連覇を狙い、鳥谷、キンケード、前川らを補強して臨んだ今シーズン、結局はBクラスに沈んでしまった。その理由は何だったのか。岡田新監督は「オープン戦で結果を出した方を使う」と藤本と鳥谷の定位置争いに関して言った。オープン戦で結果を出したのは藤本だった。昨年3割を打った自信が藤本を大きく見せた。しかし、開幕戦にスターティングメンバーとして起用されたのは鳥谷だった。
岡田監督は長年二軍で采配をふるっている。二軍監督の仕事は選手の育成である。濱中、関本らは岡田監督が粘り強く起用し続けたからこそ成長したといえる。二軍監督にはそういう意味での頑固さが必要だ。しかし、一軍監督の仕事は違う。あくまでも勝つことが目的である。勝つためにはその時に応じた柔軟な考え方が必要だ。例えば仰木彬さんの選手起用は、まさしく臨機応変というしかなかった。二軍で調子のよかった平塚をいきなり4番に起用してみたりする。それがまた成功する。星野前監督も、調子のよい選手を積極的に起用した。岡田監督をこれらの名監督と比較するのは気の毒かもしれないが、同じ新人監督であるドラゴンズの落ち合い監督が「サプライズ」とさえいわれた大胆な選手起用でリーグ優勝をかちとったことを考えると、新人監督だからという言い訳は許されまい。
鳥谷、キンケードを頑固に使い続けたことが、裏目に出たといえないだろうか。
開幕のジャイアンツ3連戦を全勝で飾り、横浜スタジアムに移動してベイスターズによもやの3連敗を喫した。その試合に先発した伊良部、前川、いずれも故障で二軍落ちし、戦力にならなかった。藪も途中で打球を手に当てて一時欠場した。井川、福原、下柳の3人は固定してローテーションを組めたが、それ以外は2年目の杉山や三東に頼らざるをえない状況になった。矢野に疲れが見えても、野口を先発で使おうとはしなかった。消化試合になってから、野口がFA宣言をするかもしれないということになって初めてスタメンマスクをかぶらせた。その試合で、野口は井川をノーヒットノーランに導いた。
8月に8連勝して臨んだドラゴンズ3連戦が最後の山だった。岡田監督はローテーションの順番を大幅に入れ替えて、無惨にも3連敗した。野手の起用には頑固な岡田監督も、こと投手起用となるとローテーションをかたくなに守るという基本をおろそかにした。中継ぎ、抑えも一定せず、安藤もウィリアムスも昨年のような調子を取り戻せなかった。左指の付け根を傷めていた吉野は、それでも大事なところで登板させられ、リリーフを失敗しては昨年ついた自信を完全に失った。
オープン戦で快打を連発した桜井は「育成のために1年間は二軍だ」と宣告された。岡田監督の親心はわからないでもないが、一軍にあがる望みを断たれた桜井は二軍で怪我をしてしまい、とうとう一軍には顔を見せることはなかった。
4番に固定された金本は、プロ入り最高の成績をあげるシーズンとなったが、金本の前にランナーがたまるケースはあまりそう多くはなかった。それでも打点王を獲得したということは、立派である。また、規定打席に達することはなかったが、関本の成長は特筆すべきものがある。投手では終盤ローテーションに入った三東、復活をとげた前半戦の福原に見るべきものがあった。
岡田監督には一軍監督として何が必要か理解していただけただろう。それを糧に来季は選手起用にもっと柔軟さを見せてほしい。
2004年度のタイガースの戦績。66勝70敗2分。勝率.485。セントラルリーグ4位。
◎愛すれどTigers年間MVP
投手……井川慶 昨年の安定感はなかったが、2年ぶりの奪三振王、ノーヒットノーランなど、やはり井川でなければという存在であった。今季の屈辱の原因を探り、来季は再び20勝を狙ってほしい。
野手……金本知憲 4番として連続試合フル出場の記録を更新、死球禍にもめげずに打点王に輝いたのは立派だ。2年目にして完全に虎のリーダーとなった。
佐藤投手コーチ、金森打撃コーチの退団にともない、久保、正田の大阪近鉄のコーチ陣が新加入。さらに和田コーチの一軍昇格、島野コーチの現場復帰と、コーチ陣の刷新が行われた。新人補強も大切だが、八木にかわる代打の切り札をどうするか、若い先発投手たちをどう育てていくか。来季に向けての課題をキャンプで選手を鍛え上げることによって解消していってほしい。
(2004年10月25日記)