甲子園に戻って迎えたカープ戦は２連勝のあと雨で中止。神宮球場で今季初対戦となったスワローズには若い村中に力負けしたものの２勝１敗と勝ち越した。これで開幕以来７カード連続勝ち越しというチーム記録にならぶ快進撃。勝利の内容も、アッチソンや安藤の好投をリリーフが支えたものからベテラン下柳の２年半ぶりの完投まで、投手陣の踏ん張りと、打線のつながりでチャンスを確実にものにする攻撃がかみ合って、安定感がある。開幕からここまでいい流れを作っているが、単に勢いではない強さがあるのだ。もっとも、スワローズが荒れ球の杉山が２死球を与えた報復と見られる新井への死球に対し、次の対戦での仕返しを口にしたのはよくない。たとえ行動したスワローズに非があろうと、はっきりと仕返しすると言ってはおしまいであろう。それだけが残念。第４節も４勝１敗と３つの勝ち越しで、通算１５勝４敗、勝率．７８９。２位ドラゴンズとの差は２．５ゲーム差と変わらず、ぴったりとついてこられている。
◎カープ４回戦……５−０
アッチソンとルイスの両外国人投手の投げあい。タイガースは初回に四球の赤星が盗塁し、金本のセンター前ヒットで先取点を奪ったが、以降は伸びのある速球を打ちあぐねる。アッチソンは球を低めに集め、ゴロを打たせる投球。カープ打線もどんどんとタイミングがあわなくなり、４回表と５回表はそれぞれ２三振。しかし、球数が増えると四球も多くなり、６回を無失点で終えると７回には渡辺、８回には久保田と継投策に出、１点差を守り切る昨年のようなパターンとなった。しかし、今季のタイガース打線はひと味違う。８回裏、二塁打の赤星を平野が送り、新井のタイムリーで待望の追加点を取る。金本もエラーで出塁し、代打桧山がセンター前に弾き返して満塁に。ここで鳥谷がライト線を深々と破る二塁打で満塁の走者を迎え入れ、試合を決定づけた。最後は藤川を温存して江草を久々にマウンドにあげる余裕もあり、江草が９回栗原に二塁打を浴びながら後続を断って完封リレーが完成した。ヒーローインタビューは赤星とアッチソン。
◎カープ５回戦……５−１
下柳は初回、アレックスに左中間スタンドに先制ホームランを叩き込まれた。しかし、２回以降は変化球で幻惑しながら速球をびしっと決める好投。８安打を浴びながら、要所は締める。これぞ投球術のお手本。９７球で完投した。打線もそんな下柳に応える。宮崎から１回裏、ヒットの赤星が盗塁死してチャンスがついえたかに見えたが、ヒットの新井を金本がレフト線への二塁打で返してすぐに同点に追いついた。３回裏、赤星の四球と平野のヒットでチャンスを作り、新井が勝ち越しのタイムリーをセンター前に。続く金本のライトフライの間に二塁走者の平野はもちろん三塁に進んだが、なんと一塁走者の新井までがタッチアップで二塁にいったのには驚かされた。こういう姿勢が勝利を呼ぶ。６回裏、金本が四球で出塁すると、この試合フォードにかわり五番ライトスタメン出場の葛城がライト線に二塁打。鳥谷敬遠で満塁。ここで宮崎は降板して青木勇にスイッチ。今岡にかわってサードのスタメン出場をした関本がここまでの鬱憤をはらすかのようなライト線を抜ける二塁打で２点を追加すると、なんと下柳までがタイムリーとなるライト前ヒットを放つ。下柳の完投勝利は2005年最終戦以来２年半ぶり。ヒーローインタビューは下柳と関本。下柳が関本をいじれば関本がつっこみ返すかけあいのようなインタビューに球場は大爆笑。
◎スワローズ１回戦……６−２
強い雨の中強行された試合は、安藤とリオスの必死の投げあいとなる。初回、四球を選んだ赤星を平野が送り、新井の一塁ゴロの間に三塁に進む。金本は畠山への三塁ゴロだったが、一塁への送球がショートバウンドしてリグスが弾き、赤星が生還してノーヒットで１点を奪う。安藤の最大の危機は２回裏。ガイエルと畠山のヒットで２死二三塁となり、福川を敬遠して満塁に。リオスの打球は三遊間を襲う。これを関本が好捕。一塁にしっかり送球してピンチを脱した。４回裏、福川のレフトオーバーのタイムリーで同点に追いつかれたが、５回表、ついにリオスをとらえた。新井の四球、金本のヒット、葛城の一塁エラーなどで無死満塁。鳥谷がライと前に落して１点勝ち越し。矢野がセンター前に２点打をはなってこの回一挙３点。８回には四番手鎌田から平野のタイムリー二塁打、９回には関本のライト前タイムリーで６点目を奪う。安藤は６回まで投げ切り、７回からは渡辺、江草、久保田と１イニングずつの継投。９回に久保田は宮本にソロホームランを浴びてしまったが、楽々逃げ切った。ヒーローインタビューは矢野。
◎スワローズ２回戦……１−４
岩田が初回にガイエルにファールでさんざん粘られて２点先制タイムリーを浴びる。続く宮出にも粘られた末にセンター前にタイムリーを打たれ、いきなり３失点。これが村中に余裕を与えた。タイガースの初安打は３回表の関本のライトとセンターが交錯して球を後ろにそらせた三塁打。赤星の三塁ゴロを城石が送球を躊躇してホームへ投げたおかげで関本はうまくホームイン（記録は野手選択）。しかし、タイガースの得点はこの１点のみ。岩田は４回裏にもピンチを招いて村中の二塁ゴロの間に１点を失い、試合は決まった。タイガース打線は村中の速球と手元で変化するクセ球に手を焼き、８回には押本、９回にはイムという継投で完全に抑え込まれてしまった。
◎スワローズ３回戦……４−２
タイガースの先発は雨で２回登板機会を流した杉山。スワローズは１９歳の増渕をたててきた。初回、増渕からいきなり赤星が二塁打。金本がレフトスタンドへ流し打つ先制２ランで主導権を握る。杉山はその裏ガイエルの犠牲フライで１点差とされるが、武内を打ち取りリードを保つ。杉山は２回から５回まで１安打２死球だけでスワローズ打線を抑え切る。杉山に勝ち星をつけたい岡田監督は６回には江草と渡辺の２人を投入し、とにかく１点差を守りに出る。７回表、２死を取った増渕を高田監督は交代させ、赤星に対し左のサイドハンド佐藤を送るが、これが裏目に。赤星、平野と連続四球を出し、代わった花田から新井と金本が連続タイムリーを放って３点差に広げた。７回裏には久保田が登板。福地にライトスタンドに代打ホームランを打たれたが、８回まで２点差でしのいで、９回には藤川がマウンドに。城石、福地、宮出を三者三振に切ってとって１９９３年の田村勤と並ぶチームタイの１０連続セーブを記録した。ヒーローインタビューは金本。これでタイガースは.プロ野球最多タイの開幕７カード連続勝ち越しを決めた。
◎愛すれどTigers週間ＭＶＰ
投手……下柳剛 先週は完封ペース。そして今週は初回に一発を食らったもののカープ打線を文字通り手玉に取り９７球て完投勝利。久々のお立ち台では「緊張しました」「ドキドキしました」とおなじみの下柳節で満員の甲子園をわかせた。
野手……赤星憲広 ついに盗塁数がリーグ１位に到達。打撃の好調が走塁にもいい影響を与え、チームを引っ張っている。平野とのコンビもここまでうまく機能し、ドラゴンズのアライバコンビをしのぐ牽引車ぶりである。
次節はぴったりと食いついているドラゴンズとナゴヤドームで３連戦。一昨年までは鬼門と呼ばれたが、昨年は初めて３連勝もした。嫌なジンクスはもうなくなっていると思われる。中田、川井ら生きのいい若手投手をタイガース打線がどうゆさぶるのか。甲子園に戻って弱り切ったジャイアンツを一気に沈めて、勢いをさらに増してほしい。どこまで続くかわからないが、流れがいいうちに一つでも勝ち星を上乗せしておいてほしいものだ。
（２００８年４月２１日記）
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