甲子園でのホークス3連戦は井川、福原左右の両エースが強力打線の餌食となり3連敗。初戦、敗れはしたものの杉山が気迫あふれる好投を見せただけに、特に井川の不調が目立つ結果となった。さすがの岡田監督も自ら二軍落ちを申し渡した。登録抹消期間中にミニキャンプをして下半身を作り直すらしいが、復帰後どう変われるか、井川も勝負の時を迎えたという感じがする。引き続き甲子園でマリーンズ戦。こちらはパ・リーグ首位チームとがっぷり四つに組んで1勝1敗1分と完全な五分。特に引き分けた第3戦はまさに野球の醍醐味を感じさせるすばらしい試合だった。勝てはしなかったが、次節に向けて大きな意味のある試合になったと思う。これで交流戦は通算14勝11敗2分。今季通算では29勝25敗3分。3位に陥落したとはいえ首位スワローズに1ゲーム差なので、ちょっとした展開の変化ですぐに首位に返り咲ける位置についている。なんとかふんばってほしいものである。
金本が5月の月間MVPを受賞した。これでタイガースからは2ヶ月連続の受賞者。序盤の好調ぶりがこの結果につながっている。
◎ホークス4回戦……0−2
杉山と杉内の投手戦は、杉内に軍配が上がった。杉内の高めの速球に振り遅れてしまい、2安打10三振と手も足もでない。杉山も6回まで3安打無失点の好投。内外角を思い切って突く強気の投球だったが、7回表、松中を歩かせ、ズレータにレフトスタンドにどでかい2ランを浴びてしまった。この球以外は失投もほとんどなかっただけに、痛恨の1球。能見に替わって一軍に復帰した橋本が1イニングを無失点に抑えるなど、若手投手の分ばりが収穫。敗れはしたが、内容的には互角の試合運びだった。
◎ホークス5回戦……5−12
井川の乱調で、好調のチーム全体がしぼむような、そんな敗戦。初回、先頭の大村をいきなり歩かせ、盗塁される。そしてバティスタのセンター前タイムリーで先制されてしまう。しかし、松中のヒット性の当たりは赤星がジャンプしての好捕。城島のセンター前ヒットでバティスタがホームを突くも、赤星はストライク返球でこれを刺し、傷口を広げない。こういう味方の援護があれば生きを吹き返すかと期待されたが、2回表には城島のソロホームランで1失点、3回表には松中の2ランホームランで2失点、5回表には松中の二塁打、宮地の三塁打、稲嶺の二塁打で4失点と傷口は広がるばかり。エースが5回8失点で勝てるわけがない。球に体重が乗らず、甘く入るところを完璧に捕らえられた打球が甲子園を我が物顔に舞う。この内容で5回までマウンドに残してもらっていたのはなぜか、井川はよく考えるべきだろう。打線は斉藤に5回まで無得点に抑えられていたが、6回裏、先頭の藤本が四球を選び、シーツの左中間の当たりを大村が後逸する間に生還して完封を免れ、金本と今岡の内野ゴロの間にシーツが一つずつ塁を進めて生還、2点を返した。しかし、7回表、二番手の江草がズレータに特大のホームランを浴びると一気に崩れる。鳥越のタイムリーや今岡のタイムリーエラーなどで3点を奪われ、せっかく返した点を吐き出してしまった。7回表には牧野が城島にソロホームランを打たれ、失点は12に。8回裏、二番手フェリシアーノから今岡が2ラン、三番手佐藤から濱中がタイムリー二塁打を放って3点を返し、次の試合につなぐ得点をあげたのだけが救いか。井川は二軍落ち。かわりに前川が一軍に復帰してきた。
◎ホークス6回戦……7−9
大乱戦も結局はホークスが打ち勝った。井川の二軍落ちの影響もあったのか、福原はなんと2回表、伏兵宮地に3ランホームランをライトスタンド最前列に運ばれる。一発の危険のない打者に不用意な一球だった。タイガースは2回裏、星野から今岡、桧山、矢野と3連打で1点を返したが、続く3回表に福原が松中に2ランを浴びてしまう。しかも、ファールになるような打球を切れずに運んでしまうのだから、松中のスイングの強さには仰天だ。4回表にも連打でランナーを許し、川崎に右中間を破られる2点二塁打を打たれ、前日に続いて先発の柱が7点も捕られたのでは試合にならない。と、思われたが、勝ち投手の権利を意識したか、5回裏、星野の球が甘く入り出した。鳥谷、藤本、赤星の3連打で無死満塁。関本のヒット性の当たりはレフト松中が好捕したが、これが犠牲フライとなりまず1点を返す。藤本と赤星がダブルスチールを決め、シーツのライトフライで藤本が生還して2点目。金本はレフトオーバーの二塁打で赤星を返して3点目。勝ち投手を目前に星野は降板、竹岡に交代した。ここらに王監督の厳しさを見た。結局桧山が打ち取られたが、3点差に迫り試合は面白くなってきた。6回には神内から鳥谷がタイムリー二塁打を打って2点差に。タイガースは二番手橋本が6回表、カブレラ、宮地、柴原を三者三振にとったのがきっかけでホークス打線を黙らせ始める。ウィリアムスも7回表、大村、川崎を三振にとる好投を見せたが、8回表、松中にヒットを打たれて藤川にスイッチ。藤川は城島の内角低めにずばりと決めるみごとな球を投げ込んだが、城島は予測したようにこれを完璧に打ち、レフトスタンドに特大の2ラン……。逆転の夢が断たれたと思われた。ところが9回裏、満を持して登板した切り札三瀬が初めての甲子園に呑まれた。シーツがライトスタンドに運ぶホームランを放ち、続くは金本。初球、頭近くに投げ、さらに2球目、背中を向けてよける金本の後頭部に吸い込まれるように当たってしまった。三瀬は危険球退場で、佐藤がマウンドに。連続試合フルイニング出場の記録が途切れるかと思われたが、金本はダグアウトから出てきて一塁ベース上に立つ。そして今岡はセンターオーバーのタイムリー二塁打! ここで一気に逆転サヨナラと意気あがるところだったが、桧山、矢野と連続三振、鳥谷は四球を選んだが、代打スペンサーがファールフライで試合終了。はらはらしっぱなしの4時間であった。
◎マリーンズ4回戦……10−7
初回、マリーンズのエース清水を攻略。赤星がいきなり三塁打。シーツの二塁打で先制。2死のあと、今岡のサードゴロを今江がエラー。桧山がすかさずタイムリー、そして矢野がセンターバックスリーンに運ぶ3ラン。なんと一挙5点。前夜の鬱憤をはらす猛攻だった。安藤は3回表にフランコのタイムリーで1点を返されるが、その裏、金本のタイムリー二塁打ですぐに打ち返す。もっとも、そのあと2四球で満塁としながら桧山の併殺などでチャンスをつぶし、流れをつかみ切れなかった。安藤は5回表にフランコの2点タイムリーなどで3点を返され、点差は2点と緊迫した展開になる。マリーンズは5回から継投。小宮山、川井とつないでタイガースに追加点を与えない。タイガースも6回から橋本を、そして7回には藤川を投入。しかし、藤川が同点の2ランをフランコに打たれてしまう。試合は振り出しに戻った。7回裏、マリーンズは山崎を投入。関本が二塁打で出塁し、一死後、金本を敬遠で歩かせた。これに燃えたのが今岡。レフトスタンドへ叩き込む勝ち越し2ラン! 一塁ベースに向かいながら、今岡は吼えた。続く桧山もライトスタンドへだめ押しのソロホームランを放つ。8回表、ウィリアムスは2死満塁から押し出しの四球で1点を奪われ、久保田にスイッチした。久保田は代打初芝を三振に切ってとり、9回も三者凡退で抑えて逃げ切った。
◎マリーンズ5回戦……3−4
先発ブラウンが初回につかまる。2死満塁からサブローにセンター前へ2点タイムリーを放たれた。その裏、タイガース打線も反撃し、セラフィニから2四球と三塁今江のエラーで満塁とし、今岡のライト前へのラッキーな二塁打で同点とする。ブラウンは3回表にベニーにレフトスタンドに運ばれてリードを許し、この回限りで降板。その裏、セラフィニから二塁打のシーツを金本がセンター前ヒットで返してすぐに同点に。しかし、4回表、江草が好調フランコにレフトポール直撃のソロホームランを打たれ、これが決勝点となった。タイガースはウィリアムス、藤川を、マリーンズは川井、薮田、小林雅を投入して互いに失点を許さず。7回裏、薮田から2死のあとシーツが二塁打、金本、今岡と歩いて満塁のチャンスを作ったが、スペンサーが見逃しの三球三振。絶好の逆転機だっただけに、空振りでもいいからバットを出してほしかった。ブラウンは二軍降格。桟原が一軍に復帰することになった。
◎マリーンズ6回戦……1−1
まさに見ごたえのある投手戦。これこそ野球の醍醐味! 変則アンダースローの渡辺俊の浮き上がる球に手こずるタイガース打線。下柳の内外角に投げわける変幻投球に的をしぼれないマリーンズ打線。先手をとったのはマリーンズ。3回表、ヒットの西岡を堀がバントで送り、フランコのセンター前ヒットで返す。さらにピンチは続いたが、ベニーを併殺に切って取って追加点を許さないのが下柳らしいところだ。下柳は今季最長の8回を無失点で投げ切る。その裏、桧山が上から叩く打法で右中間を破る二塁打を放つと、矢野がみごとに打球を殺すバントで桧山を三塁に送る。ここで代打は濱中。変化球をうまくバットに乗せてレフトへの犠牲フライでとうとう同点に追いついた。9回表からは久保田が登板、11回までの3イニングはなんと6三振を奪う渾身の投球でマリーンズ打線を封じる。一方マリーンズも10回裏から藤田、薮田とつぎこみ一歩も引かない。12回表、藤川は2四球でピンチを作る苦しいマウンドとなったが、里崎、李から三振を奪い今江もショートゴロに打ち取ってからくも逃げ切る。サヨナラの期待を背負った12回裏だったが、負けられないマリーンズは小林雅まで投入し、3時間46分規定により引き分けた。両チームの投手が全力を出し切って最少失点に抑えたすばらしい投手戦。負けなかったことに大きな意味がある。
◎愛すれどTigers週間MVP
投手……下柳剛 渡辺俊との投げあいで一歩も引かない粘りの投球術は芸術的ですらあった。勝ち星こそつかなかったけれど、2勝分くらいの値打ちがあるぞ。
野手……今岡誠 マリーンズ初戦、目の前で敬遠。打点王のプライドに火がついた。試合後のヒーローインタビューも興奮状態だった。今岡の心に秘めた熱さが表に出た。
次節は関西ダービー第2段。スカイマーク神戸球場、大阪ドームと続く連戦だが、球場自体はよく使っているので、上げ潮のバファローズではあっても地の利を生かした戦いという感じにはならないだろう。そして甲子園でファイターズ戦。甲子園にSHINJOが戻ってくる。この連戦だけは背番号の上のネームをSHIJYOにしてくれんかな。無理ですか。SHINJOのかぶりものに期待したい。いや、野球の試合をするのでしたね。そやけど、SHINJOは絶対プレーでも目立とうとするに決まってる。負けるな赤星。いっそのことトラッキーの中に入って走りまくれ。だから野球の試合をするんやって。
(2005年6月6日記)