愛すれどTigers


2009年度を振り返って

 岡田前監督の予定外の退団を受け、急遽決定した真弓新監督。決定に至るまではスムーズだったが、現場から5年も離れていていきなり監督という状況で、解説者時代に描いた理想像を追い求めたに違いない。開幕からしばらくは金本が1人打ち、その陰に隠れるように前後を打つ鳥谷と新井が不振。新外国人のメンチは外角に流れるスライダーにことごとく手を出し、特に下半身のもろさが目立ち全く打てないままら二軍落ち。二軍で打ったから上で使って見たらまた結果が出ず、大誤算となった。新井の三塁コンバートを受けて一塁手として起用した関本が肝心の守備から崩れ、6月の交流戦の段階で前ライオンズのブラゼルを獲得して何とか一息ついた。ただ、ブラゼルも調子が上がるたびに故障欠場で、コンスタントに起用できなかったのは痛い。金本は5月以降だんだん息切れするように不振に陥り、打線全体が好調という時期が全くなかった。その中で、桜井がなんとかレギュラーの座に手をかけた。あとはシーズン通して起用した時にどれだけコンスタントに打てるか。オールスター以降は新井と鳥谷が復調し、打線につながりができ始めた。しかし、9月、赤星がダイビングキャッチの際に背骨を痛め脊髄損傷という引退につながる大怪我をし、戦列を離脱。代役の浅井が代役の浅井が持ち前の思い切りの良さを見せて活躍したのもつかの間、ふくらはぎを痛めてシーズン最後まで欠場した。矢野は右ひじ手術のリハビリが遅れて後半戦まで一軍ベンチにすら入れなかった。これだけ故障者が出たのでは、真弓監督も打線に関しては理想も何も現実の前にはなんともしようがなかったのではないか。来季は春季キャンプで怪我に強い体をつくるトレーニングをしていくしかないだろう。
 投手陣は先発の駒をマリーンズからトレードで獲得した久保の活躍でなんとか5人はそろえることができたが、6人目が決まらずローテーションではいってくる土曜日にはまるで勝てないという状態が特に後半戦で続いた。真弓監督の理想は完投できる強い投手をつくるというもので、昨年までなら6回が終わった時点でJFKにつなぐというパターンが確立していたが、久保田を先発にまわし、先発投手には7回まで投げてアッチソンと藤川につなぐ形をとるようになった。ところがこの5年、先発投手陣は6回をめどに抑えるようにリズムができていたせいかリードしていても7回に崩れ同点に追いつかれるか逆転されるかというかたちになり、藤川の出番がないということも多かった。しかもその藤川と先発の岩田はWBCに参加して調整がずれたこともあり、それぞれが故障で戦列離脱する時期ができてしまった。岩田にいたっては前半は完全に棒に振ってしまった。それでも後半だけで7勝できたのだから、もし開幕から万全だったら2年連続の2ケタ勝利は可能だっただろう。先発のローテーションが能見を中心に固まった後半は、大きな連勝はできなかったが着実に勝ち星を重ね、Aクラスにもう少しで入れるというところにこぎつけたのだから、真弓監督の理想とした野球が開幕からできていたら優勝争いも可能だったことだろう。
 新監督ゆえの理想と現実とのギャップへの誤算。今季はそれに尽きる。そんな中で能見が先発ローテーションに入り自己最多の2ケタ勝利を記録し、矢野不在の危機にマスクをかぶった狩野が失敗を繰り返しながらも正捕手として経験を積んだのは大きな収穫だった。新人でもジェン、西村が一軍マウンドを踏み、柴田、野原祐が打席に立った。大和は何度か先発出場し、初安打、初打点、初盗塁を記録した。秋季キャンプでは石川、上園、野原将らが自力アップに向けて取り組んだ。
 戦力外として今岡、前田、辻本、中村、木興らがチームを去り、赤星、秀太が引退、藤本がFAでスワローズに去った。外国人では長年リリーフの中心として活躍したウィリアムスが左ひじの手術のため退団。今年実績を残したアッチソンは米球界復帰のため退団。メンチ、バルディリス、リーソップも退団した。
 岡田前監督の固定メンバーの状態から、チームは大きな転換期にきた感がある。今年はそのための痛みを味わう年だったということになるのではないか。ベストナイン、ゴールデングラブを含め、今季のタイガースからはタイトルホルダーが出なかった。全ての選手が本来の力を出し切れなかったことがここからもわかる。
 城島、フォッサム、メッセンジャー、マートンらメジャーリーガーの加入でタイガースがどう変わるか、伸び悩む若手の出番は増えていくのか。来季は今季の苦しみを喜びに喜びに変えられるような戦いを期待している。
 全試合日程終了して67勝73敗4分。勝率.479。首位ジャイアンツと24.5ゲーム差の4位。3位スワローズとは2.5ゲーム差。

愛すれどTigers年間MVP
投手……能見篤史 大化けした。投球に自信がついた。相手を見下ろす投球ができるようになった。これはあくまでステップ。来季は今年の経験を糧にさらなる成長が期待できる。左のエースとして岩田と最多勝を争うようになってほしい。
野手……鳥谷敬 前半は代打を送られる場面があったり、3番から1番に打順が変わったりと苦悩したが、後半戦は本来の打撃フォームに戻して内角球を引っ張ってホームランにするだけの力を身につけた。来季は選手会長としてチームを引っ張る。新リーダーへの期待は大きい。。

 来季は真弓監督も正念場。懸案の世代交代を無理のない形でできるのか。外野は赤星の引退で若手にはチャンスが生まれた。禍い転じて福となせるか。クールな真弓監督が熱い姿を見せた時、チームは大きく変身していることだろう。

(2009年12月30日記)


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