西京極球場で昨年の日本一チームライオンズの初戦を落したタイガースだったが、甲子園に舞台を移すとあの松坂大輔を打ち砕き2連勝し、2勝1敗。福岡ヤフージャパンドームに移動して一昨年の日本一チームホークスと戦い初戦こそ無惨なまでに打ちのめされたが、すぐに立ち直り2連勝で2勝1敗。交流戦の通算成績を10勝5敗、今季の通算成績を25勝19敗1分とし、連敗の続くドラゴンズをとうとう追い抜いて単独首位に立った。この交流戦では岩隈(ゴールデンイーグルス)、松坂(ライオンズ)、和田(ホークス)と、パを代表する若きエースたちを次々と下しているところに値打ちがある。これがセ・リーグ相手に戻った時に、エース格の投手とあたった時でも自信をもって立ち向かえる原動力になってくれればと思う。
◎ライオンズ1回戦……2−3
ライオンズの先発は帆足。タイガース打線の苦手なタイプの左の軟投派投手だけに、苦戦が予想されたが、もろに的中してしまった。福原は2回表に石井義のタイムリーで先制される。その裏反撃を期待したいところが、金本、今岡、スペンサーと連続三振。福原は5回までは毎回ランナーを背負うも内野ゴロを打たせる粘りの投球で追加点を許さない。しかし、タイガース打線には焦りが見られ、4回裏にはせっかく先頭打者の赤星が内野安打で出塁しても盗塁死でチャンスをつぶし、5回裏には金本がヒットで出塁したが今岡がピッチャーゴロの併殺でこれまたチャンスをつぶす。6回表、石井義のタイムリー二塁打と片岡のセンター前タイムリーで2点を失った福原は、この回限りで降板した。内容は悪くても最低限の失点で切り抜けてきただけに、援護がほしかった。9回裏、ここまで苦しめられてきた帆足からシーツが右中間スタンドに飛び込むソロホームランを放ち反撃を開始。金本が二塁打で続き、投手は豊田に交代。スペンサーのタイムリーで1点差にまで追いつめたが、地元京都出身の代打桧山が三振に切って取られてゲームセット。苦手なタイプだけにバントなどで確実にランナーを進める策で追いつめてほしかった。ただ、完封を許さなかったことで次の試合に期待を持たせはしたが。
◎ライオンズ2回戦……3−2
日本プロ野球を代表するエース松坂から、2回裏、先頭の金本が四球を選ぶ。今岡はよく粘ったがレフトフライに終った。しかし、その直後の初球を桧山は見逃さなかった。ライトスタンドに入る先制の2ランで試合を優位に運ぶ。杉山はフェルナンデスとカブレラを徹底的にマークしノーヒットに抑える。ていねいな投球で6回を無失点に抑えた。5回裏、鳥谷がレフト前ヒットで出塁すると、杉山はピッチャー前にバント、松坂は二塁に投げたが間に合わずフィルダーズ・チョイスとなった。赤星は内野に叩き付ける高いバウンドの打球で松坂が押さえたもののどこにも投げられない内野安打。そして満塁で打者関本の時にワイルドピッチで貴重な3点目が入った。もっとも、さすがに松坂、関本、シーツと連続三振に取り、金本を歩かせながらも今岡を一塁ゴロに打ち取る投球で潰れなかったのはみごと。タイガースは、藤川、ウィリアムス、久保田とつなぐ必勝リレー。8回表にウィリアムスがきわどいところを審判にボールと判定されて2四球のあと、和田の三塁打で2点を失い1点差と詰め寄られたが、好調の石井義を三振に打ち取り、なんとかしのぐ。最終回は久保田が2三振を奪う力投で逃げ切った。杉山、藤川、久保田はいずれも松坂と同級。エリートエースの前に下積みの長かった者たちのの意地を見せつけた。
◎ライオンズ3回戦……5−3
井川の立ち上がりは不安定な内容。初回、シーツのエラーなどもあってピンチに追い込まれ、和田の犠牲フライと石井義のセンター前タイムリーで2点を先制された。しかし、ライオンズ先発の大沼にすぐさま反撃。赤星が四球で出塁、シーツのセンター前ヒットで三塁に。金本の一塁ゴロの間に赤星がホームインして1点を返す。井川は2回以降立ち直り、7回を投げ切って失点は初回のみと試合を作る。4回裏、桧山、矢野、鳥谷の3連打で満塁のチャンスを作り、赤星が押し出しの四球を選んで同点に追いつく。関本のところで代打に濱中を送る大胆な選手起用。これがみごとに当たり、ライト前に食らいつくような2点タイムリーを放って勝ち越しに成功した。5回裏には二番手の許から金本がライトスタンドにぶち込むホームランを放って点差を3に広げる。8回表には藤川が登板し、ぴしゃりと抑える。9回表からは切り札久保田。太股の故障が完治した二塁藤本が、久々の試合で緊張したかエラーをしてしまい、片岡のセンター前タイムリーで1点を奪われたが、ライオンズの反撃もそこまで。エースが悪いなりに投げ、4番打者が効果的なホームランを放つという、美しい展開で昨年の王者に勝ち越した。
◎ホークス1回戦……7−16
先発安藤が3本のホームランで沈没した。初回、松中にライトスタンドに2ラン、3回裏にも松中に2打席連続の2ラン、4回裏には大村にライトスタンドに2ランと6失点。新垣の前にランナーを出しても返せないジレンマの続いた打線だったが、6回表、今岡がレフトスタンドにソロホームランを打ち込んで反撃開始。と、思ったら、6回裏、城島、ズレータに連続死球を与え、カブレラの二塁打で1点を、大村の二塁打でさらに2点を奪われて佐久本に交代した。古巣相手の好投が期待された佐久本だったが、柴原を歩かせ、川崎のヒットで満塁にする。宮地のセカンド強襲ヒットを藤本がこぼして2点、バティスタのタイムリー、松中の犠牲フライで2点、城島に二塁打を打たれたあとズレータの内野ゴロの間に1点を失い、この回なんと8失点……。7回表、ようやく新垣をとらえた。鳥谷のタイムリー二塁打で1点、赤星のセカンドゴロをカブレラが一塁に悪送球して1点、シーツ、金本、今岡と3者連続の四球で押し出しの1点。ここでマウンドにはフェリシアーノが。大量得点に守られた新垣を引きずり降ろしたのは収穫だろう。7回裏は江草が三者凡退に抑える好投。8回裏はブラウンが城島の2ランを浴びて2点を失い差は12点に開いた。しかし、9回表、三番手佐藤からシーツのタイムリー二塁打、金本のライト前タイムリー、スペンサーのセンター前タイムリーで9点差まで縮め、次の試合につないだのは大きかった。火だるまの佐久本は、1試合だけで二軍降格。もともと橋本が背中に張りを訴えたための昇格だっただけに、橋本なみの活躍を期待されていたのだろうが、もう1試合挽回のチャンスを与えてやってもよかったのでは。
◎ホークス2回戦……9−2
爆発的なホークス打線をあざ笑うかのように、下柳がみごとな投球術を古巣に披露した。初回、ホークスのエース和田から赤星が四球で出塁するとすかさず盗塁。金本が前日のお返しとばかりにライトスタンドに運び、2点を先制した。その裏、荒金に二塁打を打たれた下柳は、バティスタ、松中を連続三振。2回裏には先頭の城島に内野安打を許したが、ズレータ三振、カブレラ併殺と前日に大暴れした選手たちを手玉に取る。3回表には、シーツ、今岡のタイムリーで2点を追加し、タイガースペースに。しかし5回裏、鳥越、荒金にタイムリーを打たれ2点差に詰め寄られ1死一二塁のピンチを招く。ここが下柳の真骨頂で、続くバティスタを併殺に切って取り、あと一歩というところでの反撃を断つ。6回表、鳥谷、赤星の連打でチャンスを作ると藤本のバントを二番手竹岡が三塁へ悪送球、失点のあとの得点という勝ちにつながる点を相手にもらった。さらに金本のタイムリーも出て2点をそっくりお返し。8回表には、一昨年の日本シリーズで苦杯をなめた岡本が登板したが、シーツのタイムリー二塁打と、金本のライトスタンドへの2ランで敵討ち。投げては6、7回を藤川が、8回をウィリアムスが、9回を江草が無失点で切り抜けて楽々逃げ切った。下柳は開幕から5連勝でハーラーダービーのトップに並んだ。
◎ホークス3回戦……8−4
ホークスは今季初当番初先発の寺原を起用。なめられたものだ。初回、いきなり赤星と藤本の連打でチャンスを作り、金本の四球で満塁に。ここで今岡がレフトへの犠牲フライでまず1点を先制した。しかし、対する能見もぴりっとしない。2回裏、ズレータのレフトへの大きなホームランと大村のタイムリーで逆転されてしまう。しかし、3回表、すぐさま反撃だ。三塁打の赤星を塁に置き、藤本が一二塁間を抜けるタイムリーで同点に追いつくと、金本が勝ち越しの2ランをライトスタンドへ。それでも能見はスライダーが甘いコースに入り、連続四球もあって無死満塁でズレータに2点タイムリーを浴び、1点差とされた。ここで能見は交代。二番手の江草は同点を覚悟でカブレラをショートへのゲッツーに打ち取り、宮地も一塁ゴロに切って取ってピンチを脱した。5回表、フェリシアーノの前に2死一二塁と攻め立て、左対左でも苦にしない桧山をそのまま打席に送る。その起用に応えた桧山はライト前に弾き返すタイムリーで勝ち越し点を奪う。8回表には四番手神内を2死一二塁と攻め立てる。ここで吉武が登板。それに対し濱中が代打で登場し、センターオーバーの三塁打で2点追加。さらには9回表、スペンサーの犠牲フライで決定的に打ちのめす8点目が入り、藤川、ウィリアムス、久保田の必勝リレーでソフトバンク打線を沈黙させた。試合後、ホークス王監督は藤川や久保田らリリーフ陣を「いつの間に出てきたんだ」と脱帽気味に語ったという。勝利投手は能見のピンチとチームの悪い流れを切り抜けたリリーフの江草。一度先発でも投げさせてみたい。
◎愛すれどTigers週間MVP
投手……杉山直久 同級生の松坂を向こうにまわし、しつこいライオンズ打線をみごとに封じた。これが杉山にとってのステップボードになることを願っている。
野手……金本知憲 21打数10安打5ホーマーと絶好調。特にホークスに大敗した翌日に、相手の4番松中に負けじと2ランを2発叩き込んだところに「鉄人」の意地を見た。
次節は倉敷と甲子園でバファローズと対戦する。わずかに残った関西のチーム同士の対決だけに、勝敗はともかく盛り上がる内容の試合を期待したい。そして仙台に移ってゴールデンイーグルスとの3連戦。ここで取りこぼさずに勝ち星をのばし、首位の座を安定したものにしておいてほしい。
(2005年5月23日記)