甲子園のカープ初戦に敗れて5連敗となり一時は勝率5割を切ったタイガースだったが、そのあとは2連勝して2勝1敗と交流戦前に勝ち越し1勝でクリアした。そして今季初めて導入されたセ・パ交流戦に突入。最初の相手は札幌ドームでのファイターズ。慣れない相手投手に苦しみながらも主砲小笠原、セギノールを抑え込み、2勝1敗と勝ち越した。今節は4勝2敗と勝ち星を積み重ね、セ・リーグ首位のドラゴンズと4ゲーム差、17勝15敗1分と一時の不調からは脱出できた。特に井川に勝ち星がついたのは大きい。ここから調子をあげていくことができるか。
◎カープ4回戦……2−3
先発は福原。初回、緒方にヒットと盗塁を許してピンチを招くと、野手も浮き足立ったか、嶋のライトフライで緒方がタッチアップすると中継の関本が投げないでもいいのに三塁に送球し、これが悪送球となる。福原もバックアップを怠り、緒方は一気にホームイン。しかも、ヒットのラロッカを塁に置いて前田がセンター前ヒットを放つと、一気に三塁を陥れようとしたラロッカを見て焦った赤星がこれまた悪送球。カープにやらなくてもいい2点を与えてしまう。その裏、カープ先発黒田も守備に足を引っ張られる。1死二、三塁で金本がショートゴロを打つと、ショート尾形の送球をファーストの野村が弾き、その間に関本が生還して1点差になる。そして今岡がセンター前ヒットでシーツを迎え入れて同点に追いついた。そのあとは福原と黒田の投手戦。長いイニングを投げ慣れている黒田は尻上がりに調子をあげ、8回までたった2安打しか打てない。一方の福原は4回、先頭の前田にヒットを打たれながらも後続を断って2死までこぎつけたが、黒田によもやと思われるライトオーバーの三塁打を打たれ、リードを許してしまった。タイガースは藤川、ウィリアムスとつないで勝利への執念を見せる。カープも9回に切り札ベイルを投入する。1死から矢野がヒットを放ち代走は秀太。代打に町田。町田の当たりはレフトポール上方をまき、サヨナラホームランかと思われたが、上本審判はファウルと判定。岡田監督の抗議も虚しく、町田は三振。そし盗塁を試みた秀太もタイミングはセーフながら真鍋審判の判定はアウト。守備の乱れ、審判の誤審、2回には赤星が太股に死球をうけて足を傷めるなど、散々な試合に終った。
◎カープ5回戦……6−1
先発は来日初となるブラウン。1回裏、そのブラウンを助けるように、タイガース打線が火を噴いた。高橋から1死満塁のチャンスで今岡がライトオーバーのタイムリー二塁打を放ち、2点先制。さらにスペンサーにも2点タイムリーが出て初回に一気に4点のリード。さらに2回裏、また1死満塁で今岡が押し出し四球、スペンサーがライトへの犠牲フライで2点を追加する。大量リードに守られたブラウンは5回表に緒方のタイムリーで1点を失うが、ゲームを作る好投で橋本に交代した。あとはウィリアムス、久保田の継投でカープ打線を抑え切り、待望の連敗ストップ。ブラウンは来日初勝利を飾った。
◎カープ6回戦……9−3
初回、カープ先発の長谷川から赤星が放った打球はライトポール上部をまく大きな当たり。先制ホームランかと思われたが、西本審判はファウルと宣告。しかし、それにもめげず四球を選んだ赤星を関本がバントで送る。死球の後遺症で走りにくい赤星をうまくアシストした。ここで金本がライト前にタイムリーを放ち、2試合連続の先制点となった。井川は2回表に苦手福井から同点タイムリー二塁打を打たれ、ぴりっとしない。それを救ったのが関本だ。2死一、二塁で地面すれすれの低めの変化球をうまくセンターに打ち返して勝ち越した。このあと井川は立ち直り、7回までカープ打線をきっちりと押さえる。3回裏には金本のバックスクリーン左に飛び込むソロホームラン、5回裏には矢野のタイムリー二塁打で点差も3と開く。井川は8回表に代打ラロッカの2ランを浴び、1点差に迫られた。しかし、8回裏、3番手佐竹から1死二塁で赤星がセンター前にタイムリーを放ち、シーツのタイムリーで再び突き放す。そして4番手梅津から今岡が試合を決定づける3ランを左中間スタンドに叩き込んだ。井川は勝ち投手になったものの、ラロッカのホームランの後もピンチを作り、藤川にスイッチ。藤川が期待にこたえて連続三振ピンチを脱し、流れをタイガースに引き込んだ。
◎ファイターズ1回戦……10−2
先発は安藤と金村。両投手とも持ち味を発揮し、5回までは息詰まる投手戦となった。特に安藤は毎回ランナーを背負いながら後続を断つ粘りの投球。しかし、6回裏に木元に先制ホームランを打たれ降板。7回裏、二番手の橋本は金子に三塁打を打たれ、暴投で2点目を許した。8回表、ようやくタイガース打線が金村をとらえる。1死のあと、赤星が四球を選び、関本の二塁打でチャンスを作った。ヒルマン監督は二番手建山を投入するが、シーツのショートへのタイムリーでまず1点。金本は投手の頭をこす高いバウンドのゴロを打ち、二塁手木元がこぼして内野安打となる。満塁のチャンスで絶好調の今岡がセンター前に弾き返して同点とし、スペンサー三振のあと、この試合から一軍に復帰したDHの濱中がレフト線へタイムリー二塁打でとうとう2点の勝ち越しを決めた。続く矢野もライト線へ2点タイムリー二塁打を打ち、4点差と突き放す。三番手MICHERLからは9回に金本のセンター前タイムリーとスペンサーのだめ押し3ランで突き放し、江草、ウィリアムス、久保田とつないだリリーフ陣がしっかり抑えて記念すべき交流戦第1戦はタイガースがものにした。勝ち投手は江草で、これがプロ入り初勝利。
◎ファイターズ2回戦……1−2
この試合から一軍に復帰した下柳が目のさめるような好投。6回を3安打無失点に抑え、古巣に恩返しだ。一方の入来もジャイアンツ時代とはうって変わって力みのないピッチングでこれまた6回を3安打と抑え切る。試合が動いたのは7回表。二番手井場から桧山が二塁打を放つと、力んだ井場のフォークを捕手の實松が大きく弾き、二塁から桧山が一気にホームインしてタナボタの先制点が入った。そのあとも2死満塁と井場、吉崎を攻め立てたが、建山がシーツをショートライナーに打ち取り、追加点はならず。これが後で響くことになる。8回裏、万全を期して送りだしたウィリアムスが代打因幡に痛恨の同点ホームランをレフトスタンドに放り込まれた。試合はそのまま延長戦に。引き分け寸前の12回裏、金子が橋本からヒットを放ち、稲葉のところで吉野を投入。稲葉はプロ通算1000本目のヒットを放ってチャンスを広げる。木元の一塁への痛烈な当たりをシーツはよくさばいたが、一塁ベースカバー吉野への送球がそれてしまい、金子が生還して悔しいサヨナラ負けを喫してしまった。
◎ファイターズ3回戦……4−1
能見は初回に1死満塁のピンチを迎えるが、矢野の喝で気持ちを取り直し、オバンドーを三振、田中幸をピッチャーフライに打ち取ってピンチを脱した。そのあとはスライダーがうまく決まり、ファイターズ打線を翻弄する。6回表、ファイターズ先発江尻から金本があわやスタンドに入るかという強烈なレフトオーバーの二塁打を放ち、動揺したところを今岡が狙い打ったようにレフトスタンドへ先制の2ラン。8回表には1死一、二塁のピンチで上がった井場からスペンサーがレフト前にタイムリー。レフトの田中幸がもたつく間に2者生還して4点差とする。能見はプロ入り初完投を完封で飾るかと期待されたが、9回裏、オバンドーに特大のホームランを浴びて完封は逃した。しかし、今季タイガース投手陣の中で初めての完投勝利をおさめた。
◎愛すれどTigers週間MVP
投手……能見篤史 あっぱれプロ入り初完投。特に小笠原を完全に封じ込めたのが大きかった。
野手……今岡誠 カープ戦で連敗脱出のタイムリー、交流戦でも決勝ホームランを放つなど大暴れ。長いトンネルから抜け出せたか。
次節は千葉マリンスタジアムでもっか絶好調のパ・リーグ首位、マリーンズと対戦する。ここで勝ち越すようなことがあると、再び首位争いに近づくことができる。いわば試金石のような3連戦である。マリーンズに負け越したとしても次のカードは甲子園でゴールデンイーグルス。そこで取りかえせるという精神的余裕があるだろう。交流戦はまだ始まったばかりなのだ。
(2005年5月9日記)