甲子園でのベイスターズ戦は2勝1敗、広島市民球場でのカープ戦は1勝1敗1分。今節は3勝2敗1分と勝ち越したが、それでも今季のBクラスが確定した。しかし、カープ戦では井川が自身初めてのノーヒットノーランの大記録を達成した。また、三東が4勝目をあげ、敗れはしたものの江草、杉山ら2年目の投手たちが先発手次々と登板し、来季につながる結果を出してみせた。今節はドラゴンズのリーグ優勝が決定し、消化試合に突入したが、若手投手には関係ない。来季はそろって第一線で活躍できる下地を作っておいてほしいものである。
◎ベイスターズ24回戦……4−3
ベイスターズの先発は左腕土肥。2回裏、ヒットの金本と二塁打のアリアスを塁に置き、矢野がレフトオーバーの二塁打で2人を返し先制する。3回裏には今岡のレフトスタンドへのホームランが飛び出し、3点差に。井川は5回まで3安打無失点の好投を続けていたが、6回表、多村にライトスタンドに飛び込む2ランを打たれて1点差につめられた。しかしその裏、今岡が二塁打で出塁、金本のライト前ヒットで一気にホームへ。タイミング的には難しい走塁だったけれど、金本に1点でも打点をつけたいという今岡の思いが得点につながった。今岡は試合後のインタビューでも「金本さんに打点王をとってもらいたい」と全面協力を宣言した。井川は7回表に佐伯のタイムリーで1点を失い再び1点差とされて降板したが、安藤、そして久保田のリリーフが後続を断ち、逃げ切った。
◎ベイスターズ25回戦……3−5
福原は球に勢いがなく3回に種田のタイムリーなどで2点を先制され、5回表にはT・ウッズのライトスタンドへの特大2ランで4点差とされてしまう。タイガースは苦手のマレンからチャンスを作るもあと1本が出ない。辛うじて5回裏に桧山のソロホームランで一矢報いたのみという感じになった。8回裏、二番手の木塚から今岡、アリアスのタイムリーヒットで2点を返し、1点差に詰め寄った。が、タイガース4番手の藤川が9回表に佐伯のレフトポール際へのソロホームランでだめ押し点をとられ、反撃ムードもしぼみ、最終回は門倉にきっちり抑えられてしまった。この敗戦で、今季のベイスターズ負け越しが決定。とはいえ、ここまでよく盛り返したものである。
◎ベイスターズ26回戦……6−4
初回、ベイスターズ先発の加藤に襲いかかった。ヒットの赤星が2年連続60盗塁を決め、今岡のセンター前ヒットで1点。続く金本はライト線へ二塁打、1死二三塁とすると、桧山のライト前ヒットで2者生還し3点目。とどめは矢野のライトオーバーの二塁打で桧山が返ってこの回4点目。2回裏にも金本が打点王へひた走るタイムリーで1点を追加した。三東は4回までパーフェクトピッチング。しかし、5回につかまる。多村、金城の連打でこの試合初めてのピンチを迎える。2死をとったあと、相川に粘られ、ストライクをとりにいったところをレフト前に弾き返されて2点を奪われた。5回裏、ベイスターズ三番手の吉川から鳥谷がレフト前にタイムリーを放ち、再び4点差とする6点目を加えた。それでも三東は安定せず、種田のタイムリーでまた1点を失った。佐伯の併殺でランナーをなくした後、岡田監督は大事をとってT・ウッズのところで藤川を投入。しかし、逆にセンターバックスクリーン横にソロホームランを叩き込まれてしまった。その後は、安藤、ウィリアムス、久保田とつぎこみベイスターズ打線を抑え込んで逃げ切った。この日、ドラゴンズが優勝を決定した。
◎カープ26回戦……4−4
この試合からサード今岡、セカンド藤本、ショート鳥谷、ファースト関本という来季をにらんだ布陣。先発はプロ入り初めての江草。この江草が好投。6回まで4安打無失点。スライダーとフォークがよく決まり、来季の先発ローテーション入りに期待がかかる。7回、木村一のタイムリーで先取点を取られた。タイガース打線は佐々岡の老獪な投球に翻弄されて得点できない。抑えの広池にも封じられたと思われた。しかし、9回表、その広池から今岡が逆転の2ランをセンターバックスクリーンに叩き込む。9回裏、逃げ切りに投入したウィリアムスが尾形に同点ホームランを浴び、試合は延長戦に。10回裏、クボタがピンチを招く。2死二三塁で打者は栗原。空振り三振に打ち取ったが矢野が後逸。振り逃げで三塁走者生還、サヨナラ負けと思われたが、栗原は一塁に走っておらず矢野が一塁に送球して三振が成立し、失点を免れた。その機会を逃さなかったのが金本。11回表、永川からレフトスタンドへ勝ち越しの2ランを放つ。久保田なら逃げ切れるかと思われたが、藤本のエラーでランナーを許し、代打前田の同点2ラン……。結局12回を終えて同点で終り、引き分けとなった。この日、アメリカのメジャーリーグではイチロー外野手が世界新記録となる年間最多安打259本を達成した。
◎カープ27回戦……2−4
初回、長谷川から今岡の犠牲フライで1点先制。しかしその裏杉山は尾形と天谷の連打でピンチを作り、嶋のタイムリーで同点に追いつかれた。天谷が三塁で走塁死し、これで落ち着いた杉山は後続を断ち同点にとどめる。4回裏、野村の犠牲フライで1点を勝ち越された。それでも6回表、今岡が長谷川から同点本塁打をレフトスタンドに運び、長谷川をこの回限りでおろす。杉山はその裏に新井のホームランで再び勝ち越され、6回を3失点の負け投手となった。速球は走っていたので、変化球で勝負にいくような配球に問題はなかったか。二番手牧野が7回裏に森笠にタイムリーを打たれてだめ押し点を許し、打線もカープの二番手広池の前にあと1本が出ず、結局逃げ切られてしまった。
◎カープ28回戦……1−0
井川が7回裏まで完全試合。低めをていねいに突き、三振、内野ゴロの山を築く。今季最高の出来である。今季初めて組む野口のリードも冴えていたのだろう。しかし、カープもエースの黒田が負けじと好投。緩急をつけた投球術で、6回表には2死三塁で今岡というチャンスを作りながら抑えられる。なんとか数少ないチャンスをものにしたのが7回表。金本、桧山の二連打で無死二三塁のチャンス。しかし、野口、代打矢野と凡退し、打席には鳥谷。平凡なショートゴロを名手シーツがまさかの後逸。桧山が生還して虎の子の1点をもぎ取った。8回裏、1死から新井の打球は一塁を襲う。関本は前に弾いてしまう。一塁強襲ヒットかと思われる打球だったが、公式記録員はエラーと判断。完全試合は逃したが、ノーヒットノーランの期待は続く。前田には死球でピンチは続く。しかし、野村をセカンドゴロ、代打緒方を三振に打ち取り、最大のピンチを乗り切った。9回裏、先頭の代打木村一に四球を与えたが、緒方、朝山と打ち取り最後の打者は首位打者の嶋。打球は平凡なレフトフライ。金本ががっちりとつかんで、この瞬間に史上71人目(セ・リーグでは32人目)のノーヒットノーランを達成した(10月4日対カープ、広島市民球場)。タイガースでは1998年5月26日の川尻投手以来の記録となる。
◎愛すれどTigers週間MVP
投手……井川慶 ノーヒットノーランを含み、今節は2勝の荒稼ぎ。特にノーヒットノーランは、消化試合とはいえ投手の勲章である。これで歴代の大投手の列にまたひとつ並んだ。
野手……今岡誠 金本の打点王を助けるために出塁しようという姿勢が、好結果をうんでいる。引き分けたカープ戦など、土壇場での逆転ホームランを放ち、消化試合でも勝ちにつなげようとする気持ちを感じた。
アリアス、マイヤーズが帰国。マイヤーズの解雇は当然ながら、アリアスの去就は微妙だ。もし解雇となった場合、他チームが狙っているともきく。今年は怪我で力を発揮できなかったアリアスだが、怪我さえなければもっと数字は残せたはず。これだけの選手を新たに獲得するのは難しいのだから、簡単に解雇してはいけないと思うのだが。
(2004年10月4日記)