今節は京セラドーム大阪で6試合。高校野球の季節に地元で1週間試合ができたのは大きい。しかも連日の猛暑もドーム球場なのでコンディションを崩さず試合ができた。ドラゴンズには1勝2敗と負け越したが、カープには2勝1敗と勝ち越した。特に前節にも好投した杉山と能見が2試合連続で安定した投球を見せ、ジャンとボーグルソンの両投手もしっかりと試合を作っているので、ベテラン下柳や新人上園と合わせてローテーションが確立できたといっていい。特に能見はプロ入り初完封勝利。今季のタイガース先発投手2人目の完投となった。今節は3勝3敗。今節終了時点で54勝48敗3分、勝率.529。首位ドラゴンズに2.5ゲーム差と迫る3位。2位のジャイアンツとのゲーム差も2.5。一気に首位にかけのぼるのではなくじわりじわりと詰め寄っていっているところがおもしろい。
◎ドラゴンズ14回戦……5−1
初回、山井からシーツの先制タイムリーで1点を奪い、試合の主導権を握る。4回までほぼ完璧な投球をしていたボーグルソンだったが、5回表に谷繁に同点のソロホームランを浴びて試合は振り出しに。山井も立ち直り、両先発がお互い譲らず7回までは互角の戦い。岡田監督は好投のボーグルソンにあえて代打を送り、さらに8回には思い切って久保田を投入。勝負に出た。これが功を奏したか、1死一二塁で林が走者一掃の三塁打をライト戦に放てば、続く桜井がセンターバックスクリーン横にとどめの2ラン。最後は藤川が締めくくる。岡田監督のこの試合に賭けた勝利への執念が実ったという感じがする。
◎ドラゴンズ15回戦……0−2
ジャンはよく頑張った。4回表、二塁打の中村紀を森野のセンター前ヒットで返され先制される。さらに中村公の二塁ゴロは藤本がよく飛びついて捕ったが、一塁は林。シーツならばうまくそれた送球についていったかもしれないが、林ではそうはいかず後逸し、2点目を献上してしまった。しかし、それでもカリカリこずに落ち着いて後続を断ち、7回までその失点だけにとどめたのだ。ただ、この試合は打線の援護がなかった。朝倉とは今季初対決。低めに速球がびしびし決まり、タイガース打線につけいる隙を与えなかった。8回表、二番手渡辺が中村紀のスクイズをみごとに外すなど投手はよくしのいだのだが、噛み合わない時はこういうものか。ただ、中村紀にスクイズをさせるという落合作戦は、策士策に溺れるという感じで、ドラゴンズサイドの焦りが見えたような気がする。最後は岩瀬に締められて終った。
◎ドラゴンズ17回戦……2−3
下柳と川上の投手戦。特に川上のカットボールはこの試合冴えに冴え、6回までタイガース打線は完璧に抑えられた。6回表、先頭の中村紀を歩かせた下柳はT・ウッズにレフトスタンドに叩き込まれて先制されてしまう。7回表には二番手上園がマウンドに。井端に二塁打を打たれ、荒木のバントで三塁に進ませて中村紀の犠牲フライで大きな3点目を失った。タイガースが反撃したのは7回裏。金本がライトスタンド上段にソロホームランを叩き込む。さらに8回裏、二番手岡本から矢野の四球、代打桧山のセンター前ヒット、そして代打藤原がバント狙いでゆさぶって四球と満塁にした。ドラゴンズは左腕高橋をマウンドに送る。鳥谷のセカンドゴロは荒木が落球、あわてて拾い二塁に投げ、タイミングはセーフだったが二塁塁審井野はアウトと判定。「どこから見てもセーフやろ。審判やめろ」と言いながら井野審判を突き飛ばした岡田監督はすぐに退場処分に。それでも引っ込まずに食い下がったが、判定は変わらず。結局後続の赤星はサードゴロ、シーツは三振と高橋に踏ん張られ、逆転のチャンスを逸した。最後は岩瀬に締めくくられて2連敗。後味の悪い敗戦となった。
◎カープ15回戦……3−1
4回裏、カープ先発宮崎から桜井がレフトスタンドに先制2ランを放つ。タイガース先発の杉山は6回表に1死一三塁から新井に犠牲フライを打たれて1点差とされたが、7回からはウィリアムス、久保田、藤川を1イニングずつつないで逃げ切る。7回裏、カープ二番手横山を攻めて1死満塁とし、林がライトに浅いライナーを打つ。三塁走者鳥谷はホームで刺されたかに見えたが判定はセーフ。大きな1点が追加された。前日退場を食らった岡田監督だったが、こういう逆のケースもあるのだからあまりカリカリしてはいけない。2連敗と嫌なムードだったが、桜井のホームランがそのムードを帳消しにした。そういう無形の力を秘めた選手ということである。
◎カープ16回戦……6−0
カープは先発予定の黒田に不幸があって急遽フェルナンデスを二軍から引き上げ投げさせた。開幕当初タイガース打線がナックルに沈黙したというデータからだろうが、あの頃の「ダメ虎」ではないのだ。低めのボール球を見切り、高めに浮くところを各打者がしっかりとらえた。しかも赤星が3盗塁を決めてフェルナンデスを完全に攪乱したのが大きい。2回に関本が先制の2点タイムリーを左中間に放つと、3回には四球で出てすかさず盗塁を決めた赤星をシーツが二塁打で返し、そのシーツを林がライト前ヒットで返す。6回には野口のタイムリー二塁打でさらに1点追加し、完全にK0した。7回には二番手広池をせめたて無死満塁としながら林と桜井が凡退。しかし、野口が四球を選び押し出しでだめ押しの1点を奪った。タイガースの先発能見は内角を突く思い切りのいい攻めでカープの打線を次々と内野ゴロに打ち取る。速球を主体にチェンジアップがみごとに決まっていた。プロ入り初完封で2連勝。すばらしい投球内容だった。
◎カープ17回戦……0−3
中4日で先発のボーグルソンが好投したが、打線の援護がなく悔しい黒星。ボーグルソンは3回表に1死満塁から栗原に押し出しの四球で先制点を与え、前田智のライト線への二塁打でさらに2点を失った。4回以降は吹っ切れたように好投しただけに、もったいない失点であった。打線は大竹の速球にタイミングがあわず、4回以降はノーヒット。7回からは梅津、横山、永川に1イニングずつきっちり抑えられ完封負けを喫した。タイガースのリリーフ陣も渡辺、江草、桟原とそれぞれ無失点で切り抜けてくれただけに、打線の不振が目立った。
◎愛すれどTigers週間MVP
投手……能見篤史 前節に続いてまたも好投。プロ入り初完封で2試合連続の勝利である。開幕当初ストライクを取りにいっては打ちゴロのコースに球を集めてしまっていたのだが、今回はボール球をうまく使う余裕のある投球を見せてくれた。このまま一気に左腕エースの座をつかんでいってほしい。
野手……野口寿浩 1試合だけの先発マスクだが、矢野にひけを取らない打撃と矢野以上のリードの冴えを見せてくれた。昨年はほとんど出番がなく、今季の最初も狩野に出番を奪われていたベテランが、今季はしぶく輝いている。
長期ロードも次節で終了。神宮でのスワローズ戦、ナゴヤドームでのドラゴンズ戦の6連戦となる。今季は得意にしているスワローズ戦で弾みをつけて、ドラゴンズ戦で一気に首位……などという贅沢はいわないが、ジャイアンツやドラゴンズの現状を見るとあり得ない話ではないぞ。とにかく勝ち越して甲子園に帰ってきてほしいものです。
(2007年8月20日記)