東京ドームではイ・スンヨプ一人にやられる格好で2連敗したが、下柳がイを徹底マークして1矢報いた。1勝2敗。松山坊ちゃんスタジアムのカープ戦は先発が打たれながらも打線がタイムリーを連発し久々に打線がつながって2連勝。今節は3勝2敗と勝ち越した。濱中、鳥谷ら若手が好調だったのに加え、シーツを3番に戻したのが功を奏したか。特に金本は夏男の本領発揮で大活躍。少しずつ投打の歯車がうまくかみ合いつつある。ここまで53勝41敗3分、勝率.564でリーグ2位。首位ドラゴンズとの差は半歩縮まって5.5ゲームとなった。
◎ジャイアンツ11回戦……2−4
初回、井川は2死三塁からイ・スンヨプにレフトスタンドにライナーで運ばれる先制2ランを打たれた。タイガース打線は上原をなかなかつかまえられない。5回表、鳥谷がレフトスタンドへうまいバッティングでもっていくソロホームランで1点を返す。井川は2回以降は調子を取り戻し、8回裏までわずか1安打に抑えた。特に速球がだんだん走ってきて、チェンジアップを有効に使う。7回表、シーツと鳥谷の連打でチャンスを作り、藤本のレフトへの犠牲フライで同点に追いついた場面で、岡田監督はあえて代打を送らず井川に打たせた。上原は好投したが8回裏に代打を送られて降板。8回表には上原から濱中がヒット性の当たりを放つも三塁古城のファインプレーで併殺。9回表、久保からシーツも鳥谷もいい当たりを放つが相手に好捕され、ヒットにならない。そして9回裏、四球のランナーをおいて勝負を急いだ井川は、イ・スンヨプにセンターへ特大のサヨナラホームランを打たれ、悔しい敗戦となった。
◎ジャイアンツ12回戦……2−3
鳥谷、林で一二番を組み、赤星を外す攻撃的なオーダーで臨んだが、打線爆発とまではいかなかった。福原と西村の投手戦で始まった試合は、4回表に均衡が破れた。鳥谷、林の連打でチャンスを作り、濱中の内野ゴロの間に鳥谷が生還して1点を先制する。5回裏、高橋由と阿部の連打でジャイアンツがチャンスを作り、ディロンのショートゴロを鳥谷がバウンドをあわせそこねてそらし、同点に追いつかれた。そして6回裏、内野安打の木村拓を塁に置き、イ・スンヨプが2試合連続の2ランをバックスクリーンに運ぶ。タイガースは7回表に濱中のホームランで1点差と迫ったが、林、久保、高橋尚とつないだジャイアンツの投手リレーの前に追撃はならず、好投の福原を見殺しにしてしまった。2試合続けてイ・スンヨプ一人にやられたという印象である。
◎ジャイアンツ13回戦……5−1
ジャイアンツの先発は、今季タイガースが苦手とする内海。しかし、初回から打線が攻略する。鳥谷が二塁木村拓のエラーで出塁すると、シーツが四球を選び、金本のライト線への二塁打で1点先制。さらにこの日五番の矢野が犠牲フライで2点目をあげる。3回表にはこの日センターでスタメンのスペンサーがレフトスタンドへ2ランを打ち込み、早くも4点リード。3回裏、下柳は1死満塁のピンチを招くが、二岡を三振、イ・スンヨプには内角を攻めてレフトフライに打ち取り窮地を脱した。下柳は5回裏に高橋由のタイムリーで1点を失ったが、続く阿部は内野ゴロにしとめてここも窮地を脱する。どんなピンチでも相手をはぐらかすような投球術が冴えた。6回途中にダーウィンにマウンドを譲ったが、リリーフのウィリアムス、江草、藤川がしっかり抑え、打線も8回表に四番手真田から代打桧山が満塁で押し出し四球を選んで大きな1点を追加した。久々に打線がつながり、投手陣も踏ん張った勝利だった。
◎カープ11回戦……11−7
両チームの点の取り合いとなった乱打戦。先発の安藤は初回から甘い球が高めに浮く不調。1死満塁から前田にタイムリー、栗原に2点二塁打を打たれて3点を先制された。しかし、カープ先発の大竹もコントロールが定まらず、初回、四球のあと、三塁新井のエラーなどでランナーをため、濱中、鳥谷の連続センター前タイムリーで2点を返す。そして2回裏、シーツのタイムリーで同点に追いつく。ところが安藤は打線の援護にこたえられない。3回表、栗原と倉のタイムリーで再び2点リードを許す。3回裏、藤本の犠牲フライで1点差とするも、二番手長谷川に後続を断たれる。4回表、3番手の太陽が2死満塁から栗原に2点タイムリーを浴び、再び3点差。4回裏、長谷川から金本のタイムリーで2点差に詰め寄ると、太陽も5回表はなんとか無失点に抑えた。これで流れが変わり、5回裏、3番手の横山から四球とヒットでチャンスを作り、代打桧山のライト前タイムリーで1点差とする。赤星が送り、関本が犠牲フライを打って同点、シーツが歩くとここでマウンドには佐竹があがる。金本のライト線の三塁打で二者が返り、ついにこの試合初めてリードした。6回裏にはスペンサーのタイムリーが、7回裏には代打片岡のタイムリーが出て点差を4点に広げると、ダーウィン、ウィリアムスが2回ずつきっちり抑えて逃げ切った。太陽は、内容はよくなかったが打線に助けられて今季初勝利。
◎カープ12回戦……9−4
能見が今季初先発。3回表、2死をとってから2連続四球でピンチを作り、新井と前田の連続タイムリーで2点を先制された。しかし、試合がこれで動く。カープの先発広池から3回裏怒涛の攻撃。赤星とシーツが歩き、金本ライト前、濱中センター前、鳥谷ライト前、矢野レフト前の4連続タイムリーで一気に4点を取って逆転。4回裏には二番手ロマノから金本が犠牲フライを打ってさらに1点を加える。楽勝かと思われたが、能見は5回表に暴投と新井のタイムリーで1点差にまで詰め寄られた。6回からは桟原が登板したが、2死満塁のピンチを招いて江草に交代、江草は嶋をライトフライに打ち取ってなんとか切り抜け、8回途中まで好投した。7回裏、四番手高橋健から金本がヒットで出塁。鳥谷のバントはキャッチャーへの小フライとなる。石原捕手は離塁していた金本を刺そうと一塁に送球、これが金本の左膝関節に当たり悪送球となる。金本は二塁に進んだが、一時は歩けるかどうかというほど痛そうにし、脂汗をぼたぼたと流す。8回裏、先頭の中村豊が一塁に頭から滑り込む内野安打で出ると、赤星がバントを決める。ここで投手は五番手の林に。関本、シーツが四球で満塁に。金本が打席に入ろうとする時、岡田監督はこう声をかけたそうだ。「次(のダーウィン)に代打はないから、なんとかしてくれ」。歩けるかどうかという怪我でもなんとかするのが金本だが、まさかの打球は美しい放物線を描いてライトスタンドへ。満塁ホームランでリードを一気に5点に広げると、8回途中からマウンドにあがっていたダーウィンが9回も抑えて2セーブ目。能見は今季先発での初勝利を飾った。
◎愛すれどTigers週間MVP
投手……下柳剛 連敗で苦しい場面、ベテランならではの頭脳的な投球でジャイアンツ打線を手玉にとった。昨年同様、ここ一番で頼りになるのは下柳なのである。
野手……金本知憲 松山で連日のお立ち台。普通なら代走が出る場面でも必死に走り、そして次の打席で満塁ホームラン。アニキ金本の面目躍如である。
坊ちゃんスタジアムでは藤川をくり出すべき場面でも登板させなかった。なにか異状が起こったのだろうか。金本の膝の具合も気になる。ここで藤川がリタイアし、金本が再び怪我のために不調となると、投打の軸が不在となってしまう。気にかかるところだ。次節は横浜でベイスターズと、そしてナゴヤドームで首位を争うドラゴンズと対戦する。得意としているベイスターズに確実に勝つことで、少しでもドラゴンズとの差を縮めてから対戦してほしいものだ。スワローズは現時点で地力優勝がなくなってしまった。竜虎一騎討ちの様相を示しているのだ。ここでタイガースが敗れると、ペナントレースの灯が消えてしまう。
(2006年8月7日記)