横浜スタジアムでの開幕３連戦、優勝候補というプレッシャーのせいか、選手の動きはいくぶん硬かった。初戦はおとしたものの、残りは相手のミスにつけこみ２連勝。クリーンアップトリオは期待ほどの働きはみせられなかったが、アリアス、矢野、藤本の下位打線が好機に打ち、先発投手が苦しくても、吉野、ウィリアムスといったリリーフ左腕が見事な投球で締めくくる。圧倒的な強さはないものの、まずは順当に勝ち越し。滑り出しは上々である。
◎ベイスターズ１回戦……２−４
先発は井川と吉見。井川は速球が走らず、変化球を多投。審判もハーフスイングをストライクにとらず、井川は「あれがボール？」という表情をよく見せた。２回裏、先頭のＴ・ウッズを警戒し過ぎて歩かせ、小川のファーストゴロも桧山が打者走者にタッチしにいったが届かず、ランナーをためる。古木は三振にうちとったが、高めの球を金城に弾き返される。センター赤星はいったんグラブにおさめたものの、球を弾いてしまう。この落球、記録はヒットだったが、大きなエラーである。かくて先取点を奪われる。一死後、吉見はレフト前に落とすタイムリーで２失点目。続く３回裏は、先頭の種田と続く鈴木尚にヒットを打たれ、Ｔ・ウッズのタイムリーで３失点目と点差が開く。吉見には２回表に二死から矢野と藤本の連続ヒットでチャンスを作ったものの、井川が三振で生かせず。あとはいい当たりもことごとく野手の正面という不運もあり、流れはベイスターズに。７回、疲れの見え始めた吉見からアリアス、矢野が連続四球。ここで代打は広澤。ファウルで粘りに粘った１１球目、センター前に弾き返してまず１点を返す。そして代打の神様八木が登場。初級打ちはセンター前に抜けたかという当たり。しかし、ショートの石井が横っ跳びで好捕。二塁封殺となる。しかし、今岡はしぶとく右中間に打ち返し、１点差と迫るタイムリーに。反撃もそこまで。井川のあと、谷中、吉野とつないで点差を広げなかったが、８回裏一死から登板した金澤がＴ・ウッズにだめ押しのホームランを打たれて万事休す。９回表はホワイトサイドに手も足もでず、悔しい開幕敗戦となった。
◎ベイスターズ２回戦……７−３
メジャーリーグから復帰の伊良部が先発。しかし、初回、いきなり石井、鈴木尚を歩かせ、Ｔ・ウッズ、佐伯に連続で外野の頭を越されるタイムリーを打たれ、２失点。しかし３回、ベイスターズ先発の豪腕ドミンゴから赤星が内野安打。ランナーを気にするドミンゴのボークで二塁に進んだところを金本が移籍初安打となるレフト前ヒットで返し、まず１点差に。濱中にはストライクが入らず四球。桧山が片手でバットを振り切る好打でセカンド種田のグラブを弾く二塁打。これで同点。アリアスが歩いて満塁に。矢野の打球はレフト前へ。二者が帰ってこの回一挙４点。３回裏、佐伯にホームランを浴びて１点差と迫られた伊良部だったが、５回には三者三振と尻上がりによくなり、あと一歩でとどまる。６回には福盛から二塁打の藤本をおいて赤星がタイムリー、９回には富岡からアリアスがとどめの２ラン。７回途中から、吉野、ウィリアムス、ポートとつなぎ逃げ切った。吉野とウィリアムスは左の横手投げでベイスターズの左打者を翻弄。今年のリリーフ陣は頼もしい。
◎ベイスターズ３回戦……５−３
先発はムーアと若田部。初回、先頭の石井の一塁ゴロを桧山が弾いてしまう。二進した石井を鈴木尚がセンター前ヒットで返し、ベイスターズが先制。しかし、２回表、すかさず追いつく。二塁打の桧山をアリアスがレフト前ヒットで返して同点。４回表には、矢野、藤本、ムーアの三連打で満塁としたあと、今岡がライトフライを打つ。三塁ランナーの矢野はタッチアップをしながら三塁に帰ってしまう。ところが二塁ランナーの藤本は飛び出ししまっている。捕手の中嶋があわてて二塁に投げるが、その間に矢野が生還、勝ち越した。ミスはあったが、ベイスターズの連係プレーの焦りで点をもらった感じ。５回裏、勝ちを意識したムーアは金城、中嶋の連続二塁打で同点に追いつかれ、石井のタイムリーで逆転された。しかし、６回表、二塁打のアリアスをおいて打者は矢野。ピッチャーゴロにうちとられたが、若田部がアリアスを封殺しようと三塁に投げ、これを三塁手の古木が取れず後逸。アリアスは同点のホームを踏む。続く藤本がライト前へ弾き返して逆転タイムリー。ムーアは７回途中で降板したが、谷中をはさんでウィリアムスが最後まで投げ抜き完璧なリリーフ。９回にはバントヒットの赤星が盗塁、金本の二塁ゴロの間に三進。濱中のショートゴロで一気に本塁をつき、捕手中村の股間をすりぬける好走塁でだめ押しの得点。先発が崩れてもリリーフが試合を作り、打線が相手のミスを逃さず食らいつくという野球で２連勝である。
◎愛すれどTigers週間ＭＶＰ
投手……ジェフ・ウィリアムス 文句なし。一人の走者も許さない完璧リリーフ。大きく流れるスライダーは右打者も打てない。
野手……矢野輝弘 タイガースの今季初安打を放った開幕戦、チャンスでしっかり打ち返す堅実な打撃で．４１７の素晴らしいスタート。捕手が乗れば投手もよくなるのだ。
相手のミスが重なった幸運な連勝といえるが、そのミスにつけこんで得点をしなければ、勝ち星は手に入れられない。初戦は下馬評の低いベイスターズがのびのびしていたが、２戦目からはタイガースの選手の動きもよくなってきた。金本は初戦こそノーヒットだったが、２戦目以降はチャンスにしぶといバッティングで貢献。４番の濱中だけはまだヒットを打っていないが、長い目で見よう。打線には波がある。上位が打てない時は下位が、下位の当たりが止まったら上位が打つという入れ代わりでいっていただければよろしいのです。
次節は相性のいいカープと戦力ダウンで力の出ていないスワローズの連戦。カードとしては恵まれている。ここで勝ち越せば、波に乗れるだろう。
（２００３年３月３１日記）
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