待ちに待った日本シリーズだというのに、敵地千葉マリンスタジアムで2戦連続10失点で2連敗とは。こういう大敗での連敗は日本シリーズ史上初めてだという。シーズンの戦いぶり、そして交流戦で見せた力でいえば互角であるはずなのに、なぜこのような大差がついたか。理由はタイガースが最終戦から2週間以上も待ってシリーズに入ったのに対し、マリーンズはプレーオフで緊張感あふれる戦いをして、その勢いをそのまま持ち込めたこと、これが大きいのではないかと思われる。また、タイガースナインは一昨年の悔しさを晴らしたいと力んでいるのが見えるが、マリーンズはプレーオフの緊張感から解放されてのびのびとプレーをしているというように見える。条件があまりにも違う上に、敵地での開幕。タイガースが力を出し切れないのはここらに理由があるように思う。パ・リーグが理不尽で変則的なプレーオフを続けていく以上、こういうハンディキャップがセ・リーグの優勝チームには毎年あるということは今後検討し対処されるべきではないかと思う。パ・リーグのプレーオフは2位チームにとってとても有利なようにできているのだ。昨年、今年とパ・リーグの2位チームが日本シリーズを制覇したとしたら、ファンとしてはなんのために公式戦があったのか、バカバカしくなってしまう。
そう思わせないためにも3戦以降、タイガースが奮起してほしいのだけれども。シリーズ2試合でノーヒットの金本と今岡の焦ったようなスイングを見ていると、こんなはずではなかったという気持ちが見て取れる。まずいなあ。
◎マリーンズ1回戦……1−10
井川がいきなり初回に今江に先制ソロホームランを打たれた。それでも4回まではランナーは出しても後続を変化球で打ち取り試合を作っていく。一方タイガース打線は清水の前に4回まで2安打に抑えられていたが、5回表に桧山と矢野がそれぞれ軽打で外野手の前に落とす渋いヒットを放って1死一三塁と攻め立て、藤本の浅いレフトフライに肩の弱いフランコの返球を見越した桧山が思い切ってホームに突っ込み同点とする。しかし、井川は味方が点を取ってくれると崩れるというシーズン中の悪い癖を出してしまう。5回裏、先頭の渡辺正のヒットで出塁を許すと、続く西岡の意表をつくプッシュバントが二塁内野安打となり今江に勝ち越しのタイムリー二塁打を許してしまう。さらにサブローにもレフトオーバーの二塁打で2点を奪われ、重い3点のリードを許した。6回裏にはイ・スンヨプにライトスタンドに運ばれ、この回限りで井川はマウンドを降りた。味方の援護もあって、清水は6回、そして7回とタイガース打線に狙い玉を絞らせない投球をする。7回裏、霧が次第に濃くなる千葉マリン球場のマウンドには橋本。しかし里崎に3ラン、ベニーに2ランを打たれ、どうすることもできない。それどこころか霧があまりにも濃く、試合続行は不可能となり、34分の中断のあと、7回裏攻撃中のコールド試合となってタイガースは思いもよらない形で初戦を失った。
◎マリーンズ2回戦……0−10
初回、安藤はいきなり先頭の西岡に二塁打を打たれ、塀内のバントで三塁まで進まれた。しかし、里崎をショートゴロに打ち取り、サブローもサードゴロに打ち取った、と思ったら今岡が一塁へワンバウンド送球したのをシーツが弾いて打者セーフ。先制点を奪われた。続く2回裏には先頭のイ・スンヨプを歩かせ絶好調の今江にライト前ヒットを打たれる。橋本の当たりはセンター前に抜けるかという強烈なゴロ。これをフジモトがよくさばいてダブルプレーとする。三塁ランナーのイ・スンヨプがホームインして2点目を失ったものの、ここで食い止めたのは大きく、5回までは安藤も立ち直り5回裏に今江にヒットを許すまでランナーを出さない好投を見せた。しかし、打線がアンダースローの渡辺俊の前に沈黙。3回裏、片岡と矢野の連続ヒットでチャンスを作ったが、赤星のいい当たりを西岡に好捕されるなどして得点できず。6回表にはセンター前ヒットの赤星が盗塁し、鳥谷がレフト前に運ぶヒットでチャンスを作ったが、シーツのセンター前に抜けるかという当たりをベース上で二塁手塀内にうまく捕られてダブルプレーを決められる。そして6回裏、安藤がサブローにレフトスタンドに運ばれる2ラン、フランコにライトスタンドに運ばれるソロと2者連続ホームランを浴びて降板。二番手の江草もイ・スンヨプの2ランを浴びる。江草は8回裏に大塚にヒットを打たれたあと3連続暴投でホームインさせるという乱調。今江にシリーズ新記録となる8打席連続ヒットを打たれ、橋本にも三塁打を許し、10点目を献上した。タイガース打線は7回以降ノーヒット。渡辺俊の変則フォームに最後までタイミングを崩されてしまった。2度の得点機にそれぞれファインプレーでチャンスをつぶされたのも痛かった。金本と今岡は依然ノーヒットで打線がつながらないままに終っている。
◎愛すれどTigers週間MVP
投手……該当者なし 井川は予想されたノックアウトだったが、若い橋本や江草までが空気に呑まれて普段通りの投球ができていない。安藤は不運にも味方のエラーなどで足を引っ張られた。打線の援護があればなんとか立ち直れたのだろうが……。
野手……該当者なし 地の利を生かしたマリーンズ先発陣の自身たっぷりの投球に翻弄されっぱなしだ。しかし、赤星にヒットと盗塁、シーツ、片岡、桧山、矢野らベテラン勢にもヒットは出た。鳥谷も初安打をなんとか放った。あとは4番と5番が立ち直るのを待つだけだ。
こんなはずではない。タイガースが実力を出し切れず、マリーンズが実力以上のものを出しているということで、こういう結果が出たのである。テレビ解説の若菜はまるでこれがマリーンズの実力であるかのように言い放っていたが、交流戦での感触とはちがいすぎる。若手の多いチームが勢いに乗ったからこういう結果が出たといえるだろう。だから、この勢いをそぐ下柳ののらりくらり投球が成功し、藤川、ウィリアムス、久保田がぴしゃりと抑えたら、今度は一気に沈んでしまうこともあり得る。パ・リーグ公式戦の後半戦がそういう感じだった。甲子園に帰ってからの巻き返しに期待したい。
(2005年10月24日記)