甲子園でのドラゴンズ戦は、1勝2敗と負け越したが、連夜の延長戦でまだ食らいついていく姿勢を見せた。続く甲子園のジャイアンツ戦は、初戦など疲れが見えて動きも鈍くなってしまったが、1勝2敗で年間の負け越しなしを早くも決めた。そして、金本が三宅秀史さんの持っていた連続試合フルイニング出場記録を書き換える701試合を甲子園で達成。タイガースOBである三宅さんも招待されて金本に花束を渡して祝福した。今節は2勝4敗とまた1歩後退。7月の通算成績は2つの負け越しに終ったけれども、8月のスタートも黒星先行となってしまった。
◎ドラゴンズ18回戦……2−6
ローテーションをずらしての登板となった下柳だったが、初回いきなりショートゴロを藤本がこぼしたことでリズムが狂ったか、続く井端にはライト前に落ちる鈍い当たりのヒット、立浪は三遊間を破ったレフト前タイムリーで先制を許した。福留、アレックスと連続死球。アレックスの死球は押し出しとなり2点目のホームインを許した。英智には一塁の頭をワンバウンドで越す2点タイムリー。一挙4点先制されたのは苦しかった。ドラゴンズの先発は川上。得意のスライダーに手を焼き、2回裏にアリアスのレフトスタンドへのソロホームランで1点は返したもののあとが続かない。3回には先頭の藤本が三塁打で出塁するが、下柳、今岡と連続三振、赤星もショートゴロに打ち取られてランナーを返せなかった。下柳は2回以降は立ち直り5回までランナーは出しても点は許さないいつものピッチング。6回には金澤が登板、しっかりと抑える。その裏、赤星の二塁打で1点を返して2点差としたものの、7回表に金澤が荒木、井端に連打を食らい福留の走者一掃の二塁打で2点を奪われた。ドラゴンズは8回から落合、岩瀬とつなぎ、逃げ切られた。8回に登板した藤川が久々の好投を見せたのだけが救いか。初回のエラーから始まる大量失点が痛かった。
◎ドラゴンズ19回戦……9−10
杉山がまずつかまった。初回、井端、立浪に連続ヒットを打たれ、福留を歩かせ1死満塁。アレックスのセカンドゴロの間に1点、英智の初球は暴投となり2点目。ミスによる失点が痛い。しかし、この日は打線も踏ん張った。苦手の山本昌から今岡と赤星の連打と金本の四球で1死満塁。桧山がセンター前に弾き返し、2点を奪い返して追いついた。それでも杉山は不安定な投球を続ける。2回のピンチは乗り切ったが、3回先頭の立浪にライトスタンドへ勝ち越しのホームランを許し、四球とヒットでピンチを広げて渡邊に右中間スタンドに運ばれる3ランを打たれた。前日までのタイガースならここでくしゅんとなっていたところだが、この日は違う。3回裏、四球の関本を塁に置き金本が2点差と迫るレフトスタンドへの2ランを放った。二番手の牧野は5回につかまる。2死二三塁のピンチをつくり、荒木にレフトの頭上をこえる二塁打を打たれて2点を追加された。その裏、タイガースも負けてはいない。1死一二塁からアリアスが左中間を破る2点タイムリー二塁打。藤本はライトフェンス直撃の三塁打でアリスを返し1点差と迫る。ここで代打の八木がサードゴロに打ち取られてあと一歩で追いつけず。それても山本昌をこの回限りで降ろした。このあと、タイガースは三東、桟原、ウィリアムスの継投でドラゴンズの得点を許さず、ドラゴンズも岡本、若手の高橋聡、バルデスとつないで8回までは1点差の膠着状態が続いた。試合が動いたのは9回表。タイガース六番手のマイヤーズが柳沢にプロ入り初となるソロホームランを打たれて2点差とされた。ドラゴンズはクローザーの岩瀬を投入したが、タイガース打線はあきらめない。1死二三塁のチャンスに桧山が一塁渡邊のグラブを弾く2点タイムリー! とうとう同点に追いついた。試合は延長戦に入り、タイガースは安藤をマウンドに送る。安藤は10回表を完璧に抑える。ドラゴンズは長峰が登板。2死一二塁と攻め立てたが、野口が三振でサヨナラならず。11回表、力つきたのは安藤だった。台風が近づいてきて風がいつもと違う中、アレックスのショートフライは鳥谷が目測を誤り捕れない。金本の前に落ちる二塁打となった。英智は三塁線にバントしたが、安藤がダッシュの方向を間違えて捕れず、関本が押さえて一塁に送球したがセーフ。渡邊がセンター返しでアレックスを迎え入れた。とうとう決勝の1点を入れられた。安藤は足を痛めて藤川にマウンドを譲る。藤川は三者三振で後続を断ち切り11回裏に希望を持たせた。ドラゴンズは落合を投入。2死一二塁と攻め立てたが、藤本が三塁ゴロを打たされて試合終了。5時間37分の熱闘は優勝を目指す首位ドラゴンズがものにした。
◎ドラゴンズ20回戦……8−7
ドラゴンズの先発ドミンゴは初回から荒れ模様。死球の片岡を塁に置き、金本が2試合連続となる先制2ランをライトスタンドに叩き込む。さらに桧山のヒットとアリアスの死球でチャンスを作り、矢野がライト前に運んでさらに1点を加え、いきなり3点を先制した。井川はランナーは出しながらも要所を締める投球で踏ん張ったが5回につかまった。荒木の2ラン、アレックスの3ランであれよあれよという間に逆転を許してしまった。6回表にも1死一二塁から井端にライト前に運ばれてさらに1点を追加される。7回は三東が抑えて打線の奮起を待った。荒れ球のドミンゴに手を焼いていた打線も、7回裏先頭の藤本がレフトポール際に飛び込むソロホームランを打って反撃開始。2死から赤星のピッチャー返しの打球は二塁荒木がバックアップしたが捕れずエラー。関本がボールをよく見て四球を選び、金本が一気に逆転とするライトスタンドへのこの試合2本目となる3ランホームラン! 勢いからこのまま逃げ切れるかと思ったが、8回、好調の藤川を投入しながら1死から藤本が井上のショートゴロを弾いてしまう。エラーのランナーを置いて荒木にヒットを打たれてピンチを広げた。井端にもレフト前にもっていかれ代走の俊足土谷がホームインして同点に。このあとタイガースはウィリアムス、安藤、マイヤーズとつなぐ。12回表、マイヤーズは先頭の渡邊にヒットを許したが柳沢のバントをうまい守備で併殺に切ってとってピンチを逃れた。ドラゴンズは岡本、バルデス、久本の継投でタイガース打線を抑える。12回裏、ここしかないという場面で落合を投入してきた。先頭の関本がヒットで出塁すると、岩瀬にスイッチ。この岩瀬が金本の左手首を直撃する死球を与える。画面蒼白の金本はなんとか一塁に歩く。連続試合フルイニング出場の記録がかかった場面でこういう危険球を投げたのだから、岩瀬の動揺は大きかったのだろう。桧山、アリアスとライトフライに打ち取られたが、矢野はその動揺を逃さず甘くはいる球をライト前にきっちりと運び、代走の上坂がホームインして4時間45分の死闘に終止符を打った。連夜の延長戦で、ヒーローインタビューの矢野の表情にも疲れが見えたが、首位のドラゴンズに3連敗はできないという昨年のチャンピオンチームの意地を見せてくれた。
◎ジャイアンツ19回戦……1−8
2試合連続の延長戦で心身ともに疲れ切っていたのか、タイガースの野手の動きの鈍さが目についた。ホッジスは初回に清水、3回に阿部と2本のホームランでリードを許し、4回には2死からランナーをためて二岡にセンター前に弾き返され、5回3失点でマウンドを降りた。ジャイアンツの高橋尚も初回は不安定。今岡のヒットと関本の四球で2死一二塁。ここで桧山はライト前にヒットを打つ。今岡はゆっくりしたペースでホームを突き、阿部捕手のブロックした足に阻まれるままでホームをなんとか陥れようという貪欲さも見えずアウト。ここで同点にしておいたら、このあとの展開も大きく変わっていただろうが、高橋尚を安心させるようなプレーだった。6回表、二番手の三東が3四球で1死満塁とし、阿部の2点タイムリー。急遽桟原にスイッチしたが、投手の高橋尚にもレフト前にタイムリーを打たれもう1点。仁志のショートゴロを関本が取りにいこうとして藤本とぶつかる醜態で内野安打とし、清水のファーストゴロをアリアスが弾いてしまいこの回4点目を与えてしまった。6回裏、矢野のタイムリーで完封は免れたものの、直後の7回表に桟原がペタジーニにだめ押しのホームランを打たれてとどめを刺された。ジャイアンツは岡島、中村とつないでタイガース打線を抑え切った。それにしてもミスが多すぎた。前日の死球で左手を痛めている金本が右手1本で2安打した、その闘志が他の選手に伝わらないほど疲れ切っていたのか。ジャイアンツの選手は元気そうだったものなあ。
◎ジャイアンツ20回戦……4−3
2番に藤本、9番に赤星を入れる打線の組み替えで臨んだこの試合、先手をとったのはジャイアンツ。初回、先頭の仁志が福原からセンター前ヒットを放ち、清水のショートゴロの間に二進。ローズ三振のあと、小久保の平凡なサードゴロは関本のグラブの下をするりと抜ける限り無くトンネルに近いエラー。これで1てんを失った。ジャイアンツの先発は桑田。安定したコントロールで3回まで得点できない。しかし、福原が2回以降は速球とカーブをうまく組み合わせてジャイアンツ打線を手玉に取り流れを引き寄せる。4回裏、関本がレフト前ヒットで出塁すると、金本が意表をつくセーフティバント。続く桧山の打球はセンターバックスクリーンの手前まで飛んだが、ローズのファインプレーでアウトに。しかし、この間にタッチアップで関本は三進。矢野の打席で桑田がワイルドピッチ。関本が生還し難なく同点に追いついた。矢野はピッチャーゴロに倒れたが、一塁があいているのでアリアスは敬遠。打席には投手の福原。福原はよく球に食らいつき一二塁間を破るヒットで金本を迎え入れて逆転した。金本のバントヒットが呼んだ執念の逆転劇だ。7回裏、三番手のコーリーから片岡が四球を選ぶと、今岡がセンターのフェンス上部に当たる二塁打で代走鳥谷を返して追加点を奪う。続く藤本は一二塁間のゴロ。仁志はよく押さえたが一塁には間に合わないのに焦って送球し、これが悪送球となって今岡が生還、3点差をつけた。8回からは安藤が登板。しかし、小久保、ペタジーニのソロホームランで1点差まで迫られる。阿部を迎えたところでウィリアムスを投入し、三振に切って取った。8回裏、シコースキーがアリアスの頭部に死球を与えて退場になるなど、穏やかでない雰囲気が流れたが、9回表、ウィリアムスがジャイアンツの反撃を断ち切って逃げ切り、金本の700試合連続フルイニング出場達成の記録に花を添えた。
◎ジャイアンツ21回戦……1−3
先発金澤は初回いい立ち上がりを見せながら、2回にエラーで自滅してしまった。先頭の小久保を三振にとったが矢野が後逸してしまい振り逃げの出塁。続く高橋由の打球は一塁線へのゴロだったが金澤がこぼしてしまい無死一二塁のピンチ。ペタジーニのセンター前タイムリーでまず1点を奪われた。しかし、その後は二岡、佐藤宏、仁志と三振に切って取って傷口を広げずにすんだ。4回は先頭の高橋由を出したものの牽制球で刺しいい流れをつかんだかに思われた。ところが、ペタジーニに二塁打を打たれると、不振の二岡にライト前に弾き返され桧山がもたつく間にペタジーニが生還して2点目を失った。結局金澤は5回途中に2死一塁で高橋由を迎えたところで吉野にスイッチ。2回のつまらない失点がなければもっと投げられたはずだ。タイガース打線はプロ入り初先発の左腕佐藤宏の手元でのびる球にフライばかり打ち上げお手上げ状態。7回裏、1死から桧山がセンター前に落ちるラッキーなテキサスヒットで出ると矢野がレフト前ヒットで続き大きなチャンス。ここで昨日頭部死球のアリアスの代わりに先発出場していた八木が登場。ところが代わった中村の前に三塁ゴロ併殺で佐藤宏から作った唯一のチャンスを生かせなかった。タイガースは、吉野、藤川、ウィリアムスとつないでジャイアンツ打線に無失点と粘る。一方のジャイアンツは8回に前田を投入。赤星の二塁打でチャンスを作る。ここで四番手は久保。今岡が歩き、代打アリアスの一塁ゴロで進塁、代打片岡は四球を選んで2死満塁。打席には新記録達成が秒読みの金本。ジャイアンツの五番手岡島の初球は明らかなボールだったが球審の判定はストライク。金本は2球目のボール臭い球に手をだしショートゴロに終った。9回表、ウィリアムスに続いて安藤が登板。ところが仁志に右中間スタンドへのソロホームランを打たれてだめ押しの3点目を献上した。9回裏、ジャイアンツのマウンドには木佐貫。2死から代打鳥谷がピッチャー返し。二岡は食い止めたが一塁への悪送球で鳥谷は二塁に進む。野口がレフト線へのヒットで鳥谷を迎え入れ、なんとか1点を返した。この日は8月1日、甲子園球場80歳の誕生日だったが、白星で飾ることができず。試合終了後、金本の701試合連続フルイニング出場の新記録を祝うセレモニーが行われ、三宅秀史さん、今岡、高橋由からの花束を受け取った。
◎愛すれどTigers週間MVP
投手……ジェフ・ウィリアムス リリーフ陣がよかったり悪かったりを繰り返す中で、五輪出場の迫っているウィリアムスが安定した投球。次節も日本に残って登板するという頼もしさ。
野手……金本知憲 新記録達成おめでとうございます。死球禍で片手1本の打席になっても4番の役割をしっかりとこなしていく姿は主力選手の鑑だ。夏男の記録はまだまだのびる。
苦しい1週間だった。それでも、連夜の延長戦を乗り切り、ジャイアンツにも一矢報いた。逆転優勝の可能性は難しくなったけれど、次節から始まる夏の長期ロードでは一気に勝負を賭けてほしい。ロードの始まりは広島市民球場のカープ戦である。週末には東京ドームのジャイアンツ戦もある。勢いをつけるには恰好の対戦相手となった。
(2004年8月1日記)