愛すれどTigers


鳥谷3日連続のお立ち台

 甲子園での6連戦は、それぞれ2勝1敗で通算4勝2敗と着実に勝ち越しを続けている。これこそ昨年のタイガースのペースである。まずゴールデンイーグルス戦は、元タイガース監督の野村克也監督を敵にまわしたせいか、思った以上に選手が緊張し、思わぬ苦戦を強いられた。それに対し強豪ホークスには相手のエース2人を打ち崩して勝ち越したのだから、価値のある2勝だろう。2位のジャイアンツが5連勝したため首位の座は明け渡したが、これは通過点に過ぎない。いっぱいいっぱいで試合をしているジャイアンツは息切れしてしまう可能性があり、勝敗を問わずパターンの確立しているタイガースはじわじわと勝率を上げている。追うものの方が強いというから、もうしばらくはジャイアンツに息が切れるまで走り続けてもらってもいいくらいである。こんなに余裕を持って勝ち進むチームになったとは。感慨深いものがあるな。今節を終ったところで31勝20敗1分、勝率.608。首位ジャイアンツとの差はわずか0.5ゲーム。

◎ゴールデンイーグルス1回戦……5−2
 先発は井川と元タイガースの山村。井川は初回、四球の鉄平に盗塁されフェルナンデスのタイムリーで先制点を許した。しかしタイガースもその裏、死球の赤星が盗塁とバントで三塁に進みシーツの犠牲フライですぐに同点とする。井川は4回表に牧田のタイムリーで1点リードされたが、そのあとは要所を締めて8回まで追加点を許さなかった。一方山村もコースをていねいにつく投球でタイガース打線を7回まで3安打に抑える好投。このままずるずるといきそうな嫌な雰囲気になった。が、リリーフに不安のあるイーグルスだけに、野村監督は山村で試合を引っ張らざるを得ない。8回裏、代打スペンサーが低い球をうまくすくいあげてレフトスタンドに同点ホームランを放つと、内野安打の赤星と死球のシーツを塁に置いて金本がライトスタンドに決勝の3ランを放り込んだ。9回表には久保田を投入、三者凡退で逃げ切った。野村監督は赤星が出塁したら徹底的に牽制球を投げさせるなど、嫌らしい野球でタイガースをゆさぶってきた。これが3試合続くときついかもしれない。
◎ゴールデンイーグルス2回戦……3−6
 タイガースは新外国人投手のグリンの荒れ球に手を焼いた。4回までノーヒットと手も足も出ない様子。一方タイガースの杉山は毎回のようにランナーを許す不安定な内容。5回表、沖原のヒットとグリンへの四球でランナーをため、高須のセンター前ヒットでとうとう先制された。しかしその裏、鳥谷と片岡が連続四球でチャンスを作り、関本がこの試合タイガースの初安打となるセンターオーバーの二塁打で同点とし、さらに赤星のレフト前のタイムリーで2点の勝ち越し。6回表、二番手のダーウィンはリックのタイムリーで1点差に迫られたが沖原の一塁ゴロはシーツがうまい守りで併殺にして難を逃れた。イーグルスは小倉、吉田豊、青山の継投、タイガースは復帰なったウィリアムス、藤川と1回ずつつないで最後に久保田に逃げ切りの望みを託した。ところが頼みの久保田がこの試合は制球が定まらず先頭の沖原を歩かせ、バントの構えをする藤井を警戒するあまりストレートの四球とランナーをためてしまう。酒井の犠打のあと、鉄平のライト前のタイムリーで逆転されてしまう。さらに高須を歩かせ、憲史の投手ゴロをバランスを崩して捕球し焦って一塁に悪送球を投げ鉄平が生還、憲史を一二塁間に挟んでいる間に高須にまでホームインされ、この回致命的な4点を失ってしまった。9回裏、福盛を攻めて2死一二塁のチャンスを作るが、矢野は三振に倒れて試合終了。勝ちパターンだっただけに、久保田の目を覆うばかりの乱調が痛かった。
◎ゴールデンイーグルス3回戦……2−1
 タイガースの先発は大方の予想に反して福原。下柳を想定していた野村監督は右打者をずらりと並べていた。それでも福原は初回にリックのタイムリーで1点先制されてしまう。4回表には高須とリック、牧田に連打されるが、濱中の好返球などもありなんとかピンチをしのいだ。6回裏、イーグルス先発の愛敬をとらえる。ここまでスローボールを有効に使ってタイガースの打線をもてあそぶように抑えていたが、ヒットのシーツを塁に置いて2死から鳥谷がライトスタンドへ逆転のホームランを放つ。7回表、福原は四球でピンチを作りウィリアムスに交代。そのウィリアムスも連打でピンチとなったが鉄平、沖原を連続三振に打ち取ってピンチを逃れた。藤川に続いて9回表には昨日乱調の久保田がマウンドに。岡田監督は自らマウンドで久保田に喝を入れ、久保田も1本ヒットは許したが代打西村を三振に打ち取りゲームセット。昨年9月7日のナゴヤドームでの喝を思い出させるいいタイミング。こういうシーンを見ると、岡田監督は名監督であるように感じられる。ここというところでの勝負のかけかたがうまいのだ。勝負師岡田と勝手に呼ばせてもらうぞ。
◎ホークス4回戦……4−0
 下柳がのらりくらりの緩急自在の投球でホークス打線を7回無失点で抑えた。好調の松中は勝負を避けてズレータを変化球で料理する。一方、前回の対戦で抑えられた斉藤和から初回赤星がいきなり三塁打でチャンスを作り、シーツの内野安打の間に生還し1点先取。4回裏には鳥谷の二塁打で2点目。さらに6回裏、鳥谷はレフトポール際にソロホームランを叩き込んで斉藤和をノックアウトした。8回裏には三番手楊から関本がタイムリーを放ちだめ押しの1点を追加して試合を決めた。タイガースは8回には藤川、9回には久保田を投入して予定通りの逃げ切り。
◎ホークス5回戦……8−7
 安藤と杉内の両先発が崩れて大乱戦となった。先制したのはホークス。初回、大村を塁に置いて松中のショート内野安打を鳥谷が悪送球し、1点を献上した。しかし2回裏、今度は濱中を塁に置いて関本が三塁ゴロを打つと松田が一塁に悪送球しておあいこみたいな形で同点となる。安藤は3回表、大村、川崎の連打でピンチを作り、柴原のライトオーバーの三塁打で勝ち越しを許し、ズレータにもセンター前へタイムリーを打たれてこの回3点を奪われた。しかし、4回裏、1死一二塁から濱中がライト前にタイムリー、さらに2死から関本が四球を選び満塁に。ここで矢野がライトスタンドに逆転の満塁ホームランを打って2点差をつける。豊富な中継ぎ陣で逃げ切りをはかるタイガースは5回表に能見を投入。ところが、その能見がズレータの二塁打と大道の犠牲フライで同点に追いつかれ、さらに松田のライト前に落ちるタイムリーで逆転を許してしまった。逃げ切りのパターンではホークスも形がある。佐藤、吉武とつぎこんでタイガース打線を沈黙させる。しかし、8回裏、左腕の篠原が1死一二塁としてマウンドを新人の藤岡に譲った。強心臓の藤岡も甲子園の雰囲気に呑まれたか矢野を歩かせて満塁に。代打の片岡にも腕が振れずに押し出しの四球。これでタイガースは同点に追いついた。そして9回裏、シーツ、金本の連打で窮した藤岡は濱中に死球を与え満塁に。動揺する藤岡の球が甘いコースに入ったのを鳥谷は見逃さずライト前にサヨナラヒット。鳥谷は3日連続でヒーローインタビューを受けた。
◎ホークス6回戦……2−6
 ホークスの先発は今季初登板のベテラン田之上。緩いカーブを見せ球に、速球で勝負するというベテランならではの緩急をつけたピッチングでタイガース打線を翻弄した。タイガースの先発は若い江草。3回までテンポよく投げノーヒットの投球だったが、調子がよすぎてメリハリがきかなくなり4回表に大村に投手強襲の初安打を打たれると、続く川崎にライトスタンドに持っていかれて2点を先制された。6回表、柴原のショートゴロを鳥谷がはじいてエラー。続く松中に左中間の一番深いところに運ばれる二塁打を打たれてさらに1点を追加される。ズレータを歩かせ松田にバントを決められたところで降板。調子がよすぎて逆に一本調子になってしまった。二番手はここのところ好投していた太陽。ところが交代していきなり暴投で三塁走者を返し、代打田上に2ランを浴びてしまった。太陽は試合終了後二軍落ちを通告された。さすがに6回裏になると田之上も疲れてきたか球が甘くなる。そこをシーツがとらえてレフトポール際にソロホームランを打って反撃を開始。金本がヒットで続き、濱中のタイムリーで2点目を返したが、続く鳥谷のところで左腕篠原を投入され、反撃もそこで止まった。吉武、そして最後は馬原がマウンドに上がり、ホークスが逃げ切った。下柳にしろ田之上にしろ、ベテランならではの緩急をつけた頭脳的な投球が光る3連戦となった。

◎愛すれどTigers週間MVP
投手……下柳剛 古巣ホークス相手に緩急の差と勝負どころを考えた大人のピッチングを見せてくれた。なんでもホークスの担当記者から「最近勝ってないらしいな」と言われて発奮したのだそうだ。なんという記者か知らないが、ありがたいことである。
野手……鳥谷敬 決勝ホームランにサヨナラヒットと3試合連続でヒーローインタビューの指名を受けた。もう少し受け答えに芸がほしいところだが、この飄々としたところが持ち味になる日がくるかもしれない。熟成するまで辛抱が要る男なのだ。

 次節は札幌ドームでファイターズと3連戦し、折り返し甲子園に帰ってきてライオンズと3連戦。調子の落ちてきたファイターズを叩き、勢いに乗ってライオンズにインボイス西武ドームでのお返しをしてほしい。ダーウィン、ウィリアムス、藤川とつなぐことのできる中継ぎに、岡田監督の喝で見違えるようになった久保田の抑えがあるのだから、先発投手陣はとにかく先取点を防いでくれればいいのである。井川の完封なんていうのも見たいところではあるが。

(2006年6月5日記)


目次に戻る

ホームページに戻る