愛すれどTigers


2007年度いよいよ開幕

 セントラル・リーグもプレーオフを行う「クライマックス・シリーズ」が採用される初めてのシーズンがいよいよ始まる。私個人としては1シーズンの長丁場の価値を下げる短期決戦トーナメント式のシリーズはやめてほしいのだが、これでセ・パ両リーグの条件が揃ったのだから、これからどのようにプロ野球が変わっていくのかに注目したい。
 さて、われらがタイガースである。野球評論家の下馬評では、圧倒的にドラゴンズ有利ということである。確かに、タイガースからは先発の軸である井川が抜け、確実に2ケタ勝利をみこめる存在が一人いなくなったのは大きい。しかし、タイガースファンの多くは、井川をそれほど大エースと思ってはいなかったのではないかという気もするのである。特にアメリカ行きを志願して以降の井川は、ここで勝っておかないと苦しいという場面で負けてしまうという印象が強い。一昨年ではドラゴンズ戦で痛い負けを喫して2度も0.5ゲーム差に迫られた。昨年はジャイアンツ戦になるとイ・スンヨプに打たれて負け、お得意さまになりかけていた相手を助けている。胴上げには遅れる。ビールかけでは影にこっそり隠れている。チームメイトと勝敗の喜びや悔しさを分かち合うという点でも、エースらしさがなかった。どちらかというと、下柳の方がよほどここぞというところで頼りになった。
 今年の開幕投手は下柳だろう。これをさして若手が育ってないと指摘する評論家もいるが、投手の精神的な支柱は、下柳と藤川なのだから、開幕投手の栄誉を下柳に飾らせるのはしごく当然と思う。
 井川が抜けた穴をうめるのは誰か。勝ち星だけ考えたら、すぐに井川級の活躍をする投手はいないかもしれない。しかし、左の先発は江草、能見、中村泰、ルーキーの小嶋、ファイターズから移籍の正田らをうまく使っていけば、ある程度穴は埋まると思う。右の先発要員である福原と安藤がキャンプで故障し、開幕には間に合わない。それをさして「右の先発がいなくなった」とマイナス要因にあげる評論家もいる。しかし、4月だけで優勝が決まるわけではない。ましてや今年はリーグ優勝とは別に「クライマックス・シリーズ」がある。三東のように投手生命にかかわる故障ではなく、4月中には一軍にかえって来られるのだから、4月を5割で乗り切れば、優勝もしくは「シリーズ優勝」の可能性も見えてくるだろう。2人の復帰までは、新外国人のジャンとボーグルソン、太陽、杉山らでしのぐことができる。若手の若竹や玉置を使ってみるのも面白い。
 それも、リリーフ投手陣の充実があるからいえることである。抑えの藤川はもちろん、そこまでにウィリアムス、久保田、橋本健、相木、吉野、桟原ら多士済々のメンバーが揃っている。久保田が不安ならば、橋本健をウィリアムスの前に投げさせればよい。
 野手は、若手の底上げが不十分だったというところが気にかかるが、層の厚さはドラゴンズには負けていない。外野は赤星、濱中ら昨年のレギュラーに対して林、赤松、高橋勇らが挑戦してくる。内野も今岡、関本、藤本、坂らがレギュラーの座を争う。鳥谷、シーツ、金本以外は固定メンバーとは言い切れないのだ。捕手も矢野に対して打撃で浅井、リードで清水、バランスのよさで狩野がその後釜を狙う。
 控えのスペシャリストが豊富なのも強みである。ドラゴンズを戦力外になりテスト入団した高橋光は右の代打の切り札として活躍が期待できる思いもよらぬ拾い物だ。左の代打では背水の陣の葛城や、故障で開幕リタイヤしたが夏までには必ず出てくるベテラン桧山がいる。矢野のスーパーサブ野口捕手、外野守備では中村豊、上坂、内野守備では秀太、前田忠らの存在は欠かせない。
 二軍で腕ぶす桜井、藤原、喜田、大和、野原ら若手野手、投手でも外国人枠の関係で二軍で待機するダーウィンや、筒井、伊代野、金村、岩田、渡辺、田村がわずかでも一軍に上がって競争してくれればと思うが、ダーウィンはともかく、他の投手が一軍メンバーに割り込もうと思えば、これという特徴がないと難しいだろう。
 というわけで、長い目で見れば、たとえ開幕ダッシュができなくても、気がつけば優勝争いの中心にいるだろうというのが今年のタイガースである。未知数の部分もあり不安は多いけれど、かつての最下位争い常連の時代には、このメンバーでシーズン通して勝ち続けられるわけないよと選手名鑑を見て溜息をついていたのだ。それに比べたらこんな不安なんでもない。昨年、あそこまで首位のドラゴンズを追いつめたのだ。あの底力を今年も存分に見せつけてほしい。
 開幕は3月30日(金)。京セラドーム大阪でカープを迎え撃つ。

(2007年3月27日記)


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