甲子園球場のカープ戦は３連敗。神宮球場のスワローズ戦は２勝１敗。カープ戦は楽勝のケースが逆転負け、あるいは投手の好投に打線が応えられないという形で、歯車が噛み合っていない感じだった。スワローズ戦も井川と福原はよいが、リリーフ投手に不安を感じさせる試合が続いた。打線はようやくつながりを見せてきたので、投手陣、特にリリーフの調子が上がってくれれば、浮上の目はある。今節は２勝４敗。いわゆる借金は１だが、順位は３位。だんごレースにカープが頭一つ抜けているという感じの展開になっているが、カープの勢いもいつかは止まるだろう。その時にいい位置につけておくような戦いができればよいのだが。
◎カープ１回戦……６−９
初回、カープの先発高橋から今岡がいきなりレフトスタンドに叩き込む今季２本目の先頭打者ホームランで先制。しかし、２回表の伊良部は球が甘く入り、シーツ、前田に連打を浴び、１死後、野村の二塁打で逆転される。さらに石原にもセンター前に打ち返され３点目を献上。しぶといのはタイガース打線だ。２回裏、矢野の二塁打で１点差に迫ると伊良部もセンター前に運んで同点に追いついた。さらに３回裏、アリアスがセンターに運ぶ特大のホームランで勝ち越し。ここからが伊良部の本領と思いきや、いきなり先頭の新井を歩かせ、野村にもセンター前に打ち返される。石原のバント、高橋のショートゴロで２死をとるが緒方を歩かせ満塁に。嶋のタイムリーで同点に追いつかれた。三塁にランナーは止まったと思っていたら、伊良部が本塁のバックアップを怠り、金本の送球がそれる間に三塁走者を返してひっくり返される。ラロッカを一塁ゴロに打ち取ったと思ったが、伊良部の一塁ベースカバーが遅れ適当に出したグラブの下をすりぬけて送球はファウルグランドに。これでさらに１点。たまらず牧野に投手を代えたが、流れは止まらない。シーツを歩かせ、前田の走者一掃のセンターオーバーの二塁打でこの回６失点となる。牧野はこのあと立ち直り、続いた江草も無失点で切り抜けたが打線は調子を取り戻した高橋の前に三振の山。最終回、永川からアリアスがこの日２本目の２ランを放ったが、反撃もそこまで。伊良部は翌日、自ら志願して二軍落ち。志願せずとも２試合連続のみっともない投球には再調整が必要だ。
◎カープ２回戦……１０−１２
すさまじい点の取り合い。まず１回裏、河内から今岡が２試合連続の先頭打者ホームランを今度はライトスタンドに放り込む。さらにこの日３番の関本が起用に応えてセンターへの特大ホームランで続く。金本が二塁打で、濱中がヒットでつなぎ、アリアスが２試合連発の３ラン。この５点で勝負は決したと思われた。前川は３回にシーツのタイムリーで１手を失ったものの、前回よりも内容はよい。３回裏、藤本のタイムリーで河内をＫＯ。カープはマウンドに林を送りだす。矢野の併殺で突き離せなかったのが痛い。そして５回表、勝利投手を意識した前川が突如崩れる。絶好調の嶋に死球を与え、シーツのヒットと前田の四球で満塁に。洗いは三遊間を破る二塁打で２点を返される。さらに野村にも右中間に二塁打を打たれて１点差に迫られた。ここで岡田監督は前川をおろしてモレルを登板させた。この回は無失点に抑えたものの、嶋を塁に置いてラロッカの三塁打で同点に、続くシーツはセンター前に弾き返して逆転。タイガースは三番手の澤崎を攻める。６回裏、代打の鳥谷の甲子園初安打となるレフト線への二塁打でチャンスを作る。４番手菊地原から赤星がセンター前にタイムリー。同点に追いついた。７回表、タイガースの３番手はリガン。緒方にセンターバックスクリーンに軽々と叩き込まれてまた勝ち越しを許す。７回裏、佐々岡が登板。二塁打のアリアスを藤本がライトオーバーの三塁打で返し、また同点に。続く矢野の犠牲フライで再び勝ち越した。こうなったら逃げ切り体勢だ。ウィリアムス、安藤の必勝リレー。ところが、安藤が乱調。緒方の二塁打で同点に追いつかれ、嶋の二塁打でひっくり返され、シーツの２ランで突き放された。唖然呆然の安藤。最終回、永川から１点は返したが、反撃もそこまで。リリーフエースと目される安藤が打たれたのはきつい。
◎カープ３回戦……０−１
ベテランの藪と若い大竹の見ごたえある投手戦。藪は２回表に野村の二塁打で１点は失ったけれども、７回まで完璧な投球。ムキになって真ん中に投げ込むのではなく、ボール球をうまく使って打線を手玉にとる。一方の大竹は荒れ球だが、要所で力のある速球を投げ込み、タイガース打線はチャンスを作ったものの決定打を出すことができない。５回の矢野など、２ストライクからど真ん中に速球を投げ込まれて見逃しの三球三振。狙い球がしぼれない。８回裏、菊地原が赤星の顔面を擦るような死球。危険球退場となる。赤星はそれでも後退を拒み、盗塁を敢行するが死球の影響かいつもの加速がなく盗塁死。急遽マウンドに上がった天野から片岡が二塁打。代走は葛城だ。金本の飛球はレフトスタンドに飛び込むかと思われたが、前田が好捕。葛城は捕球されることは全く想定せず既に三塁をまわっていて、二塁への返球でダブルプレー。リガンとウィリアムスがカープ打線を抑えて打線の反撃を待ったが、最終回は永川に抑えられあえなく３タテを食らった。タイガースは最下位に転落。
◎スワローズ１回戦……６−５
井川が連敗をストップさせた。初回、石川から今岡が先頭打者ホームラン。赤星と片岡が連打でチャンスを作り、金本が犠牲フライでさらに１点追加、そしてアリアスが２ランをレフトスタンドに。初回の４点がきいた。井川は２回に古田の２ランで２点差とされるが、そのあとは立ち直り、安定した投球でスワローズ打線を寄せつけない。そして７回表、今岡と赤星が連打でチャンスを作ると、片岡がライト前のタイムリーで待望の追加点。さらに金本がセンター前ヒットでつなぎ、桧山が体勢を崩しながらもライト前にもっていってさらに１点を追加した。井川は７回裏に古田のタイムリーで１点を失った。限界が近いと思わされたが、完投させたいという恩情からか９回のマウンドにも立つ。ところが、ヒットの鈴木を塁に置き、稲葉にまさかの２ランを打たれて１点差に詰め寄られる。城石にもヒットを許し、ここで降板。マウンドには汚名返上を賭けて安藤が上る。しかし、土橋にヒットを打たれ宮本には死球を与え、２死満塁として降板。自信回復には至らない。最後はウィリアムス。岩村にフルカウント。最後の球は低めいっぱいに決まり、三振でからくも逃げ切った。
◎スワローズ２回戦……６−２
スワローズの先発は鎌田。２回表、２死から藤本が二塁打。矢野は敬遠。打席には福原。ところが鎌田は福原にストライクを投げられず歩かせて満塁としてしまう。ここで頼りになるのは今岡。内角高めのボール球をレフトフェンス直撃の二塁打。まず２点先制だ。福原はこれまで以上に速球がのび、初回宮本に三塁打を打たれながらも岩村、ラミレスと連続三振に切ってとる。７回投げて５安打無失点でリガンに後を託した。６回表、膠着した試合をアリアスが動かす。センターバックスクリーンに飛び込むソロホームランだ。さらに８回、山部から金本が二塁打を放ち、四球などで三塁に進むと交代した河端がワイルドピッチでだめ押しの１点。９回には金本のセンターバックスクリーンへのホームランで２点を追加した。９回裏、ウィリアムがマウンドへ。先頭打者をサード片岡のエラーで許してしまう不運もあり、ランナーをためて城石、土橋の内野ゴロで返されて２点を失う不安定な内容。さらにまた満塁のピンチを迎えるがラミレスをショートゴロに打ち取り辛うじて逃げ切った。タイガースは５割に勝率を戻した。
◎スワローズ３回戦……６−７
下柳が初回から景気よく打たれる。先頭の佐藤真から城石、岩村と３連打で満塁。鈴木にセンター前に弾き返されて２点、続く古田にも二塁打を打たれてさらに２点を失った。しかし、打線は好調。新人の川島から４回に藤本が２年ぶりとなる２ランをライトスタンドに持っていくと、動揺したか矢野を歩かせる。下柳はファウルで粘り四球を選ぶ。今岡のセンター前ヒットでさらに１点を返して１点差に。５回表には片岡のレフトスタンドへの同点ホームラン、桧山のライトへの勝ち越しホームランでとうとう逆転。ところが、下柳はその裏、鈴木に軽く打たれた打球がレフトスタンド最前列に飛び込む逆転ホームランで自ら勝利を手放してしまう。その後はタイガースがモレル、吉野、牧野のリレーで後続を断ち、スワローズも杉本、石井の継投で逃げ切り体勢に。９回表のマウンドにはストッパー五十嵐亮が。しかし、ここ一番では今岡だ。センターへの同点ホームランを放ち、ここから一気に勝ちにつなげたい。９回裏のマウンドにはウィリアムス。ところが、岩村を歩かせラミレスにヒットを打たれてピンチを作る。打席にはこの日４安打の鈴木が。鈴木の打球はレフト前に。岩村が生還し、まさかのサヨナラ負け。打線が助けても投手が踏ん張れない悪循環は、甲子園のカープ戦を思い出させた。
◎愛すれどTigers週間ＭＶＰ
投手……藪恵壹 勝ち投手にはなれなかった。しかし、最高の投球内容だった。次回の先発もこのようにボール球をうまく使ったクレバーな投球をすれば、打線が今度は助けてくれる。
野手……今岡誠 まいった。先頭打者ホームランの連続、そしてここ一番の快打。今岡が出塁することにより、打線が機能していくのだ。
次節はドラゴンズ、そしてジャイアンツとここまで勝ち越しているチームとの対戦。全チームと一通りあたり、課題も見えてきた。代走に秀太あたりのユーティリティープレイヤーが必要だし、右の代打に沖原あたりの確実性のある打者がほしい。抑え投手は……。今の陣容を辛抱して使うしかないのか。杉山など、昨年の安藤のように大化けしてほしいのだが……。
（２００４年４月１９日記）
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