広島市民球場と倉敷マスカット球場ののカープ戦は初戦を雨で流したが、1勝1分でしのぎ、準本拠地の大阪ドームでベイスターズに3連勝した。金本が904試合連続フルイニング出場を大阪ドームの3戦目で果たし、カル・リプケンJr.の持っていた記録を抜いて世界一の鉄人となった。投手ではオクスプリングの好投、金沢の復活の白星などもあり、打線では濱中がホームランを量産するなど投打もかみ合ってきた。エース格が出てくるとまだ打ちあぐんだりもするが、格下のリリーフが登板してくるとめった打ちを食らわせる。前節から数えて5連勝と波に乗ってきた。今節は4勝1分。今季通産では5勝2敗1分、勝率.714で2位。首位ジャイアンツとの差は1ゲーム。
◎カープ1回戦……10−1
先発の下柳はプロ入り通算500試合登板。記念の試合を白星で飾った。6回を投げて散発3安打無失点。コーナーをていねいにつく投球でカープ打線を翻弄した。5回裏には1死二三塁のピンチを招いたが緒方を併殺に切って取る。6回裏にも四球の走者を出しながらシーツのファインプレーで嶋を併殺に打ち取り責任回数を全うした。打線は左の大島の先発を読んだ岡田監督が関本と濱中をスタメン起用する。これが大当りだ。初回、二塁打の関本と内野安打の金本を塁に置き、今岡が先制のタイムリーをセンターに打ち返すと、続く濱中がレフトスタンドに今季1号の3ランを叩き込んだ。2回表にはシーツのタイムリー三塁内野安打、3回表には2打席連続となる濱中のバックスクリーンへのソロホームラン、4回表には金本のライトスタンドポール際へのソロホームラン、6回表には関本のレフトスタンドへライナーで突き刺さるソロホームラン、7回表には林のタイムリー二塁打と赤星のレフトフライを前田が落球したタイムリーエラーで2点という具合に大島、長谷川、広池の3投手から10点を奪う猛攻撃を見せた。7回から2イニングは先発が雨で流れた杉山が今季初登板をパーフェクトに抑える。9回表に登板したダーウィンが嶋、栗原、梵の3連打で1点を失ったが、これで前節から2連勝し、勝率を5割とした。
◎カープ2回戦……2−2
タイガースの先発オクスプリングは縦に割れるカープを有効に使い、カープ打線を7回無失点に抑えた。カープ先発黒田はどんどんストライクを取ってくる。打線も積極的に打って出て初回、二塁打の赤星をシーツがレフト前タイムリーで返して1点先取。3回表には赤星、シーツのヒットでチャンスを作り、金本がレフトへ犠牲フライを放つ。このまま行けばオクスプリングの完封で試合終了かと思われたが、前回の江草と同じように岡田監督はリリーフ投手を投げさせて試合の形を作ろうとした。しかし、その作戦が裏目に出る。二番手能見は倉のセンター返しを取りにいって弾き強襲ヒットとすると、続く山崎にもレフト前ヒットを打たれる。黒田が送りバントをした時、捕手の矢野の前に落ち、矢野は黒田にタッチして打者アウトとなったが、黒田が邪魔になって三塁走者を刺せなかった。守備妨害ではないかと岡田監督が抗議したが通らず、投手は三番手藤川に交代。緒方のレフトオーバーの二塁打で2者が返って同点とされ、試合は振り出しに戻った。カープはベイル、横山、高橋、永川と投手をつぎこみ、タイガースも久保田、相木の継投でしのぐ。不調の久保田が2イニングを無失点で切り抜けたのが収穫。結局両者譲らず12回規定により引き分けとなった。オクスプリングを見切るのが早すぎたというほかない。8回表、1死満塁で追加点のチャンスに今岡が併殺でつぶしてしまい、流れをカープに引き戻させたという形にもなった。なんとか負けずにすんでよかった。
◎ベイスターズ1回戦……5−2
苦手の三浦に3回まで抑えられ、特に3回裏は鳥谷と井川の連打でチャンスを作りながらまずい攻めで1点も取れず、重い空気がたれ込めはじめた。しかし、それを救ったのが金本だった。世界記録への前祝いのように、4回裏にドームの3階席に飛び込む特大の先制ソロホームラン。井川も6回までは金城の二塁打1本に抑える好投を見せ、このまま行くかと思われた。しかし、7回表、突如崩れる。小池と金城に連打を浴び、佐伯のセンター前タイムリーで同点に追いつかれた。種田のレフト前ヒットで金城がホームに突入したが、これは金本の好返球で刺し、村田の逆転タイムリーの1点だけで大量得点に結びつけない辛抱の投球がなんとか実った。8回裏、二番手川村から林が代打タイムリーヒットで同点に追いつくと、赤星がヒットでつないでチャンスを広げ、藤本がライト前に勝ち越しの2点タイムリーを放つ。シーツもヒットで続き、川村はここで降板。三番手は昨年までのチームメイト佐久本。ここで金本がだめ押しとなるライトへのタイムリーヒットを放って点差を広げた。最後は久保田が9回表を三人で打ち取り、村田のハーフスイングでもめたものの危なげない投球で今季初セーブを記録した。また、井川も打線の援護で今季初勝利。三浦を打ち崩せなかったという課題は残ったが、格下の投手を容赦なく打ちのめす打線の集中力は称讃に値するだろう。
◎ベイスターズ2回戦……5−2
先発安藤が2回表に村田のタイムリー二塁打で先制点を許したが、ジャイアンツキラーの土肥もタイガースの好調な打線には通用しなかった。2回裏、この日フルイニング連続試合出場世界タイの金本がセンター前ヒットで出塁すると、今岡がレフトスタンドに逆転の2ランを放ち、続く濱中がレフトスタンドに高めの球を運んで追い討ちのソロホームラン。そのあとは安藤と土肥の投手戦となり緊迫した試合展開となった。8回裏から登板した新人高宮から今岡がこの試合2本目となるソロホームランで待望の追加点を取り、四球の濱中を置いて矢野がだめ押しのタイムリー三塁打で試合を決めた。完封を狙った安藤は9回表につかまる。1死から古木、金城、佐伯の3連打で1点を失い、続くピンチに登板したのは切り札久保田。岡田監督の我慢の起用がここで実った。1四球は許したものの後続を断ち切り、連続セーブ。安藤も今季初勝利をあげ、金本の世界タイ記録に花を添えた。
◎ベイスターズ3回戦……10−5
金本の新記録を勝利で飾りたいというプレッシャーからか、江草は前回のような低めに決まる球が見られない。1回裏、吉見から赤星が三塁村田のエラー、関本が四球でチャンスを作り、金本のあわやライト前に抜けそうなセカンドゴロの間に赤星が生還して先制したが、2回表、相川の二塁打ですぐに同点に追いつかれた。3回裏、シーツのタイムリー二塁打と濱中のレフトへの3ランで一気に4点を取って突き放したかと思われたが、続く4回表に江草はヒットと四球で無死満塁のピンチを招く。相川を投手ゴロ併殺に打ち取ってほっとしたところを吉見に2点タイムリー、続く石井にもヒットを打たれ、小池の飛球を赤星と金本が譲り合い結局金本のエラーで同点に追いつかれた。江草はこの回限りで登板。大記録達成の試合での先発は荷が重かったか。しかし、二番手金澤が6、7回を完璧に抑えて流れをタイガースに引き戻す。6回裏、吉見から濱中がこの試合2本目となる勝ち越しのソロホームランをレフトスタンドに運んでチームを救った。8回裏には木塚を攻め立て1死満塁から赤星の内野安打で1点、藤本のセンター前2点タイムリーに続き、シーツのピッチャーを襲うタイムリーヒットで試合を決定づけた。勝ち越したあとは能見、藤川、久保田とつなぎ、金本の偉大な記録を勝ち星で祝うことができた。金本の偉業に選手たちが一丸となって勝ちに行く。すばらしいチームワークである。勝ち投手は同点の場面で完璧な投球を見せた金澤。ここで忘れられてはいけないという必死の投球が光った。
◎愛すれどTigers週間MVP
投手……金澤健人 500試合登板の下柳といきたいところだが、ここは肩の故障でここ数年苦しんできた金澤に1票入れたい。金澤の好投なくして金本新記録試合の勝利はなかった。
野手……濱中治 先発初起用の試合にいきなりホームラン。5試合で5本という恐るべき量産体勢だ。故障で思うようにならなかった未完の大器がいよいよ目覚めはじめたか。ライトのポジション争いがますます熾烈になってきた。
次節はいよいよタイガースが甲子園に戻ってくる。相手は強敵のドラゴンズ。天候が不安定なので雨天中止になるかどうか心配だが、調子に乗っている今こそどんどん試合を重ねていってほしいところだ。週末はカープと甲子園で3連戦。首位を走るジャイアンツに食らいついていくためにもここは最悪でも5割でしのぎたい。私も甲子園の開幕戦は2試合連続で応援に行く予定。金本の新記録達成のあとだけに、緊張感が切れてしまっていないかが心配ではあるのだが。
(2006年4月10日記)