愛すれどTigers


2002年度を振り返って

 オープン戦、ぶっちぎりの首位、そして64年ぶりという開幕7連勝。星野仙一というカンフル剤はみごとに効いた。特に、序盤戦、井川、ムーア、藪、谷中、安藤と先発投手のローテーションがきっちりと回転し、谷間を星野、横田がきっちり埋める。打線は、今岡と桧山が引っぱった。特に今岡の変身ぶりは特筆すべきもの。当初はリーグが違って戸惑っていたアリアスと片岡も、4月の終りには本来のものになっていった。
 しかし、好事魔多しとはよくいったものだ。快調に首位を走っていた4月の半ば、正捕手の矢野がホーム突入のベイスターズ相川との激突で左肩を脱臼、翌週には先頭打者として2年目のジンクスどこ吹く風だった赤星が自打球を足に当て、骨折。調子を取り戻した片岡はジャイアンツ戦で手に死球を受けて骨折。坪井も骨折。その後も打球を追ってフェンスに激突した桧山が戦列離脱、四番打者として起用され成長した姿を見せ始めた濱中はダイビングキャッチの際に着地に失敗して骨折。ホワイトは守備の際に味方と交錯して骨折。アリアスも今岡も捻挫などで一時期登録を抹消された。投手では藪が脇腹を痛めて長期戦列離脱をした。安藤も肩を痛めてシーズンを棒にふった。残された選手は怪我をした選手の背番号を帽子に書いていたが、帽子が背番号だらけになってしまっていた。全員が怪我なくシーズンを通して試合をしていたら、優勝争いを最後までしていたに違いない。片岡など、復帰後は悪いところをかばうようなバッティングフォームになってしまっていた。
 さらに、追い討ちをかけたのが、6月の変則日程であった。ローテーション投手が揃い、リズムができあがったところに飛び飛びに試合をするものだから、先発投手陣の調子が完全におかしくなってしまった。8連敗は、怪我人とローテーションの乱れの悪循環だったと思う。実際、ジャイアンツはこの変則日程のおかげで上原、桑田、高橋尚の3人を休養たっぷりで起用して開幕からの不調を脱出させている。それまではワズディンがローテーションに入っていたくらいだったからね。
 チャンスを与えられた若手がさほど期待に応えられなかったのも苦しかった。関本、中谷、曽我部、松田、藤原、梶原康らがチャンスを与えられながらそれをものにできない。中継ぎ投手陣は、昨年までフル回転していた遠山、伊藤、弓長が衰えを見せ、葛西もコーチに専念、若手の金澤、吉野、伊達、後半は谷中も加わってなんとかしのいだが、安定した成績をあげられたのは吉野くらいで、後は好不調の波が激しかった。エバンスとのトレードでライオンズから移籍してきた橋本、腰痛手術を受けて復帰してきたハンセルも期待に応えたと言い難い。面出、原田の移籍左腕組も遠山に代わるほどのものは出せなかった。全くの期待外れは福原で、昨年までの快速球が投げられず、右肩手術をすることになった。
 今年大きく開花したのは平下。一時は3番打者の重責を果たし、代打としても期待に応える結果を出せた。代打では八木、広澤がともにベテランらしいうまさと力を発揮して存在感を見せた。また、前半は二軍で調整していた川尻も後半、藪に代わってローテーション入りし、秋場の苦しい時期を支えた。
 投手陣の支えは井川だ。前半戦の活躍は日本を代表する左腕エースとさえいわれた。ただ、後半、調子を崩して中継ぎ登板もした。来季こそは年間通して信頼感のあるエースとなってほしい。新外国人のムーアとバルデスは期待通りの働き。来日1年目としては文句のない成績だろう。先発のムーア、抑えのバルデスという形が定着したのは大きい。
 ウィークポイントはショートか。田中、沖原、藤本、関本……。日替わりで起用されたそれぞれの選手は、その選手でなければという売り物を示すことができずに終わってしまった。
 葛西、星野、伊藤、遠山が引退、カーライル、横田、舩木、弓長、部坂、ハンセル、成本、山岡、川俣、面出、西川、根本、ホワイト、吉田が解雇、御子柴、山脇、湯舟、中山の各コーチも退団することになった。FAやトレード、テスト、ドラフトで入団してくる選手の顔ぶれがどうなるかはわからないが、星野監督はタイガースを変えるために、大きな手術をしようとしている。西本、水谷、達川の新コーチが早くも決定、秋季キャンプでその手腕を早くも発揮しそうだ。アリアスの再契約は微妙だそうだが、ラッキーゾーン撤廃後、初めて30本を超えるホームランを放ったその実力を考えると、たとえ二軍スタートとなってもよいから残留させるべきだろう。
 タイトルホルダーは、井川が奪三振王、赤星が2年連続の盗塁王。来季はさらに上を目指してほしい。
 とにかく、今年のシーズンは楽しかった。たとえBクラスが決定した後でも、まだあきらめずに食らいつく姿勢が見えたからだ。優勝というものを意識して戦うということのプレッシャーを経験した選手たちが、来季はどれだけ精神的にも鍛えられた姿を見せてくれるかが楽しみである。

2002年度のタイガースの戦績。66勝70敗4分。勝率.485。セントラルリーグ4位。

◎愛すれどTigers年間MVP
投手……井川慶 後半戦、調子を崩したとはいえ、防御率、勝利数ともリーグ3位、奪三振王にも輝き、リーグを代表する左腕エースに成長した。昨年に続いての選出であるが、それだけの成果を残したのである。
野手……今岡誠 開幕から閉幕まで、今岡は常にチームの先頭に立っていた。プロ入り初の三割を打ち、セ・リーグの右打者では最高の打率を残した。最後まであきらめないという星野イズムを、今年最も体現した選手ではなかったか。

 FAで金本(C)、中村(Bu)を、スワローズを退団したがっているペタジーニを獲得しにかかっているようだが、私はあまりそういう形での補強はしてほしくない。それよりも濱中を4番にすえてじっくりと1年間やってみてほしいのだ。よその主力をとっかえひっかえ連れてくるなんて、まるで某「球界の盟主」チームのようで、嫌なのだ。関本、桜井、喜田、藤原、梶原康、浅井、中谷といった選手たちが主力として活躍してこそ、2年ぶりの二軍日本一の成果があがったと言えるのではないだろうか。

(2002年10月21日記)


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