セ・リーグ初のプレーオフ、クライマックス・シリーズの第一ステージは、シーズン3位のタイガースと2位のドラゴンズとの間で行われた。先に2勝したチームが第二ステージに進出して1位のジャイアンツと日本シリーズ出場権を賭けて対戦することになる。タイガースはシーズン終盤の課題がもろに出、先発投手が2試合とも序盤に打ち込まれ打線がそれを挽回できず2連敗。切り札であるべき藤川を投入する機会はなかった。第一ステージで勢いがついたドラゴンズは第二ステージでもジャイアンツを圧倒し日本シリーズに進出、ファイターズにも4勝1敗とまるで2005年のマリーンズを思い出させる勢いで日本一に輝き、アジアシリーズも制した。
◎ドラゴンズ1回戦……0−7
タイガースの先発は下柳。初回、先頭の荒木のセカンドゴロを関本が弾いて生かしてしまう。荒木はすかさず盗塁し、井端の一塁ゴロの間に三塁に進む。森野がライト前にタイムリーを放ち、続くT・ウッズはライトスタンドへ2ランホームラン。3点をいきなり奪われる苦しい立ち上がりとなった。ドラゴンズは川上がマウンドに。気迫のこもった投球の前にタイガース打線は手も足も出ず。4回裏、ドラゴンズは谷繁の二塁打などで1死三塁と攻めたててくる。これ以上失点の許されないタイガースは下柳が降板し渡辺を投入。渡辺はこの大舞台に臆することなく荒木、井端のしぶといコンビを打ち取って相手の得点をはばんだ。5回まで川上にパーフェクトに抑えられていた打線は、6回表1死から関本のヒットでなんとか初めてのランナーは出したものの代打桧山、鳥谷と凡退で得点にはつながらない。代打の関係で好投の渡辺に代わり久保田を送る。その6回裏、久保田は1死一三塁から井端にセンター前に痛恨のタイムリーを打たれ、さらに森野に3ランを浴び、7点差となってしまった。四番手のダーウィンの好投でそれ以上の失点はなかったものの、川上には8回まで無得点。9回表、三番手のクルスから今岡、桜井の連打で2死一二塁とチャンスをつくったが、四番手の平井に矢野が抑えられて試合終了。まるで相手にならないという展開であった。
◎ドラゴンズ2回戦……3−5
先制したのはドラゴンズ。タイガースの先発上園は初回に1死満塁というピンチを背負い、中村紀にレフト前に軽打され2点を奪われる。続くイ・ビョンギュには落ちる球をすくいあげられてライトスタンドに運ばれ3ランホームラン。まさかの初回5失点。しかし、新人投手にあと一つも負けられないという重圧のもとに投げさせざるを得ない台所事情はいかんともしようがなかった。2回からは渡辺が、3回からは江草がマウンドに上がり、ドラゴンズ打線を抑え切る。タイガース打線は先発中田の前にいいところなし。4回表にシーツと林のヒットでチャンスをつくり、野口がタイムリーを放って1点をやっと奪う。5・6回は四番手久保田が前日のお返しで何とか無失点で切り抜ける。7回表、野口と関本のヒットでチャンスをつくるが中田は落ち着いて代打高橋光らを抑える。7回裏からはウィリアムスが貫禄の投球でドラゴンズ打線に打たせない。8回表、二番手岡本から先頭のシーツがヒットを打ち、金本の二塁打で生還。今岡の外野フライで金本を三塁に進め、代打に桧山。ドラゴンズのマウンドには岩瀬が。桧山は初球をセンターに運び犠牲フライで1点を追加し、2点差に迫った。しかしこの日好調の野口が打ち取られて万事休す。9回表は三者凡退。タイガースの2007年のシーズンはあまりにもくやしい2連敗で終った。
◎愛すれどTigers週間MVP
投手……渡辺亮 先発が打ち込まれて流れが完全にいってしまいそうになるところに小柄な渡辺が立ちはだかった。プロ入り2年目で、実働は今季が1年目という新人とは思えない力強さである。
野手……野口寿浩 初戦の正捕手矢野の打撃不振と比べ、野口の活躍には目を見張らせた。確かに打撃技術ではまだ矢野が上だろうが、パワーダウンは明らか。野口は35歳と捕手としては油が乗り切っている。来季の捕手の軸は野口に固定し、若手を競わせ、矢野は代打の切り札的な存在とすべきではないかと思うほど、この2試合での2人の差ははっきりとしていた。
クライマックスシリーズ第一ステージは、タイガースファンからいうとクライマックスも何も全く盛り上がらない結果に終ってしまった。シーズン3位なのだから、負けるのが順当といえばそれまでだが、ならばこんな試合はやる必要もなかった。勝っていたとしても、シーズン終盤に首位に躍り出た時ほどの盛り上がりにはならなかっただろう。来季もこのシステムを続けるようだが、実況アナウンサーが盛り上げようとする言葉や解説者がこのシステムをほめたたえる言葉に空疎なものを感じたのは私だけだろうか。
なお、この時期に上坂太一郎外野手と相木崇投手に戦力外通告が告げられた。上坂は野村監督時代にF1セブンの一人として起用され、二塁のレギュラーをとったかに思われたが、星野監督時代から控えにまわり、自動車事故での謹慎などもあって最近は一軍での出番すらなくなっていた。今後は飲食店経営に向けて調理師見習として再出発するという。相木は昨年前川との交換でバファローズから移籍してきたサイドスローだったが、変化球はそこそこ使えたが速球に球威がなく、相手に研究されると打ち込まれることが多くなった。ともに活躍を期待されたが力を発揮し切れず球界を去ることになった。第二の人生に幸多からんことを願う。
(2007年12月30日記)