愛すれどTigers


首位攻防戦、竜虎相譲らず

 ナゴヤドームでの首位攻防戦はタイガースもドラゴンズも相手のミスにつけこむ野球で1勝1敗1分。初戦はアッチソンが併殺を取れずランナーを残して失点し、2戦目は森野がスライディングキャッチを試みて後ろにそらしタイガースが勝ち越し点をあげる。3戦目は互いに少ないチャンスをものにし同点のまま延長12回を戦い抜いて引き分けた。どの試合も見ごたえのある攻防を見せてくれた。まるで9月の終りのような戦い方だ。甲子園に戻ってジャイアンツ戦。初戦は前日の疲れがあったか敗れ、2戦目は若い岩田がプロ入り初完投勝利。3戦目は1点差で負けていたが9回土壇場で切り札クルーンを動揺させて逆転サヨナラ。隙のないドラゴンズと隙の多いジャイアンツの差も見られた。第5節は3勝2敗1分と1つの勝ち越しで、通算18勝6敗1分、勝率.750。2位ドラゴンズとの差は2.5ゲーム差と変わらず。はやくも3・4月の勝ち越し10を決定づけた。

◎ドラゴンズ3回戦……0−8
 苦手の中田を初回にとらえられなかったのが響いた。赤星が四球、関本が送り金本の内野安打で走者を三塁に送ったが、今岡が凡退して助けてしまった。対するアッチソンは、2回裏にT・ウッズと和田の連打でピンチに。森野三振のあと、中村紀の投手ゴロを焦って二塁へ悪送球。逆をつかれた動きとなった鳥谷がベースを踏めず、谷繁の2点タイムリー二塁打、中田にもライト前にタイムリー、荒木の犠牲フライで一挙4失点。3回裏には中村紀、6回裏には谷繁にタイムリーを許して6回6失点でマウンドを降りた。打線は5回表に鳥谷がヒットで出塁したが、フォードとのエンドランで三振併殺。8回表には野口、赤星の連打でチャンスを作るが関本が凡退。7回裏と8回裏は阿部、筒井とつないだが、阿部が満塁から中村紀に2点タイムリーを浴びて試合は完全に決した。
◎ドラゴンズ4回戦……3−2
 下柳は初回にイ・ビョンギュのタイムリーで先制されるが、それ以降は立ち直って自在の投球でドラゴンズ打線を手玉に取る。ドラゴンズの川井は3回表には3者三振と変化球がよく決まっていたが、4回表に赤星が内野安打で出塁すると、一転してのびやかさが消えた。赤星が盗塁すれば、新井が左中間への二塁打で返して同点とする。6回表には野手の動きをみて三塁打にした金本を今岡が三塁線を抜くタイムリーで返して勝ち越す。ドラゴンズは8回になんと川上を送り込んできたが、新井が移籍後初ホームランとなるソロをライトスタンドへ運ぶ。8回には久保田がT・ウッズの犠牲フライで1点差とされたが、最後は藤川が締めて前日の借りを返した。ヒーローインタビューは移籍後初ホームランの新井。
◎ドラゴンズ5回戦……2−2
 先発の両投手にアクシデントが。ドラゴンズは予定されていた山井が右ヒジの異常で登録抹消となり、チェンが先発。タイガースは福原が3回にバントをして指に直接球を受ける。福原は骨折で急遽渡辺がマウンドに。タイガースは初回、サードの悪送球で出塁した赤星が盗塁し、金本がレフト前タイムリーで先制する。4回表には二塁打の鳥谷を矢野がレフと前に打ち返し点差を2と広げた。しかし、ドラゴンズも粘る。6回裏、3イニングス目に入った渡辺がとらえられて1死満塁となって江草にバトンタッチ。江草は森野の犠牲フライと中村紀のタイムリーで追いつかれた。このあと、両軍とも継投策。久保田は8回から11回まで投げるロングリリーフで無失点とよくしのいだ。12回表、先頭の代打葛城がヒットで出、代走坂を矢野が送り、平野のライトフライで三塁に進む。川上と谷繁のバッテリーは赤星敬遠を選び、関本と勝負。関本は三振に終って勝ちはなくなった。開幕以来の連続セープ記録のかかった藤川を投入して12回裏もドラゴンズ打線を無失点に抑えて5時間1分の死闘は引き分けに終った。まさに竜虎相譲らぬみごとな首位攻防戦であった。
◎ジャイアンツ4回戦……1−3
 前日の死闘のあとすぐに移動して、3連勝と意気上がるジャイアンツとの対戦。タイガースのナインは動きが重い感じだ。三塁には不調の今岡をはずして坂をスタメン起用したが、これが裏目に。3回表、安藤は亀井、小笠原の連打でピンチを作り、高橋由のタイムリーで先制された。しかし、木佐貫から4回裏、鳥谷が内野安打、矢野が二塁打でチャンスを作り、坂の内野ゴロの間に鳥谷が生還して同点とした。安藤は毎回のようにランナーを出す苦しい内容ながらもなんとか抑えていたが、6回表、阿部とゴンザレスの連打のあと木村拓のバントでピンチに。原監督はここで好投の木佐貫に代打谷を送る。強いサード頃を坂はよく止めたが、ボールを握りなおしワンテンポ遅れて本塁に送球したが間に合わず、野選となって勝ち越しの1点を奪われた。続く坂本にもレフト前に落されて2点差に。ジャイアンツは藤田、山口、門倉、クルーンという継投で逃げ切る。タイガースの光明は三番手で今季初めて登板した能見が亀井、小笠原、高橋由を三者三振に切って取ったこと。もっとも、9回裏のクルーンにはタイガースも鳥谷、矢野、関本と三者三振だったのだが。新井がハーフスイングをことごとくストライクと判定されて3三振とブレーキになったのが痛かった。
◎ジャイアンツ5回戦……6−2
 初回、岩田は鳥谷のエラーなどでピンチを作り、ラミレスの三塁強襲ヒットで先取点を奪われた。しかし、2回以降はストレート主体の力感溢れる投球でジャイアンツ打線を封じ込める。タイガース打線は上原をとらえ切れず3回裏を迎える。二塁打の赤星を平野がライト前ヒットで一気に迎え入れてまず同点に。新井の二塁打で平野が帰って逆転。金本がヒットでつなぎ、この試合5番に入った葛城が犠牲フライで貴重な3点目を入れた。岩田は5回表に坂本にレフト前タイムリーを打たれて1点差とされたが、その裏に打線が反撃。二塁打の新井、三塁ゴロを全力疾走でヒットにした金本を塁に置き、葛城がライト線に走者一掃の三塁打を放ち、試合を決定付けた。上原は降板。翌日二軍落ちとなった。8回には若い東野から連続四球などで満塁とし、関本の犠牲フライでだめ押し。岩田は9回を投げ切ってプロ入り初完投勝利。ヒーローインタビューは岩田と葛城。エースの不調がジャイアンツの勢いを止めた。
◎ジャイアンツ6回戦……4−3
 流れはジャイアンツだった。タイガースは苦手の内海のスライダーを打ちあぐねる。5回裏、関本がセンター前ヒットで出て杉山が送り、赤星のライト前ヒットで一気にホームインして1点は取ったが、金本が全くタイミングを狂わされて打てず、何度もチャンスを逸した。杉山は荒れ球をジャイアンツが打って出てくれて5回までは抑えたが、6回表についにとらえられた。2死から小笠原、高橋由を連続四球で出塁させ、ラミレスにレフトフェンス直撃の2点タイムリーを打たれて逆転される。7回表、二塁打のゴンザレスを木村拓に送られ、ここで好投の内海に代打という積極策で登場した谷が初戦に続いてタイムリー。7回裏、二番手門倉から矢野が四球を選ぶが関本とのエンドランで三振併殺とチャンスをつぶす。8回裏、四番手の山口をとらえた。赤星がサード木村拓の悪送球を誘う内野ゴロでバックアップが手間どる間に三塁に進む。ここで代打は今岡。軽く振った打球はライト前に。赤星が生還して1点差に。タイガースは二番手能見がこのひも三者凡退で8回表をしのいだが、9回表、三番手久保田は阿部の二塁打、木村拓の敬遠と代打大道の四球で2死満塁に。坂本の打球はセンター前を襲うが、前進守備の赤星がスライディングキャッチして失点を防いだ。9回裏、マウンドにはクルーン。鳥谷がレフト前に弾き返して出ると、矢野はバントの構え。クルーンの危険球スレスの顔にくる球をなんとかよける。クルーンは内角に投げられず矢野を歩かせる。関本は一球でバントを決めて一打サヨナラのチャンス。代打桧山は一塁ゴロで三塁走者鳥谷が刺されて2死一三塁に。ここで赤星が打席にはいるが、ドラゴンズのバッテリーのような慎重さを持ち合わせないクルーンと阿部のバッテリーは赤星と勝負。赤星のショートゴロは内野安打となり、ついに同点。藤本が四球を選んで満塁に。打席には新井。フルカウントからファールで粘り、ついに四球を選んで逆転サヨナラ勝ちを飾った。クルーンは最後のボールをストライクと確信して審判に抗議して暴言退場となったが、明らかに外角にわずかながらはずれている。阿部があからさまにミットを動かしたのでよけいに審判はボールと見切ったのだろう。ヒーローインタビューは赤星。まさに今年の走るタイガースを象徴するような試合であった。

◎愛すれどTigers週間MVP
投手……岩田稔 プロ入り3勝目で初完投。しかもうち2勝はジャイアンツ戦という相性のよさだ。この調子が続けば、まだ新人王の資格もあるだけに(気が早すぎますか)、大きな栄誉をつかみ取ることができるかもしれない。そんな気にさえさせる好投だった。
野手……葛城育郎 不振の今岡、フォードにかわり5番にはいると、きっちりとした結果を残す。オープン戦だけなら勢いということも考えられるが、これだけ好調を維持しているということは、技術的にもひとつ壁を破ったのかしれない。

 次節は甲子園でスワローズ戦。そして1日あけてナゴヤドームでドラゴンズ戦。好調福原がバントの際に指を骨折してリタイアしたが、ジャイアンツ戦で好投した能見、あるいは二軍から昇格したボーグルソンらが待ってましたとばかりに先発ローテーションに殴り込みを賭けてくる。しかもまだ二軍には金村暁や上園も虎視眈々と一軍のローテーションを狙っているのだ。今節のドラゴンズ戦で投打とも重い空気になったが、サヨナラ勝ちなどでそれも一掃されたか。安定した先発陣と万全のリリーフ陣がいる限り、そう簡単に連敗したりはしないのだ。

(2008年4月28日記)


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