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金本加入に思う

 広島東洋カープの4番打者、金本知憲外野手がフリーエージェント宣言をし、交渉解禁後すぐに入団が決定した。昨年の片岡選手が涙を流しながら移籍を決意したのとは好対照に、非常にすっきりとしたものだった。これは、カープにはFA宣言をした選手とは再契約をしないという方針があり、宣言をした時点でほぼ移籍が確定しており、それ以前から高い関心を示していたのがタイガースであったというところからくる。もしパ・リーグの球団が強く入団を希望していたら、金本は迷わずそこと契約していたのではないだろうか。それくらいわかりやすく、すっきりとしたFA移籍だった。
 とはいえ、タイガースに本当に必要なのは強打の内野手ではなかったかとも思う。外野手である金本を獲得したことにより、ただでさえ激しい外野手の定位置争いがさらに激化する。実際、坪井は弾き出されるようにファイターズへ移籍することになってしまった。FAしたが結局どこからも声がかからずに残留が決まった桧山、3年連続盗塁王がかかる赤星、将来の4番と期待される濱中、強肩強打の曽我部……。層が厚くなるという利点もあるが、チャンスが与えられなくなる選手も出てくるだろう。
 星野監督の意図はどこにあったのか。ひとつには、ジャイアンツへの牽制ではなかったかと思われる。金本ほどの強打者はどのチームでもほしい。特にジャイアンツは、他チームの4番がFAするたびに、落合、広澤、清原、江藤と横からかっさらうように契約していった。FAではないが石井浩もバファローズの4番打者であった。今回のタイガースではないが、そんなに一塁手ばかり獲得してどうするのかと思うほどである。このオフもペタジーニを破格の年棒を提示して獲得した。ほっておけば、金本も餌食になっていただろう。それを食い止めるためにあえて獲得の意志を表明したということなのではないだろうか。
 もちろん、3割30発30盗塁を記録したことのある金本という選手が加入することは、チームにとっては大きな意味を持つ。猛練習で知られるカープでつちかってきたものをタイガースの若手に伝えてもらえるという期待もある。なによりも、チャンスに弱い打線に格好のポイントゲッターが加わったことは、優勝を狙うという意味において大きなものがある。
 そう、金本を獲得するということは、星野監督が本気で優勝を狙っているという気持ちの現れなのだ。ジャイアンツがやみくもに他チームの4番をかっさらうのと、意味が違う。万年Bクラスのチームが生まれ変わるのだという意志表明なのだ。
 大胆なトレードと思い切ったドラフト戦略で、タイガースは生まれ変わろうとしている。その象徴として、金本がいる。目指すのはただ優勝のみ。万年Bクラスの負け犬が、勝利の雄叫びをあげる猛虎に戻る日がきっとくる。そう、信じたい。

(2002年11月26日記)


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