甲子園のジャイアンツ3連戦、初戦は敗れてマジック1を許したが、優勝決定の試合には目の前での胴上げだけは許さぬとばかりのサヨナラ勝ちで意地を見せてくれた。久々のG戦勝ち越し2勝1敗。しかし、横浜球場のベイスターズ戦では、監督解雇でがたがたのはずの相手に1勝2敗と負け越し。結局今節も3勝3敗で終わってしまった。ジャイアンツ戦のあと、気が抜けたようになるという悪い癖が出てしまった形だ。しかし、今岡、濱中の復帰で怪我人さえ出なければ優勝チームにも勝ち越せるだけの力はあるということを示した。来季に明るい展望が開けてきた。
◎ジャイアンツ25回戦……1−5
藤川は、松井に真っ向勝負を挑んだ。そして、序盤3回、ジャイアンツ打線をノーヒットに抑え込んだ。しかし、4回、高橋由を歩かせたあと、高めの速球を松井にライトスタンドに叩き込まれて2点を先取された。負けていなかったのはこの試合1番打者で復帰した今岡。新人真田から5回裏、レフトスタンドへ1点差と迫る見事なホームランを打つ。しかし、6回表、藤川の膝元低めに決まったストレートを松井がバックスクリーン右に放り込む。これはきいた。あの球を打たれたのではどうしようもない。戦意を喪失させるホームランという感じだ。9回表には清原にも2ランを打たれたけれど、これはおまけみたいなもの。真田にやられたというよりは、松井に負けた。ジャイアンツはこの勝利で優勝マジックを1に減らした。
◎ジャイアンツ26回戦……3−2
試合はジャイアンツペース。先発藤田は2回、ピンチをダブルプレーで切り抜けた直後に江藤に先制タイムリーを打たれる。さらに4回、阿部にホームランを許し、2点差に。しかし、この日のタイガースの粘り腰は見事だった。6回、2試合連続となる今岡のホームランで入来をとらえて1点差。谷中、伊達、吉野、バルデスとつないでさらなるリードは許さない。ジャイアンツは9回、切り札河原を投入。この時点でスワローズの敗戦の報は届いていたので、そのままジャイアンツ原監督の胴上げかと思われた。しかし、この回の先頭打者濱中がバックスクリーンへ同点ホームラン! バルデスのあとは安藤が続き、ジャイアンツ打線を封じる。ジャイアンツも岡島を投入してなんとか勝って胴上げを狙う。延長12回裏、もうジャイアンツの勝利はない。マウンドには前田。1死から今岡がセンター前に弾き返せば、赤星は俊足をとばして三塁への内野安打。田中が四球を選び、打席には濱中。ここで前田が投げたフォークはホームベース手前でワンバウンドし、阿部がそらす間に今岡がホームインしてサヨナラ勝ち! ジャイアンツはサヨナラ負けのあとの胴上げということになった。まさに意地のサヨナラ勝ち。これだけの試合ができるのだ。来年はタイガースが胴上げをする番だ。
◎ジャイアンツ27回戦……3−2
先発ムーアは不安定な立ち上がり。初回に1死満塁から内野ゴロの間に先制点を奪われた。しかし、そのあとは苦しいがなんとか点を与えない投球。ジャイアンツの先発は若手の酒井。5回裏、勝利を意識した酒井をとらえる。代打上坂が歩き、今岡がヒットで続く。2死のあと、4番の濱中がライト線にもう少しでホームランという三塁打を放ち逆転。桧山もセンター前タイムリーで続いて突き放す。伊達がムーアの残したピンチをしのいだあとは、井川がリリーフ登板。代わったばかりの6回は村田に三塁打を打たれ、川相のタイムリーで1点差に迫られたが、7回からは3人ずつで打ち取る好投で2ヶ月ぶりの白星となる12勝目。
◎ベイスターズ26回戦……4−7
先発吉見から、初回に濱中のタイムリーで先制。2回にも浅井のタイムリーで追加点を奪うなど、いい感じの滑り出し。ところが藪が悪い癖を出す。2回裏、無死満塁から小池の内野ゴロでまず1点、中村を投ゴロに打ち取り本塁で刺したのに、投手の吉見に押し出し死球を与えて追いつかれる。石井琢の三塁打で3点差をつけられ、だめ押しは田中一のスクイズ。この回なんと6失点。4回には藪のスクイズでお返しをし、7回にも三連打で1点を加えたが、5回の裏なんか、死球で出塁した石井琢が盗塁、捕手浅井の悪送球で石井は三塁に。バックアップしたセンター赤星が三塁へまたまた悪送球、その間に石井は本塁へ帰るという、こんな失点をしていたんでは勝てるはずがない。この前日、ベイスターズ森監督は解任されて黒江代行が指揮をとるという最悪の状態のベイスターズにこういう負け方をしていたのでは、来年も優勝なんか夢のまた夢。甲子園でジャイアンツ相手に見せた執念はどこにいったのだ。14安打で4得点、併殺2、残塁10。そらあんた負けますわ。
◎ベイスターズ27回戦……0−2
ホルトの前にわずか1安打、無四球、1失策。つまりランナーは初回にヒットを打った赤星と、5回にサードのエラーで出たアリアスだけ。赤星は盗塁を決めて二塁まで進んだが、三塁も踏めず。先発川尻は7回を2失点の好投。しかし、援護がなければどうしようもない。まだAクラス入りという目標があるのにこんな試合をしていていいのか。最下位の確定した相手にあまりにもみじめすぎる。
◎ベイスターズ28回戦……7−3
先発バワーズの前に7回まで桧山の内野安打のみの1安打に封じ込められる。一方、井川は久々の先発も立ち上がりから悪い。初回に小池のタイムリーなどで2点を失い、3回にはロドリゲスにタイムリーを打たれて3失点。それでも7回までなんとかもたせた。悪いなりの投球が4回以降はできたか。ベイスターズは8回、必勝を期して木塚を投入したが、これが裏目に出た。田中、平下が連続ヒットで出塁し、代打の広澤がタイムリーでまず1点。上坂もヒットで続いて満塁に。赤星は内野ゴロ、片岡は三振とここまでかと思われたが、4番の濱中はバットを折りながらレフト前に運び、2人返って同点に追いつく。続いては桧山、センター返しで勝ち越しタイムリー。だめ押しはアリアスでレフト前に2点タイムリー。怒涛の攻撃で一気に7点取って試合をひっくり返した。井川のあとは、吉野、安藤、バルデスとつないで逃げ切り。嫌なムードを断ち切った。
◎愛すれどTigers週間MVP
投手……マーク・バルデス ジャイアンツ戦、1点リードされたところで登板し、みごとに抑えて濱中の同点ホームランのお膳立てをした。その気迫がサヨナラ勝ちを引き出したといっていいだろう。
野手……濱中おさむ 4番にふさわしい活躍だ。若いといっても、掛布が4番を打ったのも同じくらいの年だったはず。信頼してまかせていけば、それにふさわしい風格も出るだろう。チャンスで濱中にまわってきた時になにかしてくれるという期待感を持てるだけで嬉しい。
残り試合全勝でないと、シーズン通して5割にはならないという。厳しい状況だが、Aクラス入りを目指してなんとか最後まであきらめない試合をしてほしい。
弓長、伊藤、成本、遠山、西川、川俣の6投手に解雇通告がなされた。苦しい時に黙々と中継ぎや抑えで踏ん張ってくれた投手がほとんど。特に伊藤と遠山、弓長に関しては、なにかというとマウンドに上がっていたという印象が強い。若返りの方針もあるからしかたないが、成本などは一軍でのチャンスも与えられないままの解雇。次は野手が整理される番か。秋風が吹きはじめてきたという思いがする。
(2002年9月30日記)