東京ドームでの首位ジャイアンツとの熱闘は初戦は打線が抑え込まれて敗れたが、2戦目には鬱憤を晴らすように22安打15得点という61年ぶりの圧勝。3戦目は手に汗握る展開で引き分けて、1勝1敗1分。横浜球場では眼下の敵ベイスターズに2勝1敗と勝ち越し。特に第3戦の先発能見の好投は今後の戦いにおいて大きな戦力となるだろう。今節は3勝2敗1分。今節終了時点で51勝45敗3分、勝率.531。首位ジャイアンツに3.5ゲーム差と迫る3位。2位のドラゴンズとのゲーム差は1.5。首位の背中が見えてきた。なお、金本外野手が史上21人目となる3500塁打を記録し、またひとつ球史にその名を刻んだ。
◎ジャイアンツ16回戦……2−3
ジャイアンツの先発門倉はベイスターズ時代から比較的得意にしている相手。初回、シーツの先制ホームランがバックスクリーンに吸い込まれていった時、攻略できると確信した。ところが、この一発で門倉は「目が覚めた」(本人談話)。4回以降はヒットが打てない。速球につまらされ、変化球に手をだし、まんまと術中にはまってしまった。下柳は3回まではいつもの老獪な投球でジャイアンツ打線を翻弄していたが、4回裏にボールストライクの判定でかっとなり、冷静さを失ってしまった。二岡とイ・スンヨプのヒットでピンチとなり、阿部に内角高めの球をライトスタンドポール際に運ばれてしまった。7回以降、タイガースは渡辺、江草、杉山とつないでジャイアンツ打線を抑え込む。ジャイアンツも7回は西村、8回は豊田を投入して逃げ切りをはかる。そして9回表、切り札上原が登板した。シーツが、林がそれぞれヒットを飛ばして上原に迫る。桜井のサードゴロの間にシーツが帰り1点差に。矢野に期待が集まったが、レフトフライを打ち上げ試合終了。しかし、上原を追いつめ1点差としたことで翌日につながる攻撃のできた試合であった。
◎ジャイアンツ17回戦……15−2
ボーグルソンは初回高橋由に一塁線に痛烈な当りをされたが、この日先発出場の葛城が好捕。これで乗ったボーグルソンは後続を二者三振に切って取った。ジャイアンツの木佐貫も2回表は無死満塁から三者三振、4回表も三者三振と好投する。しかし、5回表、先頭のボーグルソンがライト前にヒットを打ったことでリズムを乱させた。鳥谷はボールをよく見て四球を選び、赤星のバントは投手の逆をつき焦った木佐貫は一塁に悪送球してボーグルソンがホームイン。相手のミスで先制する。このミスから生じたほころびに打線がつけこむ。赤星盗塁で二三塁と攻めたて、シーツのレフト前タイムリーで1点。代わった山口から金本のセンター前タイムリーでさらに1点。林は併殺で三塁にランナーが残り、濱中が二塁打でまた1点。とどめは矢野のバックスクリーン横に飛び込む2ラン。この回なんと一挙6点で、ここで試合は決まった。それでも火のついた打線は止まらない。6回表は三番手姜を打つ。2死から赤星とシーツの連打でチャンスを作り、金本と林が連続タイムリーでさらに2点。8回表はかつてのドラゴンズ時代には苦手にしていた四番手野口をめった打ち。四球の桜井を塁に置きシーツが2ラン。林と濱中の連打で追い込み矢野がこの日2本目となる3ランを右中間スタンドに! 続く関本もレフトスタンドにソロホームラン。投手はここで五番手吉武に。しかしそれでも止まらない。代打野口が二塁打で出ると桜井が15点目のタイムリー。そこまでやるかという恐ろしいばかりの攻撃であった。一方ボーグルソンは5回まで投げて無失点。6回は杉山がきっちり抑え、7回は江草。清水の二塁打などで出したランナーを脇谷の内野ゴロの間に返されて完封継投を逃す。8回は桟原が死球の高橋由の代走鈴木尚に盗塁され谷にタイムリーを打たれた。しかし、それ以降は小笠原、イ・スンヨプを連続三振に打ち取るなど内容は悪くない。最終回は久しぶりの一軍登板である能見がヒットは打たれものの最後は谷を内野ゴロにしとめて無失点で切り抜け試合終了。ジャイアンツ戦での22安打15得点はなんと61年ぶりの記録だそうだ。前日の敗戦での嫌なムードは完全に吹き飛んだ。
◎ジャイアンツ18回戦……2−2
シャンと高橋尚の投手戦。先制したのはタイガース。先発出場の濱中が先制ホームランをレフトスタンドに叩き込む。一方ジャイアンツは4回裏に阿部が右中間スタンドにホームランのお返し。連打が出ず一発警戒という試合となった。5回裏、鈴木尚のヒットにバント、ジャンのボークなどでランナーは三塁に。高橋由の当りはセンター方向へ。セカンド関本がよく追いつくもわずかにグラブをかすめ、取り切れずタイムリー内野安打になり、一点差とされた。それでもジャンは落ち着いていて、高橋由の盗塁を矢野が刺すなどしてそれ以上の攻撃を許さない。高橋尚の緩急差のある攻めに苦しんでいたタイガース打線だったが、7回表、ついにつかまえた。矢野と鳥谷のヒットで1死一三塁とし、関本の犠牲フライで同点に追いつく。さらに8回表、林がヒットで出塁、ここで投手は西村に。対する代打葛城はライト前ヒットでチャンスを広げる。しかし、濱中、矢野はいずれもショートゴロに抑えられ、勝ち越しのチャンスを逸した。そのあと、タイガースは久保田、ウィリアムス、藤川がそれぞれ2回ずつ、ジャイアンツも上原、豊田が2回ずつきっちり抑えて延長12回引き分けとなった。首位を守るチームと追い上げる勢いのチームの死力を尽くしたすばらしい試合だった。
◎ベイスターズ14回戦……8−6
初回、上園が連打を浴びたり四球を連発するなどしてピンチを作り、村田と内川のタイムリーで2点を失った。しかし、2回表、マットホワイトから1死満塁で上園がプロ初安打初打点となるタイムリーを放ち1点差に。この試合一番ライトで先発の濱中が2点タイムリーを放って逆転に成功した。3回表には二番手ホセロから桜井のタイムリー二塁打と代打葛城の2点二塁打で一挙3点を奪い大きくリードした。岡田監督は2回で上園をすっぱりとあきらめ3回裏から渡辺を起用。その渡辺が4回裏に突如乱れる。二塁打の仁志を塁に置き、石井のサードゴロをシーツがまさかのトンネル、ランナーが一気に生還して3点差に。さらに金城にヒットを打たれ、佐伯のライトスタンドへの同点3ランで試合は振り出しに。それでも4回を終えるまで投げ切って同点にとどめた渡辺はよく崩れなかったものだ。6回表、四番手加藤から鳥谷が四球で出塁し、シーツの二塁打で一気に本塁をついて勝ち越し。返球が乱れる間にシーツは三塁に。そして五番手吉見から金本が犠牲フライを打ってさらに1点を追加した。2点差あればタイガースは勝ちパターン。5回から登板して無失点で勝ち投手になった江草、6回途中から久保田、8回はウィリアムス、9回は藤川と、前日それぞれ2回ずつ投げた疲れも見せずしっかり抑えて3位争いの初戦を取った。
◎ベイスターズ15回戦……2−3
二軍から再昇格したばかりの超ベテラン工藤の前に完璧にやられてしまった。初回、杉山は一塁林のエラーと死球でピンチを作り、佐伯に先制タイムリーを打たれる。それでも2回以降はよく踏ん張った。3回表、先頭打者関本が四球で出塁するも、杉山がバントを失敗、投手工藤の前に転がして併殺を食らう。4回表には金本三振、一塁ランナーのシーツが飛び出していて捕手に刺される併殺など、拙攻が続く。6回裏、ランナーを一塁において杉山が内野ゴロを打たせながらも併殺が取れずランナーを残して内川らタイムリーを打たれ、悔しい2点目を失った。7回表、赤星とシーツの連打でチャンスを作り、金本が犠牲フライを放って1点差としたところで工藤は降板した。ただ、ここまで工藤に投げさせてしまったら、ベイスターズも小刻みな継投ができる。8回表、二番手木塚から矢野のヒットと関本のバントでチャンスを作る。マウンドには左腕の吉見が上がり、代打濱中と鳥谷を歩かせる。赤星の二塁へのゴロは一塁走者鳥谷がうまく二塁手のタッチをよけて内野安打とし、三塁走者がかえって同点に。マウンドには加藤。シーツは三振。さらに金本のところで那須野が登板。金本も落ちる球にひっかかって三振に。勝ち越しのチャンスを逸した。8回裏、マウンドには久保田が。内川、相川に連続二塁打を浴びて1点を失う。これか決勝点となり、最後はクルーンに完全に抑えられてしまった。記録に残らないが、タイガースは細かいミスを積み重ね、流れをベイスターズに押しやってしまったという感じだ。
◎ベイスターズ16回戦……5−1
初回、ベイスターズ先発の秦を攻め、ヒットの赤星をシーツがレフト戦への二塁打で返し先制点をあげた。一気にホームをついた赤星の思い切った走塁が光る。2回表にも2死一三塁のチャンスを作ったが、シーツが凡退。3回表の2死満塁のチャンスには矢野が内野フライと、なかなかチャンスをものにできず重い空気になる。しかし4回表、ついにチャンスをものにしたヒットと四球でチャンスを作り、林が高めのボール球をライトスタンドに運ぶ。この3ランで流れはタイガースに。4月末以来の先発となった能見は内角に決まる速球と落ちる球のコンビネーションがよく、4回裏に佐伯のタイムリーで1点は失ったものの6回を投げ切った。8回表、ベイスターズ二番手高崎を1死一三塁と攻める。前日満塁で三振をくらった那須野が三番手として金本のところでマウンドに。金本はセンター前に弾き返す執念のタイムリーで前日のお返しをした。7回からは1イニングずつ、久保田、ウィリアムス、藤川が登板。いずれも走者を出しながら3人とも併殺打を打たせて切り抜け、こちらも前日のお返しをした。
◎愛すれどTigers週間MVP
投手……能見篤史 ここで敗れると4位転落という場面で、みごとな投球を見せ、久々の一軍復帰を大きな白星で飾った。特に無四球というコントロールのよさが光る。終盤戦には欠かせない左の先発として今後にも期待だ。
野手……葛城育郎 今やチームには欠かせない代打男として、頼りになる存在になってきた。特に選球眼のよさが光り、貴重なヒットを放つだけでなく、あとにつなぐ役割も果たす。一塁に入った試合では美技で投手を助けた。味のあるバイプレーヤーという存在感が増しているのだ。
長期ロード前半を6勝2敗1分という好成績で乗り切り、勢いもついてきた。次節は京セラドーム大阪という準本拠地で6連戦。甲子園は使えないが、1週まるまる自宅から球場に入れる。まさに「死のロード」は完全に死語となった。1.5ゲーム差で追うドラゴンズはジャイアンツに2連勝してきているだけに手強い相手だが、ここは勝ち越してほしい。そして続くカープ3連戦では3つ確実に取りにいってほしい。今の勢いなら不可能ではないはずだ。
(2007年8月13日記)