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新コーチに求めるもの

 来シーズンに向けて、秋季練習が始まった。新たに加わった達川一軍バッテリーコーチ、西本一軍投手コーチ、水谷二軍打撃コーチも日本シリーズ期間をのぞいて練習に参加、指導を始めているようだ。
 スポーツ紙では、西本コーチがノックバットを持っている写真が大きく掲載されていたが、実際のプログラムはまだ佐藤コーチとトレーニングコーチが組んだもので進めているそうである。それはそうだろう。西本コーチは指導者としてユニフォームを着るのはこれが初めてなのだから。しかし、水谷コーチと達川コーチは、指導者としての経験が豊富である。特に達川コーチは3年前はカープの監督をしていたのだ。他チームの監督経験者がコーチとしてタイガースのユニフォームを着た時、タイガースはよく優勝している。1962年の青田コーチ、1985年の土井コーチがそうだ。ジンクスとはいえ、何か期待してしまう。
 さて、この3人のコーチに共通するものはなんだろうか。それは、練習熱心で知られているということだ。水谷、達川両コーチはカープの出身である。カープは伝統的に練習をよくする。もっとも練習のし過ぎで故障者が多いという話もあるけれども。西本コーチはジャイアンツ時代、他の選手たちが遊びに誘っても断わって一人練習に励んでいたというエピソードを持つ。
 星野監督がこの3人にコーチ就任を依頼したのは、その練習熱心なところを買ったのではないかと思われる。タイガースの選手は12球団のうちでも練習量が少ないといわれている。実際、カープやバファローズの選手たちの体格のたくましさを見れば、タイガースの選手たちが何か頼りなく見えてしまうのだ。線が細いというのか。打力の弱さなど、全体にパワー不足であるという印象があるのは否定できない。
 1年間タイガースを見てきた星野監督は、精神的にも肉体的にもスタミナが不足していることを痛感したのだろう。この1年は、野村監督が残していったスタッフと、岡田二軍監督の昇格に備えたコーチの布陣が敷かれていた。星野監督の意図が通じにくい面もあったのではないか。山脇、湯舟、御子柴といったタイガース生え抜きのコーチを解任したのも、タイガースの野球に慣れ切ったコーチではなく、他チーム出身のコーチを持ってくることでよい刺激をあたえ、そして、徹底的に練習をさせようという考え方から来ているように思う。
 だから、3人の新コーチにはタイガースの選手に練習の大切さをわからせてほしい。若手選手のなかには他チームの主力から見たらほとんど実績らしいものがなくても、関西のスポーツ紙で大きくとりあげてもらえるために、まるで自分が一流選手になったようにふるまう者もいるときく。そういう選手が本当に一人前になるためには、このようなコーチの指導が必要なのだ。
 それが、私たちファンが新コーチたちに求めるものなのである。本当の意味で強いチームになるために、タイガースの選手を鍛え上げてほしい。

(2002年10月28日記)


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