愛すれどTigers


伊良部投手入団

 前テキサスレンジャーズの伊良部秀輝投手の入団が正式に決定した。スポーツ新聞などでは入団を確実視されていたわけだが、果たして本当に日本球界に復帰するのか半信半疑であっただけに、今回の発表でけりがついたというわけだ。
 伊良部投手こそ今回の投手補強で最も期待できる選手であることに違いはない。肺血栓という病気にかかりさえしなければ、今シーズンはレンジャーズのクローザーとして最後まで活躍していたはずである。つまり、現役バリバリのメジャーリーガーなのだ。しかも、日本球界になじむのに時間のかかる新外国人と違い、伊良部はもともとは千葉ロッテマリーンズのエース。しかも出身は大阪。病気さえ完治していればこれほど頼もしい投手はいない。
 一部では、伊良部の態度の悪さを危ぶむ見方もある。しかし、私はその点に関しては心配はしていない。例えば、マウンドにつばをはいて非難されたヤンキース時代の事がすぐに槍玉にあげられる。が、なれないニューヨークに来たばかりでファンの期待というプレッシャーに押しつぶされそうになった彼の心境を考えてみたい。たまったストレスをはらす一つの方法としてかれが無意識のうちにとった行動なのだと私は思っている。その後、エクスポス、レンジャーズと移っていったが、かれのわがままや態度の悪さに手を焼いたなどという報道は一つもなかった。いやそれどころか、マリーンズ時代にかれが問題児だったといわれていた記憶がないのだ。唯一問題になるのは大リーグ挑戦という時に球団ともめたことだが、これも本人の希望するヤンキース入りに対し、球団がパドレスへのトレードを先に決めていたことから生じたトラブルで、千葉ロッテ球団がもう少し上手に対応していればあのような騒ぎは起こらずにすんだはずである。伊良部をあたかもトラブルメーカーのように扱う新聞記事は、彼の一面だけをとらえたものに過ぎないとかねてから思っていた。ましてや、あれほど熱望して入団したヤンキースからのトレード、一時は忘れられたような存在になりかけていたとろからレンジャーズのクローザーとして復活した精神力など、アメリカで彼が大きく成長したことは容易に想像できる。
 彼がマリーンズに在籍していた頃、ライオンズの4番打者であった清原選手との対戦は、「平成の名勝負」とうたわれたものだ。時は過ぎ、もはやベテランの域に達した二人が、甲子園球場でタイガースとジャイアンツという「伝統の一戦」で再びあいまみえる。片方は元大リーガーという実績を背負い、もう片方は全国的な人気チームの主砲として。これでわくわくしなければ嘘である。
 毎年のようにとっかえひっかえやってくる外国人投手とは違う。伊良部の実績はまさに現役大リーガーの名にふさわしいものだ。あの豪腕が甲子園で唸る。その日が待ち遠しい。

(2002年12月9日記)


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