内角をずばりとつく投球で6回までスワローズ打線をほぼ完璧に抑えこんでいた。しか、打線が藤井を崩せない。それでも4回裏、センター前ヒットで出塁した片岡を濱中が左中間に運んで返し、先制点を奪う。ただ、そのあとはチェンジアップに苦しんだ。そのあと快速球の五十嵐亮、左腕の石井と繰り出すリリーフ陣に翻弄される。7回表、ムーアはペタジーニを歩かせ、古田に高めの球をレフトスタンドに運ばれ逆転2ランをくらう。せっかくの好投であったが、この失点が決勝点に。切り札高津から濱中がヒットを放ったが、あとの打者は沈む球をことごとく空振りでは逆転どころではなかった。惜しい試合を落としたものだ。
◎スワローズ18回戦……3−2
 この日から濱中が4番に。先発藤川とホッジスの投手戦となる。5回裏、死球の関本とヒットの矢野を塁において赤星はセカンドゴロ。これを土橋がエラー。関本が一気に本塁を突き、先取点をとる。6回無失点の藤川は谷中にあとを託したが、その谷中が7回表、古田、ラミレスにヒットを許し土橋の汚名返上のタイムリーで追いつかれた。しかし、タイガースも負けてはいない。その裏すぐさま二番手河端から矢野がセンター前ヒット。藤本が送って矢野は二塁へ進む。田中のライト線への当たりはペタジーニに好捕されたが投手のベースカバーが遅れ悪送球を誘い、矢野は一気に生還、再びリードした。8回表、金澤が登板。二死をとったあと、ペタジーニ、古田に連続ヒットを許し、岩村のセンター返しのヒットで再び同点に追いつかれる。そのあとは、スワローズがニューマン、松田を投入、タイガースも吉野、バルデスで勝ちにいく。試合はとうとう延長戦に。9回表には先日に続く高波の好返球での本塁封殺などもあって緊迫した試合展開になった。その高波がラッキーボーイに。10回裏、高波の打球はキャッチャー古田の前に当たりそこねのゴロを打つが、古田は高波の足を意識してかあせってボールをこぼしてしまいサヨナラのランナーが出塁した。打者は4番の濱中。ライト方向への鋭い当たりを稲葉がダイビングキャッチしようとしたが、届かず後ろにそらす。その間に高波がホームイン。濱中はサヨナラ三塁打で4番の存在感を示した。相手のエラーもあったが、そこにつけこむ野球は野村前監督の目指したものではなかったか。「野村の考え」が星野監督のもと開花した、そんな印象を受けた勝利であった。
◎スワローズ19回戦……7−8
 まさに死闘であった。先発は中4日の井川と坂元。井川は持ち味の緩急をつけた投球ができず、三振を一つも取れないまま3回表に5安打を集中され4失点。エースの乱調で完敗ムードが早くもただよう。ところがその裏、タイガース打線も坂元を攻め立てる。井川の代打上坂がセンター前ヒットで出塁したのを皮切りに、赤星のセカンドゴロを土橋が後逸、3番打者の平下はレフト前に流し打ってまず1点を返した。続く4番濱中もレフト前に弾き返し2点目。5番八木もレフト前に運び3点目。一気に1点差に迫る。二番手の伊達は好投したものの5回表に稲葉にライトへのホームランを打たれて2点差に広げてしまった。しかしその裏、先頭の平下は三振したもののフォークを古田がそらし、なんと平下は振り逃げで二塁までいってしまった。こういうのも珍しい。濱中のピッチャーライナーは坂元が弾いたのを宮本がよく拾って一塁はアウト、しかし平下は三塁に進む。ここで八木がライトに大きな犠牲フライを放ち再び1点差に詰め寄る。6回からスワローズは石井を投入したが、代打沖原がセンター返しのヒットで出塁し矢野が送るとここで代打は広澤。センター返しの見事なバッティングで沖原を迎え入れてとうとう同点に。しあいはここで膠着状態になっていく。スワローズは五十嵐亮の速球が冴え渡り、タイガースは吉野、谷中のリレーで点を与えない。タイガースは9回バルデスを投入。試合は延長戦に。10回裏、二死のあと、バルデスがそのまま打席に入った。三振でいいと送りだしたのだろうが、バルデスはここでピッチャー返しのヒットを放つ。今岡が歩いて一二塁となり、打席には赤星。不調の赤星だったが打球は左中間へ。浅い当たりでホームは無理と思われたが、バルデスは三塁を蹴ってホームへ一直線。返球がよく、バルデスはアウトに。サヨナラのチャンスがつぶれた。全力疾走のバルデスはそれでも11回を三者凡退に抑え、金澤に交代。12回表のマウンドに上がった金澤は球が高めに浮き、稲葉、ペタジーニと連打を食らって打者は小野。古田が負傷で途中欠場となったその代役にやられた。小野の打球はセンターバックスクリーンへ向かって飛んでいき、赤星の頭の上を無情に通過。この3点は大きかった。12回裏、切り札高津から関本が2ランを放って1点差に迫り、なおも今岡がセンター前ヒットを必死に走って二塁打にする。同点の一打を期待された赤星だったが、ライト方向へのいい当たりはセカンド真正面のライナーとなりゲームセット。試合には負けた。しかし、若い選手たちが最後まであきらめない姿勢を見せた。バルデスの暴走も、積極性の裏返しだ。敗れはしたが、いい試合であった。

◎愛すれどTigers週間MVP
投手……川尻哲郎 先発復帰3試合目にして待望の勝利。藪不在の現状、ベテランの存在は貴重だ。これでリズムを取り戻してロードではローテーションの軸になってほしい。
野手……濱中おさむ 文句なし。ただいま絶好調。若いだけに乗り出すと手がつけられない。この調子で4番の打順に定着してほしいところ。

 次節からはいよいよ3週間の長期ロード。今季のタイガースはホームよりロードの方が成績がいいだけに、例年と違った戦い方が見られるように思う。3番平下5番八木という苦肉のオーダーを組まねばならないほど打線は駒不足ではあるが、片岡も徐々に当たりを取り戻しつつあるし、沖原や広澤ら代打陣も好調。首位ジャイアンツとのゲーム差は10と苦しい展開だが、この時期に5割を越えAクラスにいるというのが嬉しい。昨年までは長期ロードに出る頃にはとっくに最下位に落ちていたのだから。

(2002年8月5日記)


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