愛すれどTigers


2006年度を振り返って

 連覇を狙うタイガースは、しかし、序盤から今岡の不振とウィリアムスの不在に泣かされた。昨年は機能していた打線が機能せず、中継ぎにまわった能見がドラゴンズとの3連戦で失敗して勝ちゲームを落とすなど、岡田監督の意図していた野球ができなかった。金本は開幕早々に連続フルイニング出場の世界新記録を達成し、なにかそこで一つの山場を越してしまったような気分が感じられた。
 故障者が目立ったのも今年の特徴だった。ウィリアムスに始まり、守備で指を骨折した金本、死球などで足を傷めた赤星、子どもの世話をしていて指を骨折した久保田、肩の張りと寝違えで一度登録抹消してしまった藤川……。昨年は故障者がいても、それを補う戦力がでてきたが、今年は故障者の欠場や不振がそのまま成績に響いてしまった。
 それを救ったのが藤川だった。首位ドラゴンズとは最大9.0ゲームにまでゲーム差が開いたが、あの「涙のヒーローインタビュー」で選手たちの闘志に火をつけた。ばね指の手術で登録抹消となった今岡のかわりに、三塁守備では関本が、5番の打順では濱中がその任を果たした。藤川は中継ぎと抑えとフル回転し、井川、福原、安藤、下柳、杉山のローテーションがまわって着実に勝てる形を作った。2.0ゲーム差にまで追い込んだけれど、残念ながら優勝は逃した。しかし、それだけの実力がついたということなのだと思う。
 ただ、勝利を優先するためにベテランを重用し、若手が大きく成長する場が与えられなかったのが、来季以降どう響いてくるか。二軍は島野監督が病気で休養したが、立石代行たち指導者がよく若手を起用し、狩野、喜田らの活躍で優勝した。この若手たちが来季に活躍することを願っている。
 赤星は故障がたたり、6年連続で保っていた盗塁王の座を青木(S)に奪い取られた。昨年はタイトルホルダーが続出したが、今年はぐんと減ったのも、チーム成績に反映したといえるだろう。
 個人タイトルは、最優秀中継ぎに藤川球児投手が2年連続の受賞。井川も最多奪三振のタイトルを最後の登板で勝ち取った。また、ベストナインに矢野輝弘捕手、金本知憲外野手が、ゴールデングラブ賞にアンディー・シーツ一塁手、赤星憲広外野手が、それぞれ選出された。
 片岡、町田の引退、井川のヤンキース移籍など、チーム構成に変化が生じた。若手選手はこれをよいチャンスととらえて一気にレギュラーを奪うつもりという活躍を見せてほしい。
 2006年度のタイガースの戦績。84勝58敗4分。勝率.592。セントラルリーグ2位。首位ドラゴンズとの差は3.5ゲーム。

◎愛すれどTigers年間MVP
投手……藤川球児 他に誰がいるだろうか。常にチームの勝利を一番に考え、全力で立ち向かった姿勢は、この先ずっと記憶に残るだろう。オールスター戦でパ・リーグの強打者が手も足もでなかった浮き上がる速球は、プロ野球の歴史に刻まれるだろう。時点は福原。開幕当初は腰痛で欠場したが、その後は投球術のコツを得たか、安定したピッチングで来季のエース候補一番手に躍り出た。
野手……アンディ・シーツ 金本が骨折で不振に陥った時も、安定した打撃と勝負強い打棒で打線を引っ張った。例年、打てなくなると不振の期間が長いのだが、今季はその欠点も克服した。さらに、一塁守備のみごとさはいうまでもない。チーム事情で三塁を守った試合があったが、その時の一塁手(スペンサー、林ら)の動きが危なっかしくて見ていられなかった。次点は濱中。4月の月間MVPの価値は高い。ただ、年間通じて安定したものがなく、これは来季への課題となるだろう。

 岡田監督の辛抱強さが裏目にでた。能見がリリーフで使えないならば、先発で力を出してはいたがリリーフ経験の豊富な江草をリリーフにまわすなど、緊急時に柔軟な対応ができていたら、9ゲームも離されるまでにはならなかっただろう。来季は思い切って若手を起用し、高齢化している現在のレギュラーと、スムーズに世代交代できるようにしてもらいたいものだ。

(2006年12月25日記)


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